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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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世界を蝕む者 5

 残った取り巻きの怪物たちを再集結させ大型の怪物は、餌から脅威と認識した敵へと巨体をよじり正面へと向けた。

 巨体は体下部の発光器を激しく点滅し、それに呼応するように周囲の怪物たちが点滅する。


「怪物たちが集合しているな」

「なんか光ってる、地下で見たやつだ会話している」


 弾倉を取り換え怪物を殺せる兵器である六角形の柱を構え狙いをつけるが、飛行型の怪物が巨体を守るように飛び回りその身を挺して巨体を守ろうとしていた。


 今しがた倒した巨体が何もかもを破壊しながら通り過ぎ黒煙を上げる大通りの向こうからその巨体を追っていたグリフィンらがやってくる。


「ここにいたかベニユキ君たちは。他の箱舟のメンバーと一緒だったか」

「グリフィンたちも無事だったか、一匹倒したんだがもう一匹いた」


 彼らは倒した巨体を一瞥するとすぐにまだ動いている方向の巨体へと視線を移す。


「崩れた建物の瓦礫に当たったりしてあまり無事でもないがね。さて、ではあれも倒してしまうか。迎えも来ないようだしな」

「簡単に言ってくれるな、一匹倒すの結構大変だぞ」


 ともに行動していたキュリル、アイン、テオらももう一匹の個体を見てすぐに弾倉を取り換え再び始まる戦闘に備えた。

 戦闘が終わったと思っていたギルベルトやカノンは顔を引きつらせ、皆の真似をし渋々戦う準備を始める。


「ああ、背中側の殻は非常に固い。倒すなら上面ではなく下部の腹あたりじゃないかと話し合っていたところだ。狙い始めたところで進路を変えられて逃げられたがね」

「真っすぐこっちに向かって来たよ、こっちは頭を潰して視界を奪って今こうして何とか生きてる、点滅で会話してるってことは目がいいんだろこいつ?」


 移動するたびにビルをなぎ倒し瓦礫の町を作り上げた怪物とベニユキたちは向かい合う形で立ち尽くす。

 そうしている間にも瓦礫や無事な建物を影に移動し迫ってきていた怪物たちのあの騒がしい音がなりはじめ雨音がかき消される。

 羽音で何もかもがかき消される前にグリフィンが仕切り叫ぶ。


「諸君、銃を持っている奴は回り込んでくるやつを頼む! 対怪獣兵器を持つ他のやつはあの怪物が動き出すと同時に攻撃してくれ、流石に一斉攻撃を止めることはできないはずだ、足は思ったより硬かった頭や腹を狙うことを忘れんように!」


 そして頭が割れんばかり、手の届く範囲にいる者にも声が届かなくなるほど音が大きくなると巨体が動く。

 グリフィンが身振り手振りとともに何かを叫ぶと構えていた柱から紫色の光弾が巨体めがけ発射される。

 それを合図に一斉に飛んでいく紫色の輝き。

 最初の一発といくつかは飛行型の怪物が身を挺して受け止め砕け散る。


 周囲では建物の壁を破壊、あるいは瓦礫を乗り越え飛べない方の怪物たちが迫り銃撃が始まっていた。

 合流し人数が増えた分それだけ火力は上がり、無数の光の帯と残していた手榴弾の赤い閃光が瞬きエレオノーラやルナたちが怪物たちを食い止める。


 ゆらりと揺れながら迫る巨体の腹の下からボロボロと何かを落とす。

 巨体の下で蠢きだす粘液がまとまりついた半透明の外骨格を持つ小型の怪物。


 生まれたちの命もベニユキたちへの明確な敵意を持って移動を開始し、体を丸めその独特な移動方法で持ってベニユキたちの方へと転がり跳ねてくる。

 数と数のぶつかり合い総力戦だった。


 戦闘は数分とかからず、音は止む。

 喧しい羽音は止まり、地響きを止まり、破裂音とも似た音もしない、雨音も止み空はにわかに日の光が差し始めた。


「……終わった、勝ったぞ」

「ああ、終わったな」

「また耳がジーンとします」

「生きてる心地がしないっす」

「もしかしてみんな生きてる?」

「ひょっとして怪我人はいるけど、みんな、ぶじ?」

「そのようだねぇ、くたびれたよ」


 日が節々から噴き出る巨体を見て皆が武器をおろしため息混じりに笑っていると、ルナがベニユキのもとへと駆け寄ってきて飛びつく。


「ユキ、勝ったよ、勝った!」

「ああ、化け物二匹を倒したな……疲れる」


 ふと日の光がすこし暗くなり、見上げればそこには箱舟の入口が浮いていた。

 皆の前にゆっくりとエレベーターが降りてきて管理の声が響く。


『他個所の目標も倒され目的は達成されました。みなさんお疲れ様でした、箱舟へと帰還します。どうぞ乗ってください、ここにいない方々はウリたちが回収しております』


 ミカの指示に従いエレベーターに乗り込む。


「そういえば、使えなくなったり弾切れを起こしたりして荷物になるからその都度武器を捨ててきているが大丈夫なのか?」

『はい、問題はありません。戦闘中に投棄、あるいは持ち主ごとロストした場合、すべて皆さんを回収したのちにドローンで回収あるいは完全破壊しております』


 テンメイが床に腰を下ろし水を飲みながら呟く。


「異世界にはドローンが活動できないみたいなこと、言ってなかった?」

『このエレベーターシャフトからの精密攻撃で破壊することも可能ですから』


 その場にいた全員がエレベーターに乗るとエレベーターはせりあがり、動かなくなった二匹の巨大な怪物、崩れた建物を眼下に世界に別れを告げる。


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