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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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提案と反撃 4

 部屋に入る前に締め出されたことに驚くベニユキたちだったが、直後に扉が湯気を立て赤く光だし融解し始めた。

 離れていても感じる高熱に思わず全員がその場から距離を取る。


「この眩しいのはレーザーか?」

「当たったら即蒸発か、武器を持ってない奴は離れておけ」


 溶けだす扉を貫いて細い光の糸が伸び向かいの通路の壁を溶かす。

 光の糸が消えると壁には人一人が通れるほどの大穴が開いていた。


「ミカ、か。最大出力で蒸発させようと長い時間かけて蓄えていたのに」


 宙に浮く人型は羽根を羽ばたかせることなく宙を移動し部屋の中からベニユキたちのいる廊下を余裕を持った笑みを浮かべて覗く。


「さぁ、絶望しなさい。でもこちらの条件を飲むなら降参を受け付けます、ミカのサーバーの電源を落とすのです」


 隠れる場所もなくやられる前に白い銃を向け引き金を引いた。

 銃弾は人型に届くことはなく不自然に曲がり床に着弾する。


「落ちた?」

「捻じ曲げたのか」


 翼を折りたたみ人型は部屋を出てきて、穴の開いた入り口を守るように立つ。


「無視された。あまり時間もないしすぐに済ませてしまおう、なるべく固まっているところから」


 身震いするように羽根を震わせると人型を包む光が強くなり、それが指先へと集まっていくと雷を放つ。

 裂けることのできない一瞬の光の帯がアンバーとガーネットに当たり二人は声を上げることなく折り重なるように倒れる。

 小さく羽根を震わせながら次の標的へと手をかざし、次と呟く。


「撃て、反撃させるな!」


 ベニユキたちは白い銃を撃つがどれも飛んでいった弾道は捻じ曲がり人型へと当たることなく床へと落ちていった。

 戦っている間にアインが電撃を受け壁にもたれかかりながら倒れる。


「バリアーってずるくない! なんで当たらないの!」」


 アインの銃を拾ったネシェルが代わりに戦闘を続けるが銃弾は変わらず床へと落ちていく。


「こんなのでどうやって戦うというんだ」


 ベニユキへと手を伸ばすと通路の奥から武器を乗せたドローンが走ってくるのが見える。

 人型はベニユキから狙いを外し、手をかざし向かってくるドローンを破壊した。


「押しとどめていたミカの支援も本格化してきた。システムの方のウリはどこまで持たせられるのか、とどめは獣らに任せて無力化を進めなければ」


 バチンと音を立ててドローンは白い煙を吹いて派手に横転して武器と弾倉をばら撒く。

 散らばった武器がそばへと転がってきたのをみて、皆が相手に通じない白い銃を構えるのをやめた。


「武器だ!!」


 武器を運んできたドローンへと攻撃し、いち早く動き武器を拾いに行こうとするキュリルへと続けて電撃を放つ。

 少し遅れて同じように飛び出したコウエイとベニユキが散らばった武器に手をかける。

 茶色い突撃銃と散弾銃。


「こっこ、これで終わって」


 散弾銃を拾ったベニユキは薬室に弾があることを確認しすぐさま引き金を引く。

 激しい音とともに放たれる二つの銃の弾丸は、先ほどの銃弾と同様に不自然に曲がりすべて床へと落ちる。


「これでも駄目なのか」

「こっ、これも効かない無理じゃない! いったん逃げますか!」


 人型は弾倉を取り換えるベニユキを横目に、射撃を続けるコウエイへと向かって雷を放ち彼女は膝から崩れ堕ちた。


「逃げましょう、この武器では勝てません!」


 そういって人型から離れるべくカノンはその場から逃げ出し、残ったのはベニユキのみ。


「あと一人」


 そういって放たれる電撃。

 逃げることも防ぐこともできずベニユキは電撃を受け倒れるも、すぐに体を起き上がらせる。

 驚いたのはまだ動くことのできるベニユキだけでなく、電撃を放った人型の方も自分の手を見て驚いていた。


「あ、熱い……」

「出力が……これは」


 施設の明かりが不安定に瞬き、砂嵐を起こしていた壁にかけられていたモニターの電源が落ちる。


「今度は、なんだ……。まだ、何か起きるのか」


 頭の上にある光の輪が消え腰から生える羽根が輝きを失い人型は宙に浮くのをやめて地面に降りたった。


「電源がやられた。ここまで、か」


 何かが変わったことを感じベニユキは散弾銃を構えなおし人影へと銃を向ける。

 すると彼女は壁にあけた穴からサーバールームへと逃げ込んだ。

 背後から重たい足音が聞こえサーバールームから目を話し後ろを見る。

 頭だけが骨の怪物が戦闘の音を聞きつけ姿を現す。


「こっちも忙しいのに」


 低い唸り声をあげベニユキへと向かってくる怪物に向かって散弾銃で頭蓋骨を破壊すると、先ほどと同じように割れた骨の間から赤い煙を吐いてその場に崩れ落ちた。

 一呼吸置き再びベニユキは部屋の前へと戻る。


「降参、もう撃たないで」


 部屋からベニユキの反応をうかがうような人型の声。


「それが通用するとでも思っているのか」


 ベニユキは激しく痛む体に無理を言わせて立ち上がり銃を構えながら部屋へと向かう。

 そっと銃身を部屋の中へと入れてみるが人型からの反撃はない。


「ミカ、ミカ、ウリを倒したのならこの声も聞いているでしょう。降参する、助けて」


 部屋の中へと逃げ込んだ人型は羽根の先を体の前に回し大きな繭ようなものとなっていた。

 まるまる人型に銃を向けながらベニユキはゆっくりと部屋の中へと入る。


「突然なんだ、どうして攻撃をやめた」

「電源を奪われ、私は無力となったの。切り替わった予備電源を使ってしまえばここのシステムが落ちてしまう」


 羽根で覆われ小さく縮こまった人型はベニユキを見て身を震わす。


「銃をおろしてください、もう戦いません」

「信じられるか、さっきまでお前がしていたことだ」


「それならほら、後ろを見なさい。私は最初こそあなたたちを殺そうとしたけども」


 戦闘で雷に打たれたはずのアインが声をかけてくる。


「おい、決着がついたのか?」


 ダメージで体が思うように動かないようでアインは壁に寄り掛かりガクガクとした足取りで部屋の中へと入ってきた。


「動けるのか?」

「体中酷く痛むが戦闘中に寝てもいられないだろ、向こうで双子の片割れが片割れを起こしていたよ」


「双子? ああ、アンバーとガーネットか二人も無事なんだな」


 アインは先ほどコウエイが持っていたで阿東茶色い突撃銃を持っており、武器を持った二人が人型へと近寄る。


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