世界を蝕む者 4
取り巻きの怪物たちも少なく大きな音を立ててきた向かってきた3匹をベニユキたちと合流したルナたちとともに排除した。
そして残った奥から向かってくる大きな影に狙いをつける。
取り巻きの怪物たちは排除されやかましかった騒音が消え雨音と怪物の移動時の破壊音だけが響く。
「ユキたちの方の怪物が来たね。みんな、攻撃準備! あいつを追い払って早くリーダーたちと合流しないと!」
「それぞれ一匹ずつあのでかいのを倒すってことなのか、待っても他と合流しないわけだ。たまたま、お前と合流はできたけど」
「運命の糸を手繰ってきた?」
「かもな。さぁ、話している場合でもないな。すまないこっちはでか物に対抗する武器の弾を撃ち尽くしてしまった。分けてくれないか?」
「そういうことね、わかった」
大きなバックを背負った仲間から替えの弾倉を受け取りルナはベニユキへと渡す。
「はい、エネルギーパックの替え。六つもあれば足りる?」
「ありがとう」
半分をウーノンに渡し取り換え六角形の筒を肩に乗せ構えた。
「真っすぐ向かってきてるし近い、頭を狙って!」
道路の真ん中を乗り捨てられた車両を乗り捨て港に向かう旅客船のように迫ってくる大きな怪物。
取り巻きを失い巨大な体を生かしての体当たりのみ、怪物も自身が生き残るために頭に数発の攻撃を受けるも足を止めない。
雨音にも負けない破裂音にも似た音が響きベニユキたちは次第に見上げるようになる怪物への攻撃を続ける。
「止まらない!」
「頭に攻撃はしている、もうこっちが見えていないはずなのに」
エレオノーラたちも対戦車用の武器は持っていないが高威力の銃を撃ち始め、怪物の厚く硬い外骨格にわずかながらに傷をつけていて次第に関節部へと攻撃が集中する。
受け取ったすべてのエネルギーパックを打ち尽くしたところで怪物の頭がもげる。
「頭が落ちた!」
しかし首を失ってもなお怪物は足を止めない。
取り巻きもなく単体で向かって来た事で狙いやすくなったとはいえ、相手が弱る様子もなく流石に戦闘を続けてもいられず怪物の進路から離れようと走り出す。
「駄目だここにいると踏みつぶされるぞ移動だ急げ! 走れ!」
「少し進路が傾いている、こっちじゃない向こう側に渡れ! あっちは安全だ、頭もないし向きを変えてはこないだろ!」
車両を飛び越え移動していると塗れた車の屋根で滑り転んだホルテンを車を避けて走っていたマルティンとガーネットが腕を掴んで立たせて走らせる。
「ウーノン! 手榴弾だ!」
「本当に投げる時が来るとはな!」
ベニユキの大声に同じく手榴弾を持ってきた何人かがハッとなって持ってきた手榴弾を手にしてピンを抜いて大きく振りかぶって怪物の方へと投げ込む。
投げられた手榴弾のいくつかが怪物の体のそばで爆発し、赤い稲妻が怪物の体を伝わる。
何度となく攻撃を受けた首の無い怪物の体は熱で焼け輝きを失い黒ずみ、外骨格の一部からは火が噴き出るがそれでも歩みは止まらない。
「これでもダメか!」
先に安全地帯についたルナたちが対戦車兵器で攻撃を始める。
銃が引っ掛かり遅れたネシェルが危うく何本もある脚で踏み潰されるところだったが、寸でのところで絶え間ない攻撃で怪物がよろめき進路から離れ無事に大通りを通り抜けアンバーに受け止められる。
「よく走り切ったね」
「……こわかった」
来た道を振り返れば今しがた通った道が金属が変形する音と土煙とともに怪物の下に消えてなくなった。
「みんな無事か?」
「危うく死ぬところっしたっす」
振り返りベニユキはみんながいるかの数を数えていると、額を切ったホルテンが返事を返す。
怪物の通り過ぎた後は潰された車から漏れ出た燃料が黒煙を吹きながら雨で消化されることなく燃え上がるのみ。
「ほら来たぞ敵だぼさっとしない!」
どこからか来た飛べないタイプの怪物たちが路地を通って向かってくがテンメイやマルティンたちが攻撃し食い止める。
「俺らはあっちのでかいのをいよいよ仕留めないと」
ベニユキたちの前を通り過ぎて行った怪物は建物へとぶつかりビルを数本倒しそこで止まる。
足がまだ動いてはいたが背中に降りかかった瓦礫から抜け出せず、その場で足踏みをするようにばたつかせるのみ。
「弱って、自力で動けなくなったのか?」
「結構攻撃を当てたからね」
改めてエネルギーパックを受け取りとどめを刺そうと六角形の柱の柱を構えていると、黒煙の向こうから紫色の光の砲弾がいくつも流れ星のように飛んできて瓦礫に埋まりかけている怪物の体へと当たる。
「俺ら以外の誰かか、合流したいな」
「グリフィンたちかもな。あるいは他の箱舟のやつか」
ボンヤリ見ているわけにもいかずまだ動く怪物へと攻撃を始めた。
完全に動きを止めてその大きな体からは炎がそこかしこから噴き出てぱちぱちと音を立てる。
「倒した……倒せた」
ルナは動かなくなった怪物を見てそう呟いたが、しかしまだ地を揺らす足音は聞こえて、最初にルナたちが戦っていた怪物は街を進んでいた。
「迎えが来ないってことはまだ終わっていないってことだような」
「4匹全部倒すってことか?」
「流石に何匹かは自力で倒しておいてほしいところだけどね」
ウーノンとベニユキ、マルティンはもう一匹の怪物の方を見る。