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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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破壊の足音 2

 見える範囲には飛行するタイプの敵と崩れた建物の近くから、わらわらと現れる地上を這うタイプの怪物が現れベニユキたちの方へと向かってきている。

 バババと蠅というよりヘリコプターのような低く重たい音ともに飛んできた数匹が、広い道路に豪快に着地し車両を押しつぶし吹き飛ばしガラス片が弾け飛ぶ。


「生きた砲弾が飛んできたぞ」

「無茶苦茶なんですけど!」


 落下時にアスファルトすらめくりあげ、撒きあがった土煙は小雨によってすぐに晴れその体が現れた。

 細長く自動車と同等の大きさを持った黄金色の体の下で、黄色い光点が複数点滅している怪物。

 コッコッコと何かがぶつかり合うような小気味いい音とともに怪物は長い足を地につけ体を持ち上げる。


「でかいな、全部で何匹だ!」

「6匹、残りはでかい怪物を守るように旋回し続けている。これ以上こっちに来る様子は無いな」


「なら、ここにいても囲まれるだけだ有利に戦える場所を探す移動するぞ」


 銃を構え狙いをつけると向こうも敵意を察知したようで長い前足を振り上げ威嚇した。

 怪物に近かったテンメイとホルテンがが銃を構え怪物に向かって発砲、銃からは銃弾の代わりにオレンジ色の細いビームが放たれる。

 反動は少なく狙った場所へと一本の線のように放たれた弾は、怪物の外骨格を削り出し穴を穿ち、空いた穴から体液が噴き出た。


「効いてないっす!」

「使えない武器を渡されたの!?」


 グリフィンたちは十分に離れた場所から狙いをつけ、他の者たちが逃げるサポートをする。


「殻は貫通している、致命傷になってないだけだ」


 10以上の光の線が暴れる怪物へとまとわりつき、羽を捥ぎ長い足を毟り大きな体を切り分けていく。


「旧世代の戦車なら、この大きく重たい対戦車兵器なんて使わず歩兵一部隊で破壊できる」

「楽しそうだなグリフィン」


「この武器は軍で正式採用され……」

「その話は出撃する前に聞いたよ、よっぽどうれしいんだな」


 残った飛行型も距離を取った飛び道具の前になすすべなく倒され地面に崩れていった。

 テンメイらが追い付くと路地へと入り討伐目標である巨大怪物のいる方向へと向かって歩み寄っていく。


 先に現れた飛行型の怪物を倒し終えたころ、遅れて飛ばない地面を歩くタイプの怪物が合流してくる。

 乗り捨てられた車両を乗り越え又は弾き飛ばすようにして向かってきていて、迫って来るにつれて黒板を引っ掻くような音が響いてくる。


「何の音だ?」

「私この音嫌いだ、背筋がぞわぞわするし耳が痛い」


 何人かが眉間にしわを寄せ耳を塞ごうとする。


「次が来た、そこの路地の奥へと行け」


 向かってくる人の身の丈ほどある茶褐色の体を持つ怪物。

 スズメバチのような大きな鋏のような口を持ち、百足のような大顎を持ち前足は蟹のような鋏が付いていた。


「捕まったらどうやっても逃げられなさそうなほど腕が付いてるな」


 背中に生えた小さな羽根をこすり合わせ、かん高い音を立てていた。

 怪物の放つ異音は複数が重なりあい、そして雨音をかき消しビル群に広がっていく。


「音の元凶はこいつか」

「何か言ったか! 音がうるさくて、聞き取れない!」


 頭が割れんばかりの音量に互いの声すらも聞こえなくなる。

 身振り手振りで進路を指示し奥へと進んでいく。

 逃げ込んだ路地の入口から現れる怪物は体の大きさから一匹ずつしか入ってこれず、入ってきた順にベニユキらの総攻撃を受ける。


「こいつ飛んできた奴の倍以上に硬いな」

「脚を狙え! 聞こえてるか! 足を狙って行動を封じろ!」


 先ほど以上の猛攻を受け外骨格が削れるも体は固く怪物はひるむことなく路地の奥へと進すんできた。

 ほぼ全員の集中攻撃を受けてもなお怪物は倒れず路地へと入ろうと前進を続けている。

 怪物たちの襲撃に遅れて遠くから怪物の親玉的な存在の足音が地面の振動とともに響いてきた。


「でかいのが動き出したな」

「何か言ったかベニユキ君? 地面が揺れ始めた! あの巨体がこっちへと向かってきているんだろうすぐここから離れ有利に戦える場所を探す!」


 激しい音の渦の中で叫ぶグリフィンの指示が聞こえたのかどうかはわからないが、走り出した彼らの後に続いて追ってくる怪物をある程度まで弱らせると路地を進んて行く。

 脚の止まった仲間の背を超え次の怪物が路地へと入ってくると、ウーノンが手榴弾を手に取り放り投げた。

 怪物の足元へと転がり赤い稲妻を放って爆発する。


「武器の威力は上がっても、相手の耐久が高くて実感がないな」

「一匹二匹倒してもダメみたいだな、すぐ次が来る」


 路地はゴミ袋や廃材が積み上がり狭い道がより狭くなっていた。


「どこの世界の路地も汚いことに変わりはないな」


 怪物たちから離れると音は多少ましにはなるが、それでも嫌な金属音のような虫の音に頭を押さえていた。


「五月蠅くて気分が悪くなってきた、吐きそう」

「大丈夫ですか、テンメイ。音はやみませんし、どうしたら」


 そこにブラットフォードが現れ救急箱から薬瓶を取り出す。


「とりあえずこの薬を飲むといい、精神的疲労を少し和らげてくれるはず」

「薬は苦手だなぁ」

「苦くはないですから」


 他にも数人大音量に体調の不調を訴えコウエイたちもエレオノーラとブラットフォードの指示に従い水と一緒に薬を飲ませる。

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