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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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ダンジョン 5

 大きな穴の周囲に張り付く螺旋階段を降りて行く。


 すると穴の奥からカチカチと歯車が回るような音が響いて来て、クレーンのようなものが数本のびてくる。


「なんだ!?」

「ビーナスの機能の一つでしょう。おそらくは逃げ出した怪物がここに来た際に捕獲するもの」


 クレーンのアームにはカメラが付いていてミカを狙って金属の腕を伸ばす。


「狙いは私だけ? ああ、私は人ではないから怪物扱いか」


 ベニユキたちが銃撃と手榴弾の投擲でクレーンを破壊しその場を乗り切ると、降りていた階段の途中にあった扉の前でミカが立ち止まる。

 扉が開くのを確認し皆がついて来ているか振り返った。


「ここが大型の物体を補完する階ですね。まだ残っている怪物に気を付けて進みます」

「まだ下にも階があるみたいだがここでいいのか?」


 螺旋階段は上下ともに果て無く続いており、まだまだ先は続いている。


「はい。おそらくこの空間はループしています。ほら、ここから三つ下に見える階を見てください。扉が開いていますよね、あそこはおそらく私たちがやってきた扉です。クレーンの残骸が引っ掛かっていますよね」

「俺らは下ってきたのに、下に扉が?」


「空間を捻じ曲げているんですよ」

「ここから落ちたらどうなるんだ? ずっと落下するのか?」


 おそらくはと一言答えミカは扉を開け進んでいく。

 通路は先ほど通ってきた上の通路よりさらに広く通路自体が巨大な倉庫のような広さ。


入ってすぐに正面行き止まりなT字路で広い道は左右に広がっている。

 灯りはところどころ壊れていて薄暗くまた通路の奥から何かのうめき声も聞こえてく来ていた。


「広いな、何だこの広さ」

「道が右と左に分かれてるね、箱舟と同じでエレベーターを中心に作られている円形の施設なのかな。それでどっちに進めばいいんだい?」


 ミカの後を追い道を曲がって進んでいく。

 通り過ぎていく通路には頑丈そうな扉が並び、扉や壁は破壊され壁に空いた穴は大きく巨大な何かが通った跡が残っている。


「銀行の金庫みたいな扉だな……、内側から破壊されているが」

「戦艦の装甲版みたいだねぇ……」

「これ壊した奴と戦うの? 勝てるわけないじゃん」

「大丈夫です、きっと勝てるっすよ……俺たちなら……」

「もう少し自信を持った声で言ってくれ」

「何か聞こえる。奥に何か居るな、ヨヤミってのはそいつなのか?」

「名前しか知らされていないけど私たちは何と戦うのでしょう」


 各々が感想を口にしていると重い何かが床にこす擦れているゴリゴリという音が聞こえ、壊れた壁の瓦礫の下から溶けた鉛のような塊が這い出てきた。

 塊の中から浮かび上がる頭蓋骨を見てベニユキが舌を打つ。


「ッチ、俺らの前で地上に出ていたやつか、あいつ銃弾が効かないぞ」

「足が遅いので少し大回しして避けていきましょう。数もあれ一つみたいですし相手をする必要はありません。それより警戒すべきは先ほど上の階の通路を破壊した未確認の怪物です」


「毛むくじゃらの尻尾みたいなのは何本か動いてるのが見えたな」


 塊はベニユキたちに向かってくるが亀のような遅さで簡単に距離が取れ、通路も広く怪物を迂回して素早く通り抜ける。

 途中で他の怪物にやられたのか白い石膏像のような巨人が腕と頭を捥がれ壁にもたれかかっていた。


「常識破りの超常的な怪物ばかりで研究者としては頭がおかしくなりそうだねぇ」

「私たちの世界の物ではないですからね、何でもあり。もうビックリしかしません」


「びっくりしてるじゃないか」

「はい」


 人一倍周囲を警戒していたテンメイが天井付近に浮かぶ何かを見つけて指をさす。


「くも!」

「入口にいたさっきのやつが追って来たのか? また別の世界の蜘蛛か!?」


 指さす方を見れば天井付近を漂う綿毛のような雲。


「雲だ」

「雲です!」

「雲って言ったじゃん!」


 薄紫色に発光する雲がベニユキらの方へと向かって流れてくる。


「何だあれ? 雨でも降らそうってか」

「それ絶対体に良くない奴だよね、ケミカルに光ってるし」


 ミカがポーチから手榴弾を手に取るとピンを抜き向かってくる雲目掛けて思い切り投げつけた。

 手榴弾は天井で跳ね返り爆発し爆風を受けて雲は霧散する。


「走り抜けてください!」


 散った雲は分裂し数が増えたまま膨れ上がるように元の大きさに戻っていく。

 戻る前に雲の下を走り抜けた。


「生き物じゃないのが多すぎる」


 そして雲は元の大きさに戻ると距離を取るベニユキたちを追わずゴリゴリと音を立てて移動する塊の怪物の方へと流れていく。

 怪物の真上まで行くと雲は一つになりパラパラと雨粒を降らす。

 雨粒もまた薄紫色に光り、落ちた雨粒は水あめのような粘度を持っており塊を包んでいくとシュワシュワと音を音を立てて飲み込んでいく。


「なんだあれ、金属を溶かしているのか」

「あの下を通っていたらやばかったね」


 溶けて立ち昇る湯気からまた新しい雲が生まれる。


「というかあれ放置してたら世界滅びるんじゃないか? 兵器が通じそうにないぞ?」

「あれは水に触れると死滅します。外に出ても自然の雲に触れたりすれば死ぬでしょう。放っておいて問題ありません」


「なんか可哀そうな生き物だ。……生き物か?」


 一つの部屋が大きいため走り進んでも数部屋分しか移動できず、10部屋くらいを通り過ぎたあたりで振り返る。

 多くは中の怪物が逃げ出したようで内側から開かれもぬけの殻、幾つかの扉はまだ閉ざされており中で怪物が暴れる音が響いていた。


「200メートルほど進んだけど数部屋分しか進めてない、一つの部屋が大きいよ。あとどれくらいだ?」

「さっきの毛むくじゃらの触手はまだ部屋の中だろうか、見かけないな」

「意外と通路に他の怪物もいないね。みんなさっきの雲に蒸発させられた?」


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