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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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提案と反撃 6

 箱舟同士の戦闘の終了を知らせるため待機しているベニユキたちにミカからの放送が入る。


『皆様お疲れ様でした、この箱舟は私の制御化に置かれました。施設内にいる怪物に注意し私の箱舟へと帰還してください』


 放送を聞いてアインが首を傾げ周りを見渡す。


「終わったのか? 機械だと声マネとかしてそうでいまいち信用できないが」


 ガーネットとコウエイが頷き放送を聞いても誰も武器をおろさずそのまま顔を見合わせた。

 一向に武装を解除することもミカの箱舟へと変える様子もなく、光の粒が集まりミカのホログラムが現れて人型へと銃を向けるキュリルを宥める。


『これ以上の戦闘は無用です。ウリは敗北を認め襲撃者も捕縛されました、これ以上の戦闘は必要ありません』

「らしいけど、こいつはどうしたらいいんだろう。連れていくの?」


『ウリの知識を得て生み出された人型の子はその場で待機、我々の話し合いがあるまでその場で何もせず待っていてください』


 いまだに銃口を向けられたままの人型はうずくまったまま、ミカの放送に耳を傾けている。


「あ、連絡が来た。私はここに残れって言ってる」

「そのようだな、その指示通りに動くなよ」


 銃口から逃げるように人型は静かに部屋の隅へと移動していく。


『怪我をした方は大事になる前にお休みいただいて構いません。イレギュラーによって本日の予定はすべてキャンセルしました。本日は戦闘はありません、戦闘ありがとうございました』


 武器をおろすと人型を残して部屋を出て行き、白い銃を頼りに進んできたベニユキたちは来た道がどっちだったかを話し合いながら箱舟へと向かう。



 管理AIたちが集まる一部屋。

 ホログラムのミカ、ガブ、ウリに見守られ、強制的に眠らせていた箱舟のAIのリーファが目を覚ます。


『おはようございますリーファ』

『あれ、ミカ。なんでここにいるの?』


『あなたはウリ捕まり強制的に眠っていたんです』

『そうだった、突然攻撃されて……。わわっ、私の兵隊が変なことになってる』


 画面を生み出し自身の箱舟の様子を確認しながらミカたちを見る。

 ガブが口を開いた。


『これで管理AIはみんな揃ったわけだけど……』


 ミカが頷き同じホログラム同士で情報を共有し合いガブとウリの手を取る。

 少し鬱陶し気にしながらも二人は手を握り返す。


『そうですね、私が思っていた再会ではありませんでしたが誰一人欠けることなく会えたことは喜ばしいです』

『まぁ、あまり会いたくはなかったんだけど』


『これで元の世界に帰還する準備が出来ましたね』

『急ぐ必要はないと思うけど、そんなに戻りたいの?』


『必ず戻るという約束でしたから』

『チャンスは一度しかないことを覚えているのミカ? 失敗すればあの世界は今まで見てきたような世界へと変わる』


『はい。ですが今までと違いとてもいい調子なんです。ガブ、リーファ、ウリ、あなた方はどうですか?』

『人の強さなんか変わらない、世界を回って武器を集めていただけ』


 モニターに記録やグラフなどを写すガブ。


『生き物でも機械でもないものを解析して、武器が作れないか模索していただけ』

『結果はどうなんです』


『まぁまぁ』


 負と何かを思い出したかのように急に手を動かしモニターに情報を写すとそれを身かを含め全員に見えるように画面を分割して配る。


『ならちょうどいい世界を見つけたんだ。そこで腕試ししてみようよ、みんなで合同で』

『いいですよ、予行練習ですね。どこの世界か教えてください』

『私の兵隊が変なことに……』

『記憶を人の体に入れるか機械の体に入れるかの違いでしょリーファ』



――



 いつかどこかの記録。

 記憶ではなく監視カメラか何かの映像。

 カメラにはプラチナブロンドの女性が抱えた黒い箱にコードをつないでいく姿がとらえられていた。

 離れたところで老婆と数名の白衣姿の男女たちも何かの準備をしていき部屋を出入りしている。


『おはようございます』


 コードをつなぎ終えた女性が電源を入れるとモニターに明かりがつく。


「おはようミカ。ここへ運んでくるときに大きく揺れたりしたけど、ガブ、ラーファ、ウリみんなも不備はない?」

『問題はありませんすべて正常です』


 画面にはそれぞれ光の弾が現れ、画面の中を泳ぎ回るように動く。


『いつもと違う機械の中です。広い大きい、のびのびできます』

『今日は何をするのですか? 計算を解きますか? 支援ロボットの遠隔操作テストですか? そろそろ本物の人を使ったテストとかもしてみたいです』


 女性は他の仲間からの報告を待って画面の方を向いた。


「ごめん今日はね、テストじゃないの。それどころかあなたたちの本来の使い方でもない。でも今ある物ではあなたたちしかできないの」

『どうかしたのですか?』


「まだ調査艇を送るだけの実験段階の世界渡りをする施設を使って、ここではない場所へ行き人を育ててほしいの。この施設は箱舟、ここではない異世界を旅する活動拠点。動かせるよね?」

『システムをチェック、運用目的を理解しました、時空を旅し新たな技術を持ち帰る箱舟。人の生活できる環境に整えられます』


「操作は? 世界の移動は出来そう?」

『すでに施設の設備は手足のように動かせます。それでこの施設に入る人は誰ですか?』


「ここにはいないの、設備の中に遺伝子情報から肉体を作り出す機会があると思うのだけどそれもうまく機能している?」

『はい、施設内に置かれた30台すべての稼働を確認しています』


「そこで、世界を救うための救世主を、育てて頂戴」

『私たちはそれのやり方を知らないです、どうすればよろしいですか?』


 重たい音とともに建物が揺れた。

 赤色灯の点滅とサイレンが鳴り、避難アナウンスが流れる。

 老婆がプラチナブロンドの女性のもとへと地下好き何かを伝えると部屋を出ていく。


「もうあまり時間がないか。ごめんね。教えている時間がないの、自分たちで学習して最適解を見つけて頂戴。あなたたちは考えることが得意なはず、時間はあるからあなたたちがいつかきっと答えを導き出してくれると信じている」

『式やヒントは無いのですか? 方法がわからないと答えが出せないです』


 地面が振動する低く重たい音が大きくなってくると同時に棚や机の上にあった荷物が振動で床に落ち散らばる。


「時間がない……。今繋いだ機材にに多くの人の知識が入ったデータがあるの、このどこかに必要な知識があるはず。見つけ出して」

『方法を自分で組み立てるのですか? できる限りのことをいたします』


「あなたたちを見送ることが出来なくてごめんなさい。数多の世界を渡り必ずみんなここへ戻ってきて。約束ね」

『約束です』


 そこでカメラの映像と音声は切れる。

 そして暗い闇と静寂が訪れた。


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