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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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明けの明星 5

 コウエイの開放していたエレオノーラが立ち上がり皆の方を向いて悲しそうに首を振る。


「無茶をさせてしまいました。コウエイさん」


 ミカが毒が回って死んでしまったコウエイの方へと歩みっていき、ベニユキのそばにルナがやってくる。


「終わったねユキ」

「まだ、逃げ出した怪物はいるんだろうけど俺らの戦いは終わったんだな」


「家は無事かな、帰ったらあの子に餌をあげなきゃ」

「施設の外にも怪物は出ていったみたいだし、町はどの程度無事なのか気になるな」


 遠くから聞こえてくる戦闘音も散発的に銃声が聞こえてくる程度。

 マルティンとウーノンも武器をおろして近くの瓦礫に座り水を飲み耳を澄ませていた。


「砲撃やミサイルなどの音が聞こえなくなったな」

「大型の怪物はほとんど討伐されたのかもね」


 日が登りはじめ朝日に照らされて長い影が伸びる。


「疲れたねぇ」

「お疲れ様アンバー」


「ガーネットは怪我していないかい?」

「無事だよ、ちょっと疲れたけど今までよりは大丈夫」


「ほとんどの研究棟が倒壊して、見慣れた敷地もボロボロになったねぇ」

「これからこの会社はどうなるんだろう」


「さぁ、社長や役員がどうなったか知らないけど立て直すのは無理じゃないかねぇ。危険な研究をしていたんだ軍や国の分割管理じゃないかな?」

「そっか」


 全ての終わりを感じながらガーネットとアンバーは夜が明けた空を見てため息をつく。


「私たちの戦闘は終わりました、他の箱舟のメンバーと合流できないのは残念ですが我々にできることはもうありません。短く長い間、戦っていただきありがとうございました」


 皆がミカを見る。

 片方が折れた羽根を広げて彼女は頭を深く下げた。


「本当に? もう戦いは終わったの?」

「この後はどうするんだ?」


 いまだ信じられず武器を握ったままのテンメイとギルベルトが尋ねる。


「どうもありません、戦闘は終了し私の役目も終わりました解散です」


 そういってミカはどこへ行くでもなくその場に立ち尽くすだけ。


「俺らこの世界だと死んでいるんだろ? 死人がほっつき歩いてていいのかよ?」

「データをもとに体を複製しただけなので。この世界の元となった皆さんが確実に死んでいるとはいいがたいですが、そこはうまく話し合ってください」


「投げたな」

「私は世界を救うことを使命とされたので、それ以外はからっきしで。考えて見もませんでした」


 壊れたビーナスの瓦礫に腰掛けてテンメイが尋ねる。


「死んだみんなは生き返るの?」

「この世界での記憶情報を記憶した媒体があり、箱舟と同じように人体を複製できる装置へとつなぐことができれば。箱舟と旅した記憶を失うことにはなりますが生き返ることはできますね。もともと人ではない我々は別ですが」


「そっか、生き返ってもこれまでの記憶は無くなっちゃうんだ……」

「この世界に残っているのは箱舟に乗る前の記憶ですから。もとよりこの世界を救うために手当たり次第に集めた人材です、不必要な記憶や技術を有した今の皆さんが特殊なのです」


「用済みなった俺らを殺したりするのか?」

「いいえ、そんなことは致しません。それに皆さんはただ怪物と戦うために武器を扱える程度で、軍隊などを相手にしたところで勝ち目はありません。強さは武器に依存したものですし」


 戦闘は終わりその場に待機する一同。


「この後、俺らはどうなる?」

「特にどうということもありません。戦闘は終わりましたから避難所に向かってもらっても構いませんし、もう箱舟はヨヤミとともに消えましたから戻ることはできません」


 武器を置きルナとベニユキは二人並んで近くにあった瓦礫に腰掛けため息をつく。


「ふわっと終わるんだね」

「始まりも唐突だったけど、終わりも急だな」


 戦闘ももう怒らないと知りミカを中心に近くにあった瓦礫に皆が腰かけ水を飲んだりこれからどうするかを話し合ったりしその中で一人立ち上がる。


「じゃぁ、私は帰る。みんなさよなら、またどこかで会えたら」


 そういって武器を担いでその場を離れていくテンメイ。

 彼女を皮切りに後に続いてネシェルとホルテンが瓦礫を乗り越えて、施設の出口を目指して歩いていく。


 腕を組んで何かを考えるブラットフォードの横で落ち込んだエレオノーラが声を出す。


「私は病院に行ってみようと思います。もし壊されていても誰かを助けることができるかもしれませんし」

「私も行くよエレオノーラ、一人よりか何かできるかもしれない。武器は持って行っていい? 怪物が隠れているかもしれないから」


 ミカはエレオノーラとブラットフォードの背に向かって声をかけた。


「はい、護身用に持って行ってください。この世界の人に呼び止められても大丈夫です、武器は逃げている最中に拾ったと答えてください」


 去っていくエレオノーラたちを見送りウーノンが尋ねた。


「それでなんとかなるのか? これらはこの世界の武器じゃないだろ?」

「そうですね。ですが、この企業が裏で作っていた武器の情報を完全に把握している人は少ないはずです。ただの兵士に確認が取れるわけでもないでしょう。皆さんは本社では働いていなかったわけですし拾ったと答えるだけでそれ以上は追及は無いと思われます」


 瓦礫のどこかでガラッと崩れる音がした。

 続いて大きな音とともに土煙が上がる。


「何の音だ!」

「瓦礫が区連れた音じゃないな!」


 筋骨隆々の白い髪白い肌2メートルほどの大柄の人影。


「私が帰るための船をよくも壊してくれたな」


 目を赤く光らせながら手にした岩を投擲し真っ先に銃を構えたウーノンが直撃を受け倒れ、その近くにいたドミニクへと向かってが飛び掛かかり首元へと噛みつく。


「これも化け物!?」


 銃を向けると掴み上げたドミニクを盾にして後ろへと下がり身を隠せそうな瓦礫まで下がると、血を勢い良く流すドミニクを放り投げた。


「テロリスト、吸血鬼の本体です……ああ、なんてこと私以外の箱舟の管理メンバーは……」


 驚きのあまり動けないでいるミカの代わりに他のメンバーが銃を構えた。


「最後にもう一匹かよ!」


 瓦礫の陰に隠れた怪物を取り囲むようにベニユキたちが近づいていくと、ドミニクを助けに行った方から悲鳴が上がる。

 みれば噛みつかれたドミニクは体の水分が減っていくようで、じょじょに枯れ木のようになっていき一緒にいたウリの部隊のメンバーの喉元に噛みついていた。


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