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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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ダンジョン 3

 銃弾を浴びてもなお動く怪物に警戒し立ち止まる一同。


「そんな、どうしてここに」

「日から見た怪物が何どうかしたのか?」


「何も知らす旅に出されてここへ戻ってきたとき、情報を収集する……中で危険と分かっていた怪物の一つです。あれがテロリストの正体です、改めて名をつけるなら吸血鬼というのでしょうか……もっとも十字架も日の光も弱点ではありませんが」


 ミカが視線を向けるはこじ開けられた避難区画の扉の奥。

 多くの何かが動く足音が聞こえてきた。

 戦いやすいように通路に広がり銃を構えながらベニユキは尋ねる。


「今倒したあれはあまり知性があるようには感じないな? ニュースでは奴らは集団で行動し兵器を操ると記憶していたけど? あんなゾンビみたいなふらふらと動くのもやっとな怪物がそうなのか?」

「ええ、知性があるのはたった一個体。残りはその眷属です、それにその一個体が近くにいるとき周囲の眷属は強化されます」


「なら問題は無そうだな」

「……いいえ」


 皆が注視していた扉から先ほどと同じようにミイラのように干からびた職員姿の怪物がぞろぞろと現れる。

 その怪物たちが持っていたのは防護用の盾と工具。


「シェルターの中は倉庫か何かですか?」

「さっきも言っただろう、この建物に詳しい人間はいないんだ」


 銃を向けると明確にそれから自身を守るように盾を構え後続はその後ろに隠れる。

 だが射撃を開始すればすべての弾丸は盾を砕き怪物たちは薙ぎ払われていく。


「意外といけそうだな」

「入口が一つならここで撃ち続けていれば勝手に数が減っていくね」

「何人がここにいるんだか、弾丸足りなくなるぞ」


 閉ざされていたすべての扉が開く。

 そこには武器を持った職員の慣れ果てた姿。

 数は100を超え目測で数えることができないそれらが武器を振り上げる。


「奥へ! 進んでください! ここで戦っても無駄です!」


 大きくミカの声が響き、怪物たちの波を見て硬直していた皆が弾かれたように迫ってくる怪物に向かって銃の引き金を引きながら走りだす。

 正面、側面、背後から工具やダンベルのようなストレッチの道具のような物を持つ怪物たち。

 それをミカは銃で撃ち羽根で武器を振るう怪物たちを押し返し強引に前へと進む。


 先に倒して床に倒れていた痙攣するだけの怪物に躓き、何人かが転倒して逃げ遅れそのまま怪物の波にのまれる。

 銃撃音でかき消され彼らの断末魔は届かない。


 長い廊下の先、手動で閉める防火扉を閉め追手から逃げきった。

 数センチある分厚い金属の扉を物を使って叩く音。

 人一人通れる予備の扉をミカが変形させ開かないようにする。


「まって、何人か飲まれた!」

「振り返ってももう姿は見えなかった、助けようがないだろ!」


 音のする扉から離れて怪物から攻撃を受けたものはすぐに手当を始めた。


「失敗したら再戦できるのか? この世界を救うのに失敗したら終わりなんだろ?」

「出発前も言ったようにこの作戦に次はありません。ディーバが機械を狂わすのは箱舟も同じ。この世界に調査に入った時点で汚染は始まり、引き返すことはできませんでした」


 扉から離れながら皆がミカを見た。


「今日死んでしまったらもう戻れないということ? 死んだ瞬間までの記憶を引き継げるようになったというのに?」

「おそらくすでに機能を停止させディーバに悪用されないよう解体作業に入っているかと」


 向き直ると再び通路についたスピーカーを破壊して進み始めるミカ。


「すべてが終わったら壊しに来いって言ってただろ」

「あくまで壊すかどうかの判断を任せるだけで、煽ったわけでは……壊してほしいわけではないんです」


「あ、いや、みんな急に襲われてて今は興奮しているだけで、言ってることが本気ではないから」


 防火扉からさほど離れていない場所に床が抜けて大きな穴が開いているのが見える。

 崩落は大きく穴の大きさはテニスコートほどで、これ以上通路を進むのは無理そうだった。


 破壊の跡は天井にも続いていて、書出を伝って上へと穴が開いており床を破壊し何かが上に向かって通った後の様。


「地下から出てきた怪物が出入り口もろともここを破壊したんでしょう」

「道がなくなったな」


「ここから降ります」


 床に空いた穴を見れば下の階が存在し、崩れた床が上の階の瓦礫とも合わさり階段となり降りられなくもない高さ。


「飛び降りれなくはなさそうだが、少し高いな。足をひねる者が出るかもだ」


 下に怪物が残ってる可能性もあり降りるのを躊躇しているとミカが飛び降りる。

 彼女は着地でよろけたが立ち上がり下の様子をうかがい上で待つベニユキらへと合図を送った。


「大丈夫です、下には何もいません」


 先に進んでいった彼女に言われ合図に従い下に降りる。

 そこは上の素材とは違う別の物質で作られた空間だった。

 車両が通れるほど広く怪物が通った跡が禍々しく残る。

 皆が降りてくる間、ミカは通路の奥を警戒していた。


「ここはもうビーナスの中です。ヨヤミはこの奥のどこかにいます、その他の怪物に注意して進みましょう。もうすぐ戦闘になります」

「なんでそいつはここから逃げ出していないんだ?」


「率先して外に出るタイプの怪物ではないからです。餌を求めて動くため施設内にいる限りは、施設内に残っている怪物を捕食していることでしょう」

「なら安全じゃないか」


「いずれ地上の怪物をすべて排除したのち、この世界の人々はビーナスの調査を始めるでしょう。その際に逃げ出す可能性があるのです。それに大人しいだけで自ら動く以上運悪く外に出てしまう可能性も。そうなっては世界が滅ぶ可能性もあります」

「世界を滅ぼす怪物か、その説明を聞いてもピンとこないな……ヨヤミもそうだがこの施設や他の怪物も今までの怪物よと何が違うんだ?」


「ディーバは比較的早く現在の世界を破壊する可能性があり、テロリストは少しずつですが確実にこの世界を破壊します。ヨヤミは後々この世界を破壊する可能性があり、ビーナスは何度でもその可能性を異界から持ち帰る可能性があるのです」

「簡単に滅ぶもんなんだな世界って」


 話ながら進んでいると何かをひっかく音が聞こえてきて、通路の先から骨と皮だけの干からびたような小型犬ほどの小さな獣が現れる。

 牙や爪が長くさらに体中から異常に長い角が生えており、その体中の角が壁をこすりキィキィと不快な音を立てる。

 軽い銃撃で先の職員同様の痙攣するだけとなり襲ってはこなくなった。


「骨と皮だけだ、さっきの研究員にも似てるな」


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