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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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飲み込む闇 2

 

 浴びせられる銃弾をものともせずヨヤミはその大きな体をゆっくりと動かし迫ってきていて。


「後ろにさっきの雲、こっちに来てるのかな? 動きがゆっくりでよくわからない」

「さっきより大きくなっていないか?」


 更に開いていなかった怪物の保管されている扉が、部屋の内側から強引に開かれ新手の怪物が姿を現す。


 磨かれたようなきれいな銀色の体の各所に青く光る発光機関を備えた角がなく丸みのある浮遊する機械。


 埋め込まれた球体のようなカメラがぐるぐると回転させて紫色に光る雲、ベニユキたち、漆黒のヨヤミを順に確認すると部屋から出てくる。


「どこ見ても目を覚ました怪物まみれだ、だんだん無茶苦茶になって気だぞ戦う前にこの状況をどうにかしないと。ほとんどの怪物は地上に逃げたってのにここだけで地上に出会った怪物より出会うペースが速いぞ」

「この中で今一番倒しやすいの、俺らだよな!」

「金属の塊が宙を浮いていることに誰か疑問に持たないのかい」

「今は生き残るが大事!」


 逃げ道を確保するためにミカが手榴弾を雲へと向かって投げつけるが赤い雷によって消滅した。

 またその眩い雷を見てしまい、ミカを含め何人かが目を押さえ行動不能になってしまう。


「目がっ!」

「痛い!」


 様子をうかがうようにその場に浮いていた機械は、稲妻と閃光を攻撃と判断し金属の塊が雲へと向かって進んでいく。


「新しい奴が動き出した」


 雲も迫ってきた塊に気がつき再び内部に明かりを蓄える。

 機械は青く光る複数の発光個所から細く青白いレーザーを放つか、雲を貫きぬけてその奥の壁を赤く溶かす。


「戦い始めた、今のうちに下を通り抜けよう」

「半分は戦いながら、残りは目をやられた人を背負って」


 ベニユキはミカを抱えて怪物の下を通り抜ける。

 雲が機械へとまとわりつき水あめのような粘度を持った雨を降らしながらしきりに赤い稲妻を放っていた。


「上を見上げるな、目をやられるそのまま走り抜けろ」


 溶けた金属が蒸気を放ち雲はより大きく育っていく。


「新しい怪物は負けてるし」


 二匹の怪物が戦う中、ヨヤミは大きな口を広げその月の無い夜のような真っ黒な中身を広げていく。

 溶かされながらも機械は発光機関から細いレーザーを放ち続けており、その一部を近づいてきたヨヤミにも向ける。

 貫くでも弾くでもなくその光は黒い体に消えて行き、広がった幕に包まれ二匹の怪物は黒い幕に包まれ消えていく。


「怪物同士を戦わせるだけ無駄そうだな、俺らが危険なだけでみんな喰われちまう」

「あいつ先より大きくなってない?」


 黒い幕の中で赤い光が何度か点滅したのち、すぐに静かになる。

 機械と雲を二つ飲み込んだヨヤミは部屋を出てくる時より一回りほど大きくなっており、黒い体の深いところで輝く星のようなものの数が増えている。


「なんか体の光が増えているな」

「大きくなったことにしか気がつかなかった、どういう怪物なんだ」


「怪物が何なのかなんて説明できるものじゃないだろう」

「あれが生き物なのか、物理法則の外の生き物の形をした何かなのかすらわからない」


 そして何事もなかったかのようにヨヤミはまたベニユキたちを見つけゆったりとしたうごきでせまってきた。


 機械が放ったレーザーで壁面が解け毛むくじゃらの蛸がその壁を破壊して姿を現す。

 触手を大きく振るって体についた白い怪物を壁や床にたたきつける。


 二匹の怪物を飲み込んだ幕を体の中へと戻しベニユキたちへと迫っていたヨヤミは通り過ぎた壁面を破壊して新たに現れた怪物の方へと振り返った。


「またまた新しい怪物」

「俺らとグリフィンらとを分断したやつっぽいな、やっぱり蛸? なのか?」


 ヨヤミのゆったりとした動きでは毛むくじゃらの蛸を捕らえることができず、巨獣同士の取っ組み合いとなっていた。

 姿形が蝸牛に似ていることもあってかヨヤミは床にべったりと張り付いていて、太い触手に引っ張られようが叩かれようがその場を動くことはなく殻に身を隠す。


「殻に引っ込んだ、打撃が有効なのか?」

「私たちが殴りに行ったってヨヤミはものともしないでしょう」


 来た道を戻り上へと戻る道の場所へとつながるT字路へと戻ってきて皆そのばに立ち止まった。


「どっちに行く!? 上か? 奥か?」

「地上にあげたらいけないのだから、逃げる先は真っすぐじゃないかな?」

「他の怪物がいたらどうするの! 倒す敵すら結局武器は通じないんだし、何なの子の武器で倒せるって言ったじゃん、嘘つき」


 強い光を見て動けなくなりベニユキに運ばれていたミカが指示を出す。


「マルティンさんの言う通りです、地上に出してはいけません引き付け施設内を回ります」


 ミカは自分で歩けますと囁き下ろしてもらうと迫ってくるヨヤミを振り返り通路の先へと向き直る。

 怪物同士の戦闘でベニユキたちは目にも入らないようで、ひとまず追われなくはなりマルティンはため息をつく。


「銃弾は効かず、倒せる見込みもないのにどうやって倒せっていうんだい?」

「まだ手榴弾を試していないな、流石に飛び散ったのが増えたりはしないだろう?」

「それで殻でも割れるといいな」


 これから逃げる先の通路を見るが怪物の姿は見えない。


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