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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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試練 1

 戦いの怪我も心の傷も、一度の睡眠で回復し目を覚ませば何事もなかったかのように過ごすことができる。

 勿論心の怪我は完全には癒せず何人かは耐えかね砕けてしまう。

 今箱舟で戦う者らは心の傷に慣れた者か寸でで耐えている者たち。



 目を覚ませばそこは知らない空間。

 いつも目覚める場所より部屋が広く壁や絨毯などが赤く、細かい刺繍が入っている。


「なんだ、いつもと違う場所か?」


 カプセルから起き上がり見慣れない景色に驚きつつも、ベニユキは部屋の真ん中に置いてある机にたたまれている服に着替え部屋を出る。

 やはり知らない場所、いつもより天井が高く広い廊下。

 そこも赤いじゅうたんが敷かれており、長く伸びる通路は大きな円を描くように緩やかに湾曲していた。


「おはようベニユキ君」

「おはようマルティン。ここはいつもの箱舟の中なのか?」


「なんか雰囲気が違うよね。でも見たことがあるような景色だ」

「ああ、前に攻撃に向かった別の箱舟の中だと思う。よく似た別の場所ってことも考えられるが、俺らが知っているのはそこくらいだよな」


「ああ、あの怪物がうろついていた施設の中か。そういわれれば見覚えのあるような景色だ」

「とはいえ、どうしてこんなところで俺たちは目を覚ましたんだ?」


 小部屋は廊下の片側に偏っており部屋から出てくるものたちは不思議そうに周囲を見回す。

 二人が通路のどちらへと進もうとすると話し合っているとグリフィンがやってくる。


「やぁ、おはよう二人とも。不思議なところで目を覚ましたな」

「おはようグリフィン。ここ、別の箱舟っぽいよな?」


「ああ、そうだな。このフロアを見たことはないが、この通路は大きな輪を描くように伸びているどちらかに進んでいけば階段が見えてくることだろう」

「じゃぁ、とりあえずどちらかに進んでいくか」


 時折ガラスケースの中に入った異界の物体らしきものが壁に飾られており、それらを見ながら歩いていると遠くの方からエレオノーラがベニユキたちを見つけて走ってきた。

 彼女も知らない場所で周囲の様子を気にしながら話しかけてくる。


「おはようございますベニユキさん。知らない場所なんですけど、ここって別の箱舟なんですか?」

「そうかもしれないってみんなで話していたんだ。おはようエレオノーラ。みんなでこれから階段を探しに行くところだけど、一緒に来るか?」


「あ、そうですね……。ベニユキさんたちは先に行っていてください、私はアンバーさんやガーネットちゃんたち他の人と一緒に行きます」

「わかった。また後で会おう」


 エレオノーラと別れ代わりにテオとキュリル、ブラットフォードとドミニクたちと合流し階段を探して移動した。

 緩やかに曲がった通路の先に見えてくる階段。


「上に行けばいいんだよな?」

「最上階がエレベーターホールだったな。変わっていなければだが」


 下の階はシャッターが下りており立ち入ることができず、以前来た時と変わらぬその階段をぞろぞろと皆を引き連れて進んだ。


「また階段を上がり続けるのなら戦いに出る前に疲れそう」


 皆と一緒に階段を上るキュリルが不満を漏らす。


「今まで同じフロアにあった、俺らの部屋がいかに便利だったかわかるな」

「あっちは何もなくてつまらなかったけどさ」


 一つ階を上がると見えてくる階段の終わり。

 さらに上の階はなく、登り切り辿り着いたのはこの箱舟で大型の獣と戦った中央に向かって緩やかに窪んでいるすり鉢状のホール。

 その中央には異界に降りるためのエレベーターがある。


『皆様おはようございます。最寄りの階段を上がり最上階へとお集まりください』


 ホールを見回していると管理AIからのナレーションが入った。

 複数の入口から同じように階段を上ってきた兵士たちが広間に入ってくる。


「人の数が多いな、今までこんなに大勢いなかったろ」

「知らない奴が多いな。何だどうした、ここにきて増員か?」

「ここの箱舟の人かな?」

「それにしては数が多いよ? 私らも入れれば100人近くいるんじゃない?」


 入口から近くの席へと移動し席に着く。

 大勢が入ってくる大きなホールの向かい側の隅に、プラチナブロンドの女性の姿が見え思わずベニユキが身を乗り出す。


「向こうにいるのはルナか?」

「だれ?」


「他の箱舟……昨日の襲撃者にいた俺の知り合いだ」

「昨日の、襲撃者の中にいたの?」


「昨日の襲撃、向こうも箱舟の管理AIの命令だから許してくれないか。仕方がなかったことだろうけど謝らせるから」

「どうだろう、話してみないとわからない。いけ好かない奴だったら嫌い」


 少ししてエレオノーラたちも合流し皆であつまり席に着く。

 広く大きなホールも大勢が入りほとんどの席が埋まる、何人かはホールの壁に寄り掛かったり席と席との間の階段に腰を下ろしていた。

 ミカの箱舟同様明かりが消えていく。

 足元を照らす小さなライト以外消えると中央にあるエレベーターの上に、4人のホログラムが浮かび上がる。


『おはようございます。いくつかの世界を巡り箱舟は現在4基で纏まり動いています。本日は合同作戦です、皆さまには世界に降りたちとある厄災を排除していただきます』


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