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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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提案と反撃 2

 そういうと機械の体を持つ兵士たちが倉庫、エレベーターのある礼拝所へと続く道の方の包囲を解く。


『おらたちはあの場所に入れないが、お前たちならいける。頼めるなら今すぐ向かってくれ、ここはおらたちが何とかする』


 ベニユキたちは顔を見合わせると立ち上がり静かに走り出した。

 コウエイもネシェルも現状がわかっていない様子だったが、離れ離れにならないようについて来ている。

 機械の体を持つ兵士たちは倒したコウエイたちが乗っていた大きな強化外骨格の残骸を通路へと運び奥へ進んでいった襲撃者たちの帰還を妨害するためのバリケードを作っていた。

 武器も持たず走るベニユキは後から追いついてきたアインに尋ねられる。


「行くのか? 言われたままに?」

「とはいえ頼まれた、そして開放もされた。敵もいない、何にしろ戦う準備ができる。箱舟からの説明もないし戦いは続いているんだろ」


「罠だったら、どうするんだ」

「どのみちさっきのであいつらが降参を促さなかったら戦いで死んでいた、あのまま捕まっていてもそのうちはグリフィンの様に殺されていたはず。頼まれそして解放された、罠かどうか進んでみればわかるんじゃないか」


「でも武器は、降伏して投げ捨てすべてさっきの場所に置いてきた。壊されもしている」


 ベニユキは天井に向かいどこかで見ているであろうミカに向かって話しかけた。


「何か武器はないのか」


 ミカからの返事はなく仕方なく黙って走り続ける。

 倉庫の中央をオートマトンの残骸をかき分け箱舟の掃除用のドローンが数機向かってきた。


「あれも敵か?」

「いや見たところ武装は無いようだ、ただの掃除ロボット……に見える」

「爆弾が乗せられていたら、まとめて吹き飛ばされるが……」

「どうするの、部屋は広くなったしバラバラに逃げる?」


 真っすぐ向かってくる掃除ドローンを警戒しそれを避けて通り過ぎようとするベニユキたち。

 そこで掃除ドローンは停止しカチリと音をたてて内部を開く。

 中にはゴミの回収フィルターのカートリッジがあり、ゴミはなく代わりに白い拳銃と数個の替えの弾倉が入っていた。


「武器だ、これで戦えってことか。こんなところに隠して持ってきたのか」

「でも人数分無いな、なるべく動ける軽症なものが持つべきか」


 ともかく掃除ドローンに入る程度の大きさの武器を手にしベニユキたちは礼拝所を目指す。



 ベニユキたちとは別の個所で管理AIのウリは、命令を無視しベニユキたちを解放した画面を見てつぶやく。


『おや、裏切りか。ダメだな教育の行き届いていない急増品じゃ。とはいえ、完全な機械にしてしまっては意味がない。次はもっと調整してしっかりこちらの命令を聞くようにしなければ』

『彼らは望んであの姿になったのですかウリ?』


『まさか、記憶を人質に行動させるのと同じで元の肉体へと戻りたければ働けと命じたまでよ。機械の体はコストが安く済んでいいわ。位置から培養させるのではなく、部品さえ用意しておけば必要な時すぐ作れるし』


 彼女らは向かい合い話ながらも、お互いの箱舟への電子戦を仕掛けており見えない攻防を繰り広げていた。


『無理やり機械の体に命を移すのに無理があるんですよウリ。彼らには彼らの事情があります私たちは無理やり従わせていて、彼らに協力を仰がなければいけない状態なんです。さて、こちらに勝機が傾いてきましたよ』

