表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
152/173

破滅が跋扈する 4

 何発もの銃弾を受け装甲版は穴だらけにもかわらず、壊れた様子もなくミカへと向かって腕を振るうパワードスーツ。

 彼女は反撃もままならず翼も腕の代わりとして地面につき体を支える。


「あのテロリストは、なんであんただけを狙う!」

「私の目には直視したものを私しか見ることが出来なくなる異能力を持っています。ですから、私が対象を見ている限り皆様が狙われることはありません」


 銃を撃ち続けるベニユキにパワードスーツの突撃を回避しながら答えるミカ。

 彼女はベニユキたちが銃を構える集団から一人離れ孤立し、そこで一人闘牛士のように鉄の脅威を躱し続ける。


 ミカだけが狙われているため、彼女が鉄塊の体当たりを回避しながら進むためベニユキたちもパワードスーツを攻撃しながら歩く。

 既に散々銃弾を浴び操縦席は穴だらけで各所から黒煙を吹き、足の関節の強度はガタが来ていた。


「一人で注意をひきつけるってことだろ、危ないんじゃないか?」

「皆さまよりは丈夫です。それにウリたちと体を動かす練習はしてきましたから」


 弾丸を回避するためジグザグに動き、ついに足の付け根から折れて勢いで硬い地面を転がる。

 バランスを崩して転倒したパワードスーツは立ち上がることはなく、その場で藻掻くように腕が動くが各所から火花が散り各所に空いた弾痕から火が噴き出たあたりで動かなくなった。


「次は後ろか」


 パワードスーツを破壊し背後にいる虫の怪物と戦うアインの方を振り返る。

 湯気を立て外骨格の一部が茹でた蟹のように赤くなった昆虫型の怪物は元来た道を引き返して走り去っていく姿が見え。

 追撃はせずその場で見届けるアインに尋ねた。


「テロリストは何とか倒せたよ、一機だったし弾切れも起こしていた。逃げてったあの怪物は硬かったか?」

「ああ、多分この銃が弱いわけではないと思う。弾丸を弾く硬い敵にもダメージを与えられているからな。あいつが特別硬かったんだと思う。俺としては電撃を受けたら粉々に砕け散って欲しいくらいだったが」


「あいつが特別硬かったんだろ、他の敵なら問題はないかを試してみたいとこではあるがな」

「そうあって欲しいな」


「使えないなんてことはないだろうが、万が一他の銃より見劣りするならこんな重いのは降ろしていきたいしな」


 投げ捨てた荷物を拾い上げて皆の怪我がないかを尋ねるとミカを先頭に再び走り出す。

 先ほどの戦いで地面に手を突くように使って体を支えていた羽根は少し泥などで汚れていた。


「すごい動きしていたけど、その羽根折れないのか? 鳥の羽根ってのは脆いんだろ?」

「この翼は飛ぶためのものではありません、体を支えるための支柱にするためです」


「腕か、虫みたいなものか?」

「え、あ……。そう、ですね……」


 敷地内を進み続けていると時折、テロリスト鎮圧のために乗り込んできたと思われる戦車や装甲車の残骸を見かけるようになってきた。

 それと同時に何かわからない生き物やこの場にあるのが不自然な物体の破片も見られてくる。


「この辺までこの世界の軍隊は進んできていたみたいですね」

「俺たちが軍隊と出会ったらどうするんだ? 理由を話して一緒について来てもらうとかでいいのか?」


「戦闘音は聞こえますが遠くの方ですし、おそらくこのあたりにはいないでしょう。人らしきものはすでに怪物に襲われ異形化している可能性があります」


 横転した車両から散らばる装備を見てグリフィンが尋ねた。


「そこらの死骸から無線機でも拝借するか? もしかしたら他の箱舟連中と情報の交換もできるかもだしな」


 落ちていた無線機が壊れていないかを確かめようとしてグリフィンが手を伸ばすとミカが口調を強めて止める。


「駄目です! 絶対にやめてください。ディーバの破壊が確認されるまで通信機器や音を発する機械には近寄らないでください!」


 警告するミカの強い声に皆が驚く。


「破壊目標の一つか、通信機器とどんな関係がある?」

「ディーバは音の怪物です。音を発する機械の間を飛び回り一定の音量でその歌を聞いてしまうと、音を歌の認識できる生き物の思考をゆがめる性質を持っています」


「簡単に言ってくれ」

「洗脳を受け、我々の敵となります。ここに落ちているのはその脅威を知ってか意図的に壊されているみたいですね。ですが拾わないでください、車両の無線機も危険ですから車両にも近寄らないでください」


 その後は誰も装備を拾おうとはせず遠くから聞こえた爆音を聞いて顔を上げる。

 遠くを歩いていた人型の巨体が炎に包まれもがき苦しんでいた。


「爆弾か?」

「その様です、この場に近寄れていないだけでまだこの世界の戦力は壊滅していませんから」


「ミサイルや砲弾は飛んでくるわけか、巻き込まれないか」

「その可能性もあります。ですから早く移動しましょう」


 続けざまに人型に攻撃が飛んできて舞い上がる土煙の中に消えていく。

 廃棄された車両から離れてすぐにたっていられないほど激しい揺れが襲う。


「何の揺れだ!? さっきの攻撃か?」

「この敷地内で揺れてる!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