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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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破壊の足音 1

 一同は通路を歩きエレベーターのある礼拝所の方へと歩いていく。


「見慣れた場所に戻ってきたねぇ」

「なんかもう落ち着く場所だよ」


 見慣れた施設内をアンバーとブラットフォードが苦笑いしながら進む。

 礼拝所へと入ると舞台の上にミカのホログラムが浮かび上がり、今一度姿勢を正して彼らの見送りをする。


『エレベーターへとどうぞ』


 ミカの声が空間に響き、最初に舞台に上がったグリフィンが答えた。


「本当に降りた意味ないな。降りた分無駄に時間を食っていないか?」

『もとよりこの箱舟が存在する空間に、時間という概念はありません。箱舟同士が離れてしまえばそれぞれ別の時間を過ごすことになりますので、誰も待つことにはなりません』


「この数日で驚き疲れて、もういまさら何を聞かされても、そうかで済ませたくなるな」

『本日の戦闘。頑張ってください。我々、あなた方のためにも勝利を』


「そっちが約束を守ることを祈るよ。また記憶を奪われたら、こっちはどうにもできないからな」

『ご心配なく約束は守ります』


 エレベーターは乗り換え舞台に上がるとミカに見送られ、再び降下を開始し世界に降りたつ。


 箱舟の施設内のこもった空気と違う、移動した世界の独特の匂い。

 高い高層ビルが立ち並ぶ都心部、エレベーターは大きなデパートの玄関前に降りたち武器を構える。


「随分と派手な場所だな城……じゃないな店、デパートか? 埃も積もってないしまだ綺麗だ今まで見てきた世界より荒廃が進んでいないな、さっきまで人がいたみたいだ」

「さぁ、戦いを始めようか。建物がいつ倒壊してもいいように奥には入らないように」


 ベニユキが感想を呟く横でグリフィンが指示を出す。

 全員がエレベーターから降りると、エレベーターは無人のまま上がっていき箱舟の出入り口もろとも消えていく。


「地面が揺れてるな」

「怪物が近くにいるんだろう、ここにいても仕方ない行くぞ」


 電源が通っていないため前に立っても自動ドアは開かず、玄関の扉の大きなガラスの扉をたたき割りデパートを出る。


「大きな音を出すの怖いな、聞きつけて襲ってくるぞ?」

「その心配はなさそうだ」


 6射線ある大きな道路が広がり乗り捨てられた車両が歩道にも広がっていて、外は暗く濃い雲が空を覆っていて小雨が降っていた。

 雨は長い間振っていたようで地面に大きな水たまりがいくつもできている。


「雨だな、視界が悪くなるほどではないが体温が奪われる」

「風邪ひく前に倒して帰ろう」

「お風呂入りたいですね」


 一定のリズムで地面が揺れていて周囲の水たまりが一斉に波打つ。


「揺れているのはわかるが、敵はどこだ?」


 冷たい雨を気にし武器を構えながらウーノンがそんなことを言っていると、激しい音を立てて大通りの奥のビルが何の脈絡もなく倒壊し道路に倒れ込む。

 テンメイら何人かは慌ててデパートの方へと引き返していき、グリフィンらも大きな道路に大量に乗り捨てられた車の方へと走り隠れる。


「敵が見つかったな」


 画像で見た巨大な怪物の影、太陽が出ていなくても光沢ある体は鈍く光り輝いていた。


「他はまだ戦っていないようだな、我々が一番槍だ」


 そういうとグリフィン、アイン、ドミニクたちがそれぞれ肩に担いでいた対戦車兵器らしき六角形の柱を雨で控え気味になっている土煙に見える巨体へと向け構える。

 今にも攻撃しそうな彼らにベニユキは尋ねた。


「誰かが戦闘開始した時、後ろから援護するだけじゃダメなのか」

「今その状態で、全員が誰かが攻撃してくれないかと待っているとはおもわないかな。背後よし、後ろに立つなよベニユキ君。こいつは排熱がすごいんだ」


 グリフィンが答えを返すと巨体へとむけて攻撃を開始し、ベニユキは楽しそうに答える彼が手にした武器の性能を試したいんだなと判断するのに時間はかからなかった。

 最初の一発、それに続きアインとドミニク、同じく対戦車兵器を持ってきていたウーノンやカノンたち何人かが武器を構え発射する。

 筒の後ろからゴォと音を立て熱波が放たれ、柱の先端から放たれた青白い光の砲弾が地面と水平に飛んでいき遠くに見える影へと向かって行く。

 そして紫色の眩い閃光とパァンと何かが弾けるような音がビルに反響しながら数度響く。

 怪物の巨体の影が身じろぎし急速に向きを変え、最初に倒れたビルの横のビルも倒壊し始める。


「第二射用意」

「まだ撃てるのかそれ」


 グリフィンの指示に再度柱を構えなおすアインたち。


「三発入りだ。替えのエナジーパックもある」


 そういうと今度は息を合わせての一斉射、青白い光の砲弾が巨体へと向かって飛んでいく。

 だが今度はその巨体に命中することはなかった。

 小型の怪物、それでも乗り捨てられた自動車よりも大きな怪物が数匹飛んでいった光の砲弾へとぶつかるように飛んでいき紫色の閃光とともに体液を沸騰させまき散らし弾け飛ぶ。


「防がれた」

「もう撃つな、これ以上は防がれる。奴が近づいてきたときに再度試みる」


 続けて最後の一発も打とうとするアインらを制止し、柱を背負いなおしてグリフィンらは道路の向こう側のビルへと走り始める。


「ここに怪物が来るぞ! さっさと場所を変えないと囲まれることになる!」


 指示は小雨降るビル街に反響し血相を変えてテンメイらがデパートから出てきた。

 空にもいくつもの黒い点が浮かび始め、ネシェルが長細い狙撃銃を構えそれらを狙う。


「向こうは蜂の巣をつついたような騒ぎじゃないか」

「今グリフィンがつついたのを見たでしょ、作戦も何も聞いてないのに勝手に始めて」


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