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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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破滅が跋扈する 3

「毒だ、誰か彼の腕を切り落とせ! 全身に回れば体中溶け始めるぞ」

「切り落とすから腕を伸ばして!」


 傷口から溶けた肉が流れ出て、それを見たアインが叫びすぐにキュリルが駆け寄ってきて慌ててギルベルトの腕を切り落とす。

 まだ毒のまわっていない腕をスッと骨ごと断ち切りギルベルトの腕から鮮血が流れ出る。


「エレオノーラ、手当!」

「はい!」


 コウエイとともにエレオノーラは救急箱を開けて手当てを始め、残りは空を舞うのと羽根を失い地面を歩く蛾を撃ち抜いていった。

 羽根を失い地面に落ちると、のそのそと近寄って来るだけで動きは鈍く強力な毒を持っていても安全に倒していく。


「なんで、羽は砕ける?」

「知らない、化け物だから!」


 砕けた羽根は空中に漂い広がっていく。

 飛び散った粉はベニユキらの髪や服に降り積もり、光を受けキラキラと光る。


「この砕けて舞ってる粉、吸ったらまずいやつかな?」

「なるべく、吸わないように袖とかで防いだ方がいいかもな」


 ギルベルトの手当てを済ませすぐにその場を離れる。

 腕まくりされて包帯を巻かれた腕を見てベニユキが尋ねた。


「毒は大丈夫か?」

「体には回らなかったみたいだ。斬られた腕が、くそっ幻肢痛がする」


 異質な蝶を排除し再び走り出そうとした頃、蝶のさなぎが生えていた建物の壁を破って系車両ほどの大きさのある怪物が姿を現す。

 外骨格に覆われ目も触覚もなくのっぺりとした頭、棍棒のような太い4本の大きな腕を持った6メートル軽自動車ほどの虫の怪物。

 頭を左右に振り何かを探すようなそぶりを見せたかと思うと、ベニユキたちへと向かって飛び掛かってきた。


「なんか来た! 色合いがこいつらと似てるけど仲間か?」

「二本足で立ってる!」


 4本の足を地面に乱れ撃つようにして周囲を叩く。


「あいつ何してるんだ? 仲間の死骸を叩き潰してるぞ? 仲間じゃないのか?」

「知らないけど今のうちに逃げよう」


 地面を叩くたびに地面に落ちた羽根の欠片が舞いあがる。

 その場の地面を叩くだけで襲ってくる様子はなく、その場を離れ建物を目指してへ知りだす。


「このキラキラしたの何だったんでしょうね。くっついてしまって髪を洗わないと取れないみたいですし」

「即効性じゃない毒だとしても、何とかして落とす必要はあるよな」


「なんかこの粉、少し鼻の奥にスッとする匂いがしますね」

「匂いを付けられたのか?」


 手櫛でエレオノーラが長い髪についた欠片を剥がそうとして諦める。

 ミカやグリフィンなど戦闘に参加した皆が、周囲の光に当てられキラキラと光っている。


「皆さん正面にパワードスーツです」

「テロリストか、目標に出会うまでにどれだけ相手をしなければならないんだ? 他の奴らも他の怪物と戦ってるんだろうか」


 皆が向かってくるパワードスーツに向かって狙いをつけていると集団の後ろでテンメイが叫ぶ。


「背後のやつ追ってきた!」


 先ほどの昆虫の怪物が追ってくるのが見え、攻撃は前後の敵を倒すため二手に分かれ引き金を引く。

 両者への攻撃、しかしお互い弾丸を受けても倒れることはなかった。


「真っすぐこっち来たな、向こうで意味わからない地面でも叩いていればいいのに」


 背後から向かってくる怪物に弾丸が弾かれ、狙撃銃から放たれるビームもその殻を貫くことはできない。

 アインの放つ巨大な重機から放たれる電撃で怪物はひるんでその足を止める。

 立て続けにはなく電流を浴び怪物の外骨格の隙間から白い湯気が出始めアインが叫ぶ。


「こっちは俺がやる、テロリストの方を任せた!」


 遅れて正面から向かってくる人型機械。

 足についているローラーで地面を滑るように移動し、弾丸を受けても止まることはなく進み続け腕についた武装を振り上げた。

 モーター音を立てて高速で回るチェインガンと大きな盾。

 しかし銃口から弾丸が吐き出されることはなく、パワードスーツは高速回転する銃ウィンを警棒の様に振り回してきた。


「ほら見ろベニユキ君、相手は弾切れだ」

「それで、この機械の弱点は」


「正面なら操縦席の下あたりが比較的装甲が柔らかかったはずだ、後は背面の排気口。エンジンが燃えて機能が低下する」

「知らない怪物より、少しでも知識ある兵器の方が戦いやすいな」


 荷物を捨て折りたたみ隠していた翼を広げミカが前に出て注意を引き残りが銃弾を浴びせる。

 身体能力が人より高く広げた羽根で体の重心を整え、彼女は振り回される盾と高速回転する銃口から身をかわす。


「そう何度も避けられはしません、その間にどうか倒してください」


 パワードスーツはベニユキたちなど目に入っていないかのようで目の前を通り過ぎていきていく。

 ミカに攻撃を躱せレ通り過ぎ様にベニユキたちを盾で押しつぶすチャンスがあったにも関わらず、パワードスーツはベニユキらに背を向けミカを警戒したまま後退していく。


「こっちには来ないな」

「何かしているのか、安全な今のうちに倒せれば」


 弾丸を避けるようにジグザグに下がっていきながら大きく弧を描いて加速し、再びミカへとむけて突進を始める。


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