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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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破滅が跋扈する 2

 車両や専用の乗り物で移動するような広い敷地。

 遠くに何かが動く姿と人ではない何かの鳴き声が轟く。


「どこもかしこも怪獣博覧会になってるねぇ」

「異界の技術を解析するため、サンプルが保管されていたのだから当然です」


「背中の羽根で飛ばないのかい?」

「これは飾りです、ウリのような浮遊能力も飛行機能はついていません。戦闘の際に盾の代わりに前にかざすことしかできません」


「ならなんで翼の形にしたんだい? 銃や武器が持てる腕でもよかったんだろう?」

「手のようにしても指先まで器用に動かす器用さはなく、伸ばすか閉じるかそれだけの機能ならこの形で十分だったんです」


「私らが戦う敵はどこだい?」

「正面に見える建物、本社内にまだいます。表に出てしまうと人の足で追うには厳しいことになります。なので外に出る前に」


「ならもっと近くに降ろしてほしかったねぇ」

「見ての通り本社の周りには敵がいます。降りた瞬間に皆さんのうちの半数以上がバラバラの肉片になるのは避けたかったのです」


 アンバーとミカが話す後ろをついて行く面々。


「本当に広いな、あのビルに着くまでにゴルフ場が丸々入りそうだ。で、向こうにビルと同じ大きさの人型の何かがいるぞ」

「都会の真ん中にこれだけの建物を立ててどんだけお金持ちの会社なんだか。うわっ、空、ビーム放ったでっかい建物の下をブーメランみたいな鳥が複数飛んでる、こっち来るかも」

「実際、総人類の発展のためにを謳い文句に多くの国の支援を受けて、いろんな新技術の研究をしている大企業だからな」

「まぁ、実際は内側で問題があった際に、外に逃げ出すまでの時間を稼ぐための広さなんだろうけどねぇ。もう一本もないけど刑務所のような会社敷地内を見張る監視塔が立ってたんだよ、なんでかなと思ってたんだけど今になって理由を知った気分だよ」


 遠くに襲ってくる様子もない怪物の姿がみえた。

 脚と尾羽を地中へと伸ばした木の鳥が、紅葉のように色の変わった木の葉の羽根を振りまいている。

 同じように地上に這い出てきた怪物の痕跡が辺りにちらほら見え、空から向かってくる怪物にほとんどのものが注意を向けていなかった。


「飛んでた鳥、きた!」


 テンメイの叫びで空に注意を向け足を止め空に向かって銃を向けた。

 体と同等以上の大きな翼を広げ滑空する姿は巨大な三角、頭を横に向けて飛んでいるためベニユキたちに見えるのは一つの大きな目玉だけで嘴を左右に開き下降してくる。


「でかい! 戦闘機みたいな」

「最初の方に行かされた異世界の出会った鳥の方が大きかったな」


 向かってくる鳥は全部で10羽ほど。

 翼だけでなく体全体で大きく旋回し旋回し突入する角度を決めると、集団で下降し折りたたんでいた長く細い4本の足を伸ばす。


「撃て! 倒せ、関係ない戦闘で誰も欠けるな」


 向かってくる怪物たちへとむけて弾丸をばら撒く。

 放たれる弾丸は煌めく粒子を飛ばし放たれる青い光の帯や、羽音を立てて飛んでいく弾丸。


 先頭を飛ぶ巨鳥へと集中し攻撃を受けた巨鳥は急上昇したかと思うと、そのままフツリを糸が切れたかのように動くのをやめ力なくただ落下した。

 そして離れた地面にたたきつけられ、仲間がやられたことを理解して残りの巨鳥たちはベニユキたちから離れるように街の方へと飛び去って行った。


「でかいわりに意外とすぐ逃げていったな」

「鳥頭だから仲間がやられたこと忘れて戻って来るんじゃない?」


「ならそれまでに逃げるまでだ」

「ふぅ、本命と戦う前に疲れそう」


 ミカに続いて走っていてようやく一つ目の建物のそばを通り過ぎる。

 建物は攻撃を受けた跡で玄関周りには破壊の跡が広がっていた。


「酷い、めちゃくちゃじゃん」

「どの建物もあんなもん。ここから無事に出られた人は何かしらで、もたもたしてて逃げ遅れたやつだけだよ」


「今は襲撃されてからどれくらいたったんだろう」

「私が病院に逃げたとき、まだ怪物はいなかったし一日二日はたっているんじゃない?」


 建物の付近に血の跡はあれど死体はなくネシェルが首を傾げる。


「血はあるのに誰もいない」

「怪物に食われたんだろう。俺らも死んだら何も残らんぞ」


 通り過ぎた建物の壁面にへばりついていた紫色の塊。

 一つ一つが人一人分ほどある棘のような物が複数壁から生えていたにコウエイが気付く。


「……壁になんかある」


 魔女の被る三角帽のようなそれは周囲の光を受けて怪しく光っている。

 コウエイの呟きにカノンとテンメイも過ぎ去った建物の壁を振り返り首を傾げた。


「あれ、アメジスト?」

「何かの怪物が建物の壁に宝石を生やしたの?」


 尖った部分が二つに割れ、ずるりと何かが姿を現す。

 6枚の萎れていた葉のような羽を広げピンと伸ばすと、フワフワとした触覚を動かし首を回して走り去っていくベニユキたちを見つける。

 白地にオパールのような砕けた虹のような色合いの羽根を持つ大きな蛾のような怪物。


「背後に敵!」


 次々と結晶から生れ落ちバサバサと音を立てて飛翔し向かってくる。

 皆が揃う前にコウエイやテンメイが怪物を落とそうと引き金を引く、怪物は弾丸を受けると羽根は砕け体は地面に落ちた。

 砕けた羽根は粉になり周囲に散らばる、羽根を失っても動きさらに何発か撃ち込んで一匹を仕留める。


「なんか砕けた!」

「吸ったらやばそう、下がりながら戦おう」


 そうしている間にビルから次々に飛び立ち襲い掛かってきた。

 強度はなく落とすは容易いが数が多く次継ぐに突撃してきて、振り払おうとしたギルベルトの腕を蜘蛛のような顎に噛みつかれる。


「あつっ!」


 噛まれた腕は傷口から溶けて行き爛れていく。


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