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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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ダンジョン 1

 地面を割って現れる大きな影。

 巨大な人骨の周りに溶けた鉛が付いたような物質とも生物とも言えないものが地面から起き上がるように姿を現した。

 怪物は目の奥を焼けた鉄のように赤と黄色の光をうねらせていて這い出た外の世界を見回す。


「何だあいつ、戦うか?」

「いいえ、無視して進みます。私たちの目的は任された怪物を倒すことだけです」


 完全に地面から出てきた怪物は施設の外へと向かって歩き出す。

 一歩踏み出すごとに重さで地面が抉れ地響きが鳴り、体についた鉛のような物が体からポロポロと剥がれ落ちる。


 剥がれたものが重たい音を立て地面にめり込むように落ちると塊の内側から小さな髑髏が浮き上がってくる。

 それらは大きなものと同様に目の空洞の奥を赤く光らせベニユキらの方を向きゆっくりとだがゴロリと転がるように近寄ってきた。


「大きいのはどこかに行くみたいだが、落ちた小さいのはこっちに転がって来るぞ!!」

「頭の骨が見えるけど、あれは人なのかい?」


 見た目だけでなく硬さも金属に近く撃った弾丸も塊に当たって潰れるか火花を散らして弾かれ、アインの持つ電流も通じている様子はない。

 反撃してくる様子はないが遠ざかっていく巨体の本体からは次から次へと体から物体が剥がれ落ち続け小さな怪物を生み出し続けながら移動している。


 既に30以上の塊がベニユキたちへとむけて転がってきており各々一番近くの塊を攻撃した。


「弾が弾かれる!」


 手榴弾を投げるが爆風すらはねのけ物体は転がり続けてくる。

 皆が慌てるもミカは背を向け走りだす。


「皆さんその怪物は動きは早くありません、走って振り切ります。弾の無駄です」


 塊たちの速度は人の歩く速度より遅い程度な為、追いつかれる方が難しく向かってくるから攻撃をしたがそれに気がつきすぐに塊たちを無視して走り出す。


「向かってくるから戦わなければならないといけないと思っていたっす。今までがそうだったから」


 ホルテンが拳銃をしまい踵を返し走りながら呟く。


「ほんとに何のためにこんなの集めたの、馬鹿じゃないの!」

「研究のためって言っていただろ、テンメイちゃん。私たちが見てきたとおり異世界は未知の技術や新種の生き物のパレードだからねぇ。あの大きいのだって体からいろいろ剥離しているのにまるで小さくなる様子もない、体を纏うあれが金属なら尽きない鉱脈になってなるかもねぇ」


「あれが暴れたら大勢死ぬだろ、そんなもののために危険を冒すの?」

「結局、技術の進歩には犠牲が出るから」


 砲撃音が響き遠くで怪物を攻撃する爆炎が見え戦闘機の部品が空から降る光景を見ながら広い敷地を走り抜けて辿り着く本社ビル。

 天へと真っすぐ延びる柱のようなビルのガラス張りの大きな入り口は、何かが内側から張り付けてあり中の様子を知ることができなかった。


 中途半端に開いた自動ドアの前で立ち止まるとミカは振り返る。


「これより建物内に入ります、音の出すものは見つけ次第近寄らず破壊してください」

「建物の中、フロントに怪物がいそうだな」


「はい、建物内は逃げ出した怪物たちの蟲毒のようになっていると思われます。すでに最初のパニックは収束し、建物の中は逃げた怪物が食い合いをして強者だけが生き残っていると思われます」

「なら俺らの目標の怪物が負けたってこともあり得るのか」


「それはあり得ません。他もそうですが、私たちが調べた情報では我々が対峙するヨヤミは他の怪物とは別格です」

「俺らじゃ相手にならないような圧倒的な強さを持った怪物を俺らで倒せるのかよ?」


「問題はありません、現段階は弱点さえ狙うことができれば倒すことはできます。この世界を救うための最後の戦闘です」


 そういうとミカが先陣を切ってドア付近の窓全てを銃撃で破壊してガラスに張り付いていたものを払ってビルの中へと入っていく。

 施設内アナウンスが流れるスピーカーからは音楽らしきものが流れていたがミカがすぐに撃ち壊した。

 銃撃音に反応し怪物が動き出す。


「天井シャンデリアの上に怪物だ!」


 ロビーには巨大な昆虫が巣を張っていた。

 人らしきものと異形の形をした何かが糸でぐるぐるに巻かれて天井付近に吊るされているのが見え一行は立ちすくむ。


「また虫出た!」

「虫しかいないな」


 大きな昆虫の背中に複数のスイカほどの大きさの蜘蛛のような生き物が蠢いている。

 親と思われるそのひときわ大きな蜘蛛には片腕だけ異常に発達した鋏があり、蠢いていた蜘蛛の一匹が鋏の間に入っていく。


「撃て! 相手に攻撃させるな、戦う前に殺せ」


 そのまま鋏を閉じると小さな蜘蛛の体が弾け、残った頭部と粉々になった外骨格が逃げ場を失った衝撃波とともに開いた鋏の前方へと発射される。

 放たれた弾丸は容易く肉を裂き床にひびを入れた。


「散れ散れ、固まるな」


 糸に粘性はなく紐やロープのように上から垂れ下がるだけ。

 天井へ向けて銃撃するとシャンデリアが壊れ乗っていた巨体が降りてくる。

 改めて鋏を構えるがそれより先にアインが持つ銃が電撃を放ち鋏の中に入る前に子蜘蛛が爆四散する。


 体は硬いが外で戦った別の虫ほどではなく体に空いた穴から体液を流し、その背で耐久力の無い子蜘蛛たちがボンと音を立てて弾けていく。


「奥へ! 戦闘する意欲はもうあの怪物にはありません!」


 子蜘蛛を失うと親蜘蛛は巨体は身軽に壁に伸びる糸を掴んでスルスルと高い場所へと逃げていき、ミカはすでに通路の奥を見据えて走り出す。


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