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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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破壊の足音 4

 大型の怪物を倒すための六角形の柱を背負っているのはウーノンとコウエイの二人。


「コウエイさん、そんなの背負ってたっけ?」

「え、あ、これは、いっぱいあるからって一つ分けてもらって……。あの、誰か持つの変わります?」

「二つしかないか、こっちであのでかいのを倒すのは無理そうか。なら逃げよう、俺たちができるだけ怪物たちをひきつければ仕留めてくれる」


 落下時にぶつけた腰をさするエレオノーラと合流し彼女の無事を確認していると、ベニユキたちのいる通りの建物が二つ同時に崩れる。

 地響きとともに崩れた建物の土煙の中から姿を現せる、長い体に複数の足と鋏、不思議が光沢を持った外骨格、背中には大きな甲羅を背負う巨大な怪物。


「近い!」


 高さはビルとほぼ同等だが横幅は6車線の道路より広く、その体が道路に出てきて車両を踏みつぶしベニユキたちの方へと方向転換する。


「でっかい! すごいでっかい!」

「どうする、もう来るぞ!」


 取り巻きのように他の怪物たちも現れ始め、一度は小さくなり始めた虫の羽音が大きくなり始めた。

 声がかき消される前にアンバーが叫ぶ。


「すぐそこに地下鉄の入口みたいのが見えるよ! あそこに逃げないかい!」

「そこだよ、みんな!」


 息を切らせたガーネットと支えられたアンバーが指を指さす先に地下へと続く階段が見え、誰が決めるまでもなく一斉に乗り捨てられた車を乗り越え走り出す。

 大型より足の速い地を走る小型が先に迫ってくる。


「くそ、追いつかれる。後ろに気を付けろ反撃しながら下がるんだ!」

「逃げるのが精いっぱいだよ!」


 ベニユキが皆の逃げ込む時間を稼ごうと足を止め銃撃を始めると、ウーノンとマルティンも足を止め向かってくる怪物へと向かって戦闘を始めた。

 意図はしていなかったが誰かの攻撃が車両の燃料に引火し炎と黒煙の壁ができ、そのすきに全員が暗い地下へと駆けこむ。


「ライト、ライトがどっかに鞄の中に入れてきた」

「あ、私も持ってる。誰か灯りをください」

「なんか足が粘つくね、鉄っぽい臭いするし機械の油でもこぼした? 嫌だよ燃料爆発するのは」


 何人かが持ち合わせていたライトで暗闇で満たされた通路の奥を照らす。


「あの虫たち穴とか掘ってこないだろうね? いや、天井も高いしあの大きさならぎりぎり入れるか……」

「それよりこの揺れで通路が潰れたら俺ら生き埋めになるっすよ」


 ゴミが散らかりはしているものの、つい最近まで人がいたかのような泥も埃も積もっていない地下道。

 地上は雨で洗い流されていたが、通路の奥からベニユキたちがいる外へと続く階段へと何かを引きずった大量の血の線が引かれていた。


「……進みます?」


 通路の奥からゆっくり壁と地下商店街らしき場所、そして足元へと照らし声を震わせてホルテンが確認を取り、それを見てアンバーとネシェルが気がつかれないよう集団の中央の方へと移動する。


「ここでこうしてもいられない、進もう」


 地下に入りより重々しい音となって響く足音に追い立てられるように、皆暗い通路へと進んでいく。


「本当に崩落しないだろうね?」

「もう来ちゃったし、表には怪物の群れです。もうどうしようもありません進みましょう急いで」


 不意な戦闘にそなえ銃を構えながら小走りで進む。

 途中でテンメイがこの世界の誰かが落とした靴に躓いて転倒し、後から来たウーノンとマルティンに腕を掴まれ引きずられるようにして運ばれていく。


「怪物が入ってきたよ!」


 運ばれていくテンメイが叫ぶ。

 階段を下ってきた怪物はベニユキたちを追って地下通路を進んでくる。


「報告じゃなくて、戦えばどうだ」


 ズンと真上から音が下かと思うと今しがた通ってきた道が崩れ、大量の土が通路を埋め追ってくる怪物が土の中に消えた。

 と同時に止まずに響いていた虫の音が遮断させ消える。

 戻ってきた静寂に違和感を感じながらも崩落した背後へと明かりを向けた。


「危なかった……危うく生き埋めになるところだった。怪物も埋まったか?」

「そのようだな。でもこれで進むしかなくなった、引き返せない」

「どのみち進むしかないんだ、どこに続いているかわからないけど出口を探そう」


 その後も足音に合わせて崩落個所のそばが大きく崩れる。


「止まっている場合じゃないな、巻き込まれるぞ進め」


 数個しかないライトで道を照らし、どこに続いているかもわからない通路を進む。

 ふと先を進んでいたホルテンが足を止めた。


「何か光ってるっす」

「グリフィンか? それとも他の箱舟のやつか?」


「わからないっす、光が弱くて。サイリウムですかね?」

「暗視装置とか使ってるのか? 照らしてくれるか?」


 暗闇の中で黄、緑の光がちかちかと点滅しており発光源へと向かってライトで照らす。

 照らされる光沢のある怪物の姿。


「うわっ!」


 慌てて銃を構えると怪物はちかちかと光を点滅させて迫ってくる。

 通路の奥から同じようにちかちかと光が返ってきて足音が響いてきた。


「発光機関で会話をしているようだねぇ」

「さがって、もっと」


 怪物に飛びつかれないように下がりアンバーを引っ張り回してガーネットは銃を構える。

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