『何言っているのミカ? もうじき私の駒があなたのサーバールームにたどり着く、チェックメイトよ。それに残存兵も残り少ないじゃないこちらに来ても返り討ち』


『王手にはまだ早いのではないですか?』

『あなたの駒がこちらに来ることには、既にあなたの電源は落とされる。いなくなったあなたに勝利宣言をしても仕方ないでしょ』


『さてそれはどうでしょう。あれはもう使いたくはないんですけどね』

『なに、その勿体ぶる感じは?』


 画面では襲撃者たちが何かの装置を頼りに調べ物をして、ただの壁にカモフラージュされた扉を破壊し無理やりこじ開けようとしている。



 ベニユキたちは倉庫を抜け礼拝所へと戻ってきた。

 エレベーター乗り場には壁に強引に開けられた穴が開いており、その先は別の空間へと続いている。


「入口が二つあるな」

「白い銃が反応している、そっちの黄色いほうらしい」


 青白い礼拝所に開けられた大きな穴は二つ。

 それぞれの強引に開けられた穴からは、新緑のような強く力のある緑色の光と、陽光のような黄色く暖かみのある光が差し込んできていた。


「向こうはエレベーターではなくトンネルなのか」


 武器の入ったコンテナや大型のアニマロイドの通り道を作るために礼拝所の長椅子は幾つか壊されていた。


「見慣れない箱が置いてあるな」

「む、向こうの武器の入ったコンテナですかね?」


 箱の一つに皆で近づき確認する。


「駄目だ空っぽだ」


 ふと見ると緑色のトンネルの前には捻じれた白い石膏像のような物が置かれているのが目に入る。

 武器の入ったコンテナとも違く、もともとこの礼拝所に置かれていた物でもない異質な物。

 ベニユキは同じくオブジェを見るカノンへと尋ねる。


「あれ、何だと思う?」

「絞った雑巾のオブジェじゃなければわからないですね」


「そんなものを作るか?」

「学校の課題で紙粘土で作ったら怒られました。出来は良かったと思うんですけどね」


 他のコンテナから武器を調達できないか調べていたコウエイたちもそのオブジェに気が付き視線を白い物体へとむける。


「あ、あれなんです?」

「わからない。少しもったいないが銃で撃ってみるか」


 ベニユキは白い拳銃を構え白いオブジェを狙う。

 一発の射撃音が礼拝所に響く。


 すると白いオブジェはぐにゃりと曲がり倒れる。


「変な動きしたぞ」

「警戒、多分敵だ」


 倒れた白いオブジェは広い空間へとむけて球体を複数個吐きだした。

 ボウリング玉くらいの球体は宙を浮きピッチングマシーンのようにまっすぐベニユキの方へと向かってくる。


「何だあれ、シャボン玉?」

「理解できない奴の類と理解した」


 素早く向かってくる球体を撃ち落とすがすぐに次の球体が湧いて出てきた。

 落とした球体はガシャンと音を立てて割れ床に石片をまき散らす。


「倒れたねじれたやつ少し小さくなってる」

「生み出すたびに小さくなっていくのか。なら全部壊すしかないか」


 ただでさえ少ない銃弾を減らすことにはなったが生み出された球体すべてを撃ち落とした。


「行くぞ、ついてくるのが厳しい奴はここで待っていてくれ。まだあんなのがこの先に待ち受けているかもしれない」


 キュリルが食い気味に答える。


「ここに武器もなしに置いて行かれるのは嫌だ、ついて行く! 敵の本拠地なら武器が置きっぱなしになっているかもしれないし、ここにいても戻ってきた奴らに殺されるだけでしょ」


 皆が頷くのを見てベニユキたちは二つある入口、白い銃が緑色に点滅し指し示す黄色い方のトンネルを通り別の箱舟へと移った。

 透き通った石畳のような床や壁、天井からはキラキラと虹色に光を反射するシャンデリアがぶらさがっていた神殿のような場所。

 それでいて大型のモニターやふかふかのソファーが壁に沿って置かれていた。


「で、来たは良いがここを壊して回ればいいのか?」

「拳銃では無理だろ。前の箱舟に攻め込んだ時みたいにこの施設のサーバールームを探すしかない。この銃は機能しているみたいだしな」


 銃の指示に従い黄色い空間を進みだす。

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