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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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ダンジョンからの脱出 3

 

 地下で手に入れた箱を抱えるベニユキたちは、別の階段を求めて怪物のうろつく廊下を速足で歩いていた。

 その階にいたほとんどの怪物は部屋の中でうろつきまわっており、ガラスの壁を突破できず透明な壁にぶつかり何かをろれつの回っていない言葉を何か呟きながら張り付いているだけ。


 たまに壁伝いに移動して部屋を抜け出し襲ってくる怪物たちも、グリフィンたちの持つ突撃銃で制圧できている。

 回収目標である機材を守るため銃を持つことのできない無防備なベニユキとともに歩くグリフィン。


「その銃強いな、上の戦闘車両で手に入れたんだろ?」

「その通り。なぜか小さいものよりこちらの方が手にしっかり馴染んでね、白い銃よりも使いやすい。しかしまぁ、広いもので弾が心もとなくはなってきたな」


 歩きながら手慣れた動きで弾倉の中身を確認しため息をつくグリフィンに話しかけるベニユキ。


「その銃の弾がなくなれば俺らの命も危ないか」

「そうなる前にここから出たいな」


 非常階段の表記を見てその方角へと進んでいると、突如施設が揺れだす。

 まったく前触れの無かった激しい揺れに、一同は立っていられずによろけ壁に寄り掛かったりしりもちをついたりする。

 激しい揺れに通路の電気が点滅を起こしガラス張りの部屋の中も棚が倒れガラスの容器が床に落ちて割れる音が連なった。


「何だこの揺れは」

「地震か?」


 揺れで施設が軋みどこかで建物が崩れる音が聞こえ、ガラスの壁が割れ部屋から出てこれなかった怪物たちが放たれた。


「やばいぞ!?」

「見ればわかるよ、走って」


 揺れが収まりつつある状態になるとベニユキたちは一斉に走り出す。

 怪物たちは建物が揺れていようが床が散らかっていようがお構いなしに移動し、壁がなくなった今ベニユキたちを追いかけ始める。


「これは、ピンチなのでは!?」

「私はずっとピンチだと思っていたが、君とは価値観が違うようだね」


 グリフィンとともに行動していたテオとアインが追ってくる怪物たちを撃つ。

 マルティンたちも白い銃を構え正面から向かってくる赤紫色の怪物に向かって引き金を引いた。


「もうすぐもう一つの非常階段だ」

「階段が崩れていない保証などないがな」


 先にたどり着いたマルティンたちが鉄の扉を引く。

 扉は鍵がかかっておらず開いた。


「開いた! でも固いよ、開かない」

「手伝う」


 前からなのか先ほどの揺れで歪んだのか、鉄の扉は途中で動きが悪くなりマルティンとウーノンの二人がかりでようやく開いていく。


「早くベニユキ君」

「おお」


 先ほどの揺れでも崩落はしてはおらず5人は非常階段を上がっていく。

 歪んだ扉を閉じることが出来ずもたついていると、背後からは怪物が追ってきてる。

 アインとテオが銃を撃ち撃退するが、そこで二人の銃の残弾が尽きテオが舌打ちする。


「グリフィン、俺もアインも弾切れだ」

「そうか……俺も替えの残りが一つ、渡せるほどの弾はない。どこかで弾の替えを拾うかもしれないから重いがその銃は捨てずに持つように」


 階段は崩れておらず一気に地上を目指して駆け上がっていく。

 階を上がっていると途中の階で銃声が聞こえる。


「誰か戦っているな」

「助けに行くか?」


「物を手に入れた以上少しでも早くここを離れたい。時間が惜しいが、助けられるのであればそれの防衛する人手も増えるか」

「マルティン、悪いが運ぶのを代わってくれ。グリフィンさん、手伝ってくれるか?」


「ああ、かまわない。だが手遅れや勝てないと思ったらすぐに手を引く」

「それは……仕方ないもんな」


 マルティンに荷物を任せベニユキは白い銃を持ち、銃声の聞こえる扉を開く。

 通路の奥に見える複数の怪物たちと戦っている戦う女性たち。

 白い銃を撃ち揺れる茶色の髪を見てベニユキは彼女に呼びかけた。


「エレオノーラ!?」

「ベニユキさん!」


 テンメイは震える手で弾倉の交換に手間取りエレオノーラとキュリルに守られている。

 怪物たちに囲まれバットを振ることのできないキュリルは短く持ち腕を伸ばしてつかみかかろうとする怪物を小突いて振り払う。


「三人とも、壁に寄れ!」


 グリフィンが銃を構えながら叫び、キュリルは怪物たちを振り払い銃を撃つエレオノーラを壁へと押しやる。

 彼女たちが銃の射線からいなくなるとグリフィンは引き金を引き、怪物たちを横殴りの鉄の雨が襲う。

 怪物たちはなぎ倒されベニユキとテオ、アインが白い銃を構え助けに向かう。


「早くこっちへ」


 銃声を聞きつけてか新たに現れる紫色の怪物。

 エレオノーラとテンメイを逃がしキュリルが応戦しようとするがバットを構える前にぐにゃりと腕を伸ばし彼女の首を掴む。


「クゥッ……」


 白い銃で応戦していたが与えるダメージが少なく、キュリルにつかみかかる怪物をテオが銃床で怪物の頭を殴りつけ吹き飛ばす。


「大丈夫か」

「ああ、ありがとうテオ」


 怪物たちが床に倒れるとエレオノーラたちは走ってベニユキたちと合流する。


「よかった合流出来た、もうだめかと思った。ヘヘヘ、安心したら変な笑いが」

「よく俺たちがこっちにいるってわかったな」


「反対側の階段に向かってたんです、でもテンメイさんがこの鉄砲の緑色の光を頼りに進めって」

「これのおかげか」


 白い銃口はマルティンが持つ機材に向けて緑色の光を放つ。

 怪物に襲われかけたテンメイは震えが止まらず自分で立つのもやっとで、エレオノーラに支えられて歩く。


「キュリル無事で何よりだ。で、タリュウ君はどこかな?」

「彼は逃げました」


「そうか、皆大変だったな」

「そちらも、下の扉、鍵が」


「まあな、でも何とかなったから今ここにいる」


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