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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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提案と反撃 1

 敵の増援に戦闘も慣れておらずなりふり構っていられなくなった二機の強化外骨格が敵に取り囲まれないように後退しながら重機関銃を放ちながら薙ぎ払うように振り回す。

 しかし、敵は冷静に射線から身をかわし、強力な弾丸がベニユキの背後の壁に風穴を開ける。


「味方に撃たれかねないな」

「相手が強すぎる、それにこちらは消耗していて分が悪い」


 機械に包囲されカノンたちの乗ったオートマトン二機は敵二人に力任せに押し倒され、機械の腕ごと武装が剥ぎ取られる。

 大きな方の人型の肩についた銃がベニユキたちそれぞれの頭に狙いをつけた。


『武器を捨て、降参しろそうすれば殺さない』


 武器を向けられ敵から投げかけられる言葉。

 ベニユキたちは完全に包囲されもはや勝機もなくグリフィンが言われたとおりに武器を手放す。


「降参だ、我々に勝機はない。皆武器を捨てろ」


 グリフィンが武器を捨てたことでベニユキややアンバーたちも武器を捨てる。

 元より銃弾を弾き、怪物たちと戦ってきた破壊力を持ったバットを受け止める存在。

 生き残った者たちは武器を捨て両手を上げて膝をつく。


「これで……助けてもらえるのかな?」

「もう武器を捨てました、だからもう戦わないから」


 乗り込んだ作業用ロボットのような強化外骨格の中にいた、カノンとコウエイも機械の下から這い出てきて両手を上げ皆と合流する。

 入口の両脇で薪構えていたベニユキたちは一か所に集められると、人型に取り囲まれ彼らの複数のカメラが全員を見下ろす。

 大きな体に委縮しカノンやアンバーたちは身を寄せ合っていた。


「こ、この人たちは人間なんですか?」

『生きていたければ私語は慎め、逃げ出すあるいは犯行の意思があるとみなすぞ』


 後から現れる武器を背負った強化外骨格に包まれた襲撃者の残党五名。

 そのうち一人はヘルメットがなく長い髪が歩くたびに揺れ、彼女は武器を捨て集められたベニユキたちを見て眉を吊り上げ不機嫌そうな声を出す。


「何してるの、全員殺しなさい!」

『すでに相手は降参させた、武装解除させもう敵意はない。この施設を占拠した、もう戦う必要はないだろう?』


 襲撃者の指示に人型の敵は不思議そうに答える。


「殺すのは箱舟からの指示、それに隙を見てこいつらが反抗するかもしれない。全員処理しても今日の記憶を失ってまた作られる。いやいい、もう私が処理する」

『待て待て彼らを捕らえたのは我々だ、捕虜とした彼らをどうするかはこちらに権利があると思うのだが? それにこちらは全員殺せとの指示は受けていない』


「どうせ生かしておいても意味はないでしょ。あなたの仲間だっていくつか壊されたでしょ」

『彼らにはここの武器について説明してもらう。使えそうなものは持ち帰る、それに俺たちは人間だものじゃない』


 捕まったベニユキたちの横を通り過ぎ工場の奥へと進もうとする襲撃者たち。

 その後ろ姿にベニユキが声をかけた。


「待ってくれ、ルナ!」


 名前を呼ばれヘルメットをかぶっていない長い髪の襲撃者は振り返る。

 一瞬、彼女は行動にためらいを見せたがホルスターに収められていた拳銃を引き抜くとベニユキへとむけた。


「話しかけないで、私の知り合いなのだろうけど今の私はあなたを知らない。私の知り合いのなら、ここで死んでいてお互いに殺し合った記憶なんてないほうがいいでしょ。だから死んで」


 そう言いながら放たれた弾丸がベニユキの肩をかすめる。

 彼女が二発目を撃つ前にすぐに人型の敵がベニユキと彼女の間に割って入った。


『撃つな。お前たちは早くこの施設を管理しているAIを探すといい。ここはおらたちが引き受ける』

「ならせいぜいそのたくさんの目で監視しているといいわ。機械らしくね」


 ベニユキを守るように移動した人型の敵、しかし銃口は納められるのではなく別の方向を向き今度は守られていないグリフィンを撃つ。

 弾丸は頭に当たりグリフィンは無言でその場に倒れ、ガーネットやコウエイが小さく悲鳴を上げる。


『おらは撃つなと言ったはずだが!』

「彼は司令塔だった、彼を殺すことを条件に残りは生かしておいてあげる」


 硝煙を上げる拳銃を今度こそホルスターに戻し工場の奥へと襲撃者たちは消えていく。

 襲撃者の姿が見えなくなってしばらくして機械の敵は肩に取り付けられた銃をおろし話しかけてきた。


『さて君らに聞きたいことがある』

「なんだ、こちらは拒否できる状態じゃないぞ」


 グリフィンは死に代わりにベニユキが答える。

 敵は少し黙ったのちまた話し始めた。


『なぁ、協力してくれないか?』

「何だと?」


『おらたちは箱舟のの管理AIと名乗る人工知能に改造され体を奪われた。体全体を兵器に改造されたおらたちは元の体に戻りたいんだ』

「戻るって言ったって」


『ここに来る途中にミカと名乗ったやつから頭ん中に取引の通信が来た。個々人への通信だったからあのヘルメットのやつらには聞こえていないはず。おらたちはその取引に乗ろうと思うとおもっているんだ』

「取引って、俺らは何をするんだ?」


『あのヘルメットのやつらの施設に乗り込む。今武器の搬入で入口が開いたままだった、今なら乗り込みに行けるんだ』

「そうなのか、それは俺らも必要なのか? 俺らだとあまり役に立つとは思えないけど」


『残念ながら、おらたちは機械の体であの施設には機械の機能を停止させる設備があって深くまで進めないんだ』

「前に戦ったのか?」


『今の管理AIになる前の時に、そこでおらたちの戦いのサポート用のドローンが無力化され負けた。戦いが負けで終わり自分たちの施設に逃げ込んだんだが次に目を覚ました時にはこの体だったんだ』


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