混沌極まる世界 2
画面は獲物を探して建物の敷地内を動く大型の強化外骨格や戦闘用ドローンを映す。
それに混じりその世界の生き物でも機械でもない何かが写る。
『企業の情報サーバーにアクセスし情報を集めた結果、その施設ビーナスも検証気とは名ばかりのどこかの世界から流れ来た物だとわかりました。しかしどうやらこの世界に来た時には損傷しほとんど動かない状態のようでした。それを企業が回収して、修理と改修を施し動くようにして稼働、多くの犠牲を払いながら異世界を旅する技術を使って異世界の技術を集め始めました』
投影されていた画面が消えて行きそれと同時に舞台の上のホログラムたちは消え、舞台に残った4名の人型の異形が残る。
『集めた技術を、企業は自分たちの世界で使いやすいように尖った性能から汎用性を持たせるために性能を落とし調整したものを企業の研究結果とし商品として流通させていました。異界の技術は皆さまが肌で体験したとおり非常に危ういもので、危険なものほど何かあった際に潰しの効く遠方にある企業の支部で研究が行われていました。しかし、それが失敗し暴走した挙句、同じように遠方で研究が行われていた別の支部を攻撃。そこで研究が行われていた異界の技術を吸収し、その勢力を大きくしていきました』
ホールの後方から小さのモーター音が響いて来て、座席横の通路に武器を乗せたドローンが何台も走っていく。
『どの世界から何が連れてこられたのかがわからない以上、皆様に戦っていただく相手の種類は不明。我々も今現在あの世界にいる怪物たちを完全に把握はしておりません。我々も箱舟に乗せられて送り出されたのは突然の出来事で事前の情報の収集が満足にできていなかったため、この日に向けてできることはどんな敵が出ても自己判断で戦えるように我々はあえてその世界の情報を絞ることだけでした』
舞台の上の4名にスポットライトが当たり、彼女たちは一瞬眩しそうに目を覆う。
『彼女らは皆さまが巡ってきた世界の超常なる力を人の体に施した人形、最後の戦闘となる本日は微力ながら我々も戦います。異界の力を人の体に押し込めたもので戦力にはなるはずです。とはいっても、彼女たちは我々の人格情報をインスト―ルした人形にすぎませんが』
舞台の上にいる4名はそれぞれが頭を下げる。
『体中に刺青があるのが箱舟1号の管理AIガブ。虫のような羽が生えているのが箱舟2号の管理AIラーファ、体が毛深く鮮やかな翼が生えているのが箱舟3号管理AIミカ、頭に輪が浮かび白い羽が生えているのが箱舟4号管理AIウリです。それでは私たちの分身体となるあなたたちそれぞれ自己紹介を』
静まり返ったホールに彼女らの声が反響する。
「ミカがかわいそう。ウリは口が悪い」
刺青の入った手で横にいるミカの肩を叩く。
「毛深くは酷くないですか?」
鮮やかな羽毛で覆われた翼の先をぺたりと床につけミカは虚空に向かってぼやく。
「私が一番綺麗、美しい」
頭に輪のついたウリが一人誇らしく胸を張る。
「戦闘に見た目は必要ないでしょ、これは何を張り合っているの?」
ラーファが小さな蝶のような羽根を広げて小さく羽ばたかす。
「ほらほら、皆さんはもう電子体ではありません。個人通信はできませんから、私語は慎んでください」
ぼそぼそと話す3名をガブが呆れた声で叱り、舞台を見ている兵隊たちを見る。
そして息を大きく吸って声を張った。
「わたしたちは戦ったことがありません。ですが戦闘経験は皆さまのものをフィードバックし、それなりの戦闘ができるはずです。とはいえ皆様が我々を嫌っているのも記憶を整理するうえで知っています、戦いが終わりすべてが終わった際は我々をどうしようと構いませんし、サーバールームへの道を開放しますので破壊しに来てください」
舞台を照らすスポットライトは消えホール内が明るく照らされる。
『説明は以上です。皆さまいつものように武器を選びエレベーターの上へとお集まりください』
説明が終わると皆席を立ちあがりいつものように武器を選びに行く。
立ち上がってすぐにエレオノーラがベニユキの袖を引いた。
「一緒戦ってくれるんですね。頼もしいです」
「あの、スーパーヒーローみたいな特別な力が使えるのは頼もしいけど。戦ったことがないって言っていたしあんまり頼りにならない気がするけどな」
「ベニユキさんは見たことがあるんですか?」
「ああ、箱舟が攻め込まれた時に最後に戦ったんだあの頭の上にわっかが浮かんでいる奴と」
座席横の通路に並ぶ武器コンテナ。
そこに並ぶ武器が見慣れない異質なものに変わっていた。
「昨日の武器じゃないな……?」
近接の武器はナイフのみ、残りはすべて銃なのだが昨日のものとも今までのものとも違うもの。
「この武器はどうなんだグリフィン、強いのか?」
「どれも知らないな、異世界の武器だろうが今まで見たことがない奴だ。他の箱舟の戦利品なんだろうか?」