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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
149/173

破滅が跋扈する 1

 上から聞こえてくる音声にグリフィンが尋ねる。


「それで、誰が何と戦うのかな?」

『各箱舟それぞれの戦績を見て、前もって決めていました。1号はビーナスの破壊を。2号はディーバの停止を。3号は夜闇の討伐を。4号はテロリストの掃討をお願いします。それぞれの目標に近く、周囲に敵のいない安全な場所に降ろします』


「それ以外に危険な怪物はいないのか?」

『それは見つけ次第、私たちの分身体である子たちが判断を下します。皆さんはそれに従い戦ってください』


「予定外の戦闘もあるのか。一匹倒すのにも大変そうなのに今日は大変な日になりそうだ」

『それでは御武運を』


 声が消えてすぐにエレベーターは世界に降りたち皆に光が差す。


 焦げ臭いにおいと、響く重低音に皆が顔をしかめる。


 世界には轟音が響いていた。


 正確には空気も地面もすべてが揺れ、太鼓や花火のように耳ではなく体全体で音を感じる。

 皆が思い描いていた元の世界とは違うことに驚いていると眩い光が視界を白く塗りつぶす。


「眩しい……」

「何!? 何なの子の光!?」


 キュガガガガと鳴り響く音の洪水の発生源は、雲より高い空の果てで宙に浮く葉巻型の円盤のような物体から、太陽のように明るく眩しい白い線が地平の彼方へとむけて薙ぎ放たれていた。


「眩しいな、皆周囲の警戒、敵はいるか?」

「帰ってきた、元の世界に……」

「だいぶ、様変わりしているけどね……」

「だいぶ? 嘘でしょ……」


 空中の兵器の放つ白い輝きが消えて行き辺りに闇の帳が戻ってくる。

 金色の炎の竜巻がいくつもの高層ビルを焼いていて太陽が落ちた跡も周囲を明るく照らす。

 エレベーターから降りるとすぐに周囲の様子を確認し現在地を確認する。


「今は、夜、何ですかね?」


 周囲の明るさと空の暗さに確認を取るエレオノーラ。


「あのうえでビームを地平の彼方にぶっ放してるの何? 異界の怪物?」

「この世界の物だよ。前々から試験をすると聞いていて話だけで実物を見たことはないけどねぇ。ロンギヌスかなぁ、もともとは衛星に乗せて星の外から一転照射する兵器だったはずだけどねぇ」


「なんな威力の兵器どうするの? 向こうの町が灰になってるんじゃないの?」

「確実に王手を取るための兵器だよ、地下深くに隠れていても貫けるだろぅ? それにあの角度なら海を焼いていると思うよ、ターゲットが空母かミサイル潜水艦か知らないけどそのへんだろうねぇ」


 エレベーターが降り立った場所は開けていたため、場所移動をするためグリフィンが皆を収集する。


「向こうの建物の影に移動する。こんな開けた場所だと見つけてくれと言わんばかしだからな」

「この場所はどこだ?」


「そこに見えるのが2番正面ゲートだ、目的の建物まで障害物はなく一直線だ走るぞ。ここは目立ちすぎる」

「他の連中はまた別の場所か、途中まででも一緒なら心強かったんだが」


 エレベーターから降り周囲を警戒しながらミカが剣を持ち正面に見える大きなタワーを見た。


「他の怪物たちが集まってこないようにするためです。流石にすべてを同時に相手するのは勝ち目がありません」


 バラバラになった人の欠片が落ちている。

 ほとんど原形をとどめないほどの人だったものが、そこら中に散らばる凄惨な光景だが皆少し眉をひそめたが武器を構えた。


「怪物の仕業じゃないな。テロリストが乗ってきた強化外骨格の装備、スクリームだろうな」

「対物ガトリングか、名称で呼ぶと皆が怪物と間違えて身構えるから武器の種類で言ってくれ」


「確かに自分で言っていて、本能に武器の名前だったか怪しくなったな」

「ならその辺に散らばってる戦闘ドローンや装甲車の破片もそれか。えげつない威力だな」


「大雑把な面制圧能力はあるが、ブレがひどくて精密射撃はできない。小さな的を狙うには必要以上の弾薬を使う。こう、あちこちで景気よくばら撒いているのなら出会う頃には弾切れを起こしていてもおかしくは無いな」

「なら見かけたら弾切れかどうか真っ先にグリフィンが突っ込んでいってくれよ」


「断ろう。よし慎重に進むとしようか。あのパワードスーツは大きい、見かけたら知らせてくれ」

「負けられないんだから、慎重に行動してくれよ」


「とはいえ、人相手の戦法が通じないんだから仕方ないだろう。パワードスーツも戦車も専門外だ。俺らは民間企業に雇われた傭兵なんだ、怪物相手に戦う勇者でも防衛軍でもないんだ」


 あたりに敵の姿はなく金色の炎の柱の火の粉が舞い落ちてくる中を走りゲートをくぐり敷地内へと入る。

 敷地内も敷地外も光景は変わらず、えぐり取られた地面とめくれ上がるアスファルト、傾いた建物からは砕けたガラス片が零れ落ちていた。


「この炎、さっきからパラパラ降ってきてるが大丈夫か?」

「問題はありません。あの炎は魂の抜け殻とその周囲を焼いています、しかし入れ物に入っている場合は飛び火することはないでしょう。あの火柱はあの場所でそれだけ多くの命が奪われたということです。火の粉には触れても問題はありませんが火に飛び込めばただでは済まないでしょう」


「あれは何のために異界から持ってきたんですか?」

「死体から広まる疫病を防ぐためでしょう。あの、すべて説明していくのは時間がかかって面倒です。戦いに集中してください」


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