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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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背水の防衛線 4

 照明は天井に埋め込まれているような状態のため割れることなく輝き続けていて、入ってきた侵入者を待ち構えていた皆が認識した。


「ずるい、あの銃欲しい」

「適当撃っててもいつかやられるぞ! 少しでも離れて威力が落ちる場所へ」


 自分たちが狙われていないタイミングでギルベルトはネシェルとともに後退をしながら銃を撃つ。

 彼女の持つ大型の銃は装甲の有無を問わず問答無用で相手を焼き貫き、襲撃者を何人か倒し飛んでくる弾の数は減ったが攻撃の嵐は止まらない。

 テンメイとホルテンが悲鳴を上げて逃げ出し敵の注意が二人に向く。

 助けることもできず掃射を受け壁や床に血を吹き散らかし倒れていった。


「あのバカ、くそっ2人とも……」

「敵はあと10名少しか」


 その一瞬で残りの敵の数を数えたグリフィンが離れたところにいるアインとテオにハンドサインで伝える。

 襲撃者たちは逃げ隠れるベニユキたちの姿を一瞬程度見ており、皆が隠れている場所をおおよそ知ってはいる。

 しかし自分たちが使っているもの同様、相手も異質な技術の塊である武器を持っているために迂闊には近寄れないでいた。


「向こうはかなり慎重だな、あんな強力な武器を持っているのに」

「それだけこちらを脅威と見ているのだろうな。実際同じ様に世界を渡っていろんな武器を集めてきたのだから。あちらに隠し玉があったように、こちらにもまだ相手の知らない武器があるのだと危険視しているのだろう」


「光学迷彩とかないのか?」

「使ってこないところを見ると無いのかもしれないが、ただ使えないのではなく奥の手として使わないという可能性もある。何にしろ使わないからないということはないということだ」


「冷静でいられない状態で混乱するようなことを言わないでくれ。このまま遠距離で削られて弱ったところでとどめを刺されるのか」

「相手も素人の集まりということも忘れたか? 結局のところプロではない、経験者はいるだろうけどな」


 グリフィンは手榴弾を一つ取るとピンを抜き数秒数えてから襲撃者へと向かって投げる。

 手榴弾は宙を舞い床にぶつかることなく爆発した。

 爆風で二人の襲撃者が銃の引き金を引いたまま転倒し、放たれた弾丸が味方に当たる。

 放たれた弾丸は強化外骨格に弾かれるが彼らの中で口論が起こり、その一瞬のスキを突いてアインの持つ機関銃とネシェルの大型の銃がさらに4人の襲撃者を倒す。

 敵の動揺にすかさずグリフィンが叫んだ。


「今が攻勢の時だ! 一気に仕留めろ!」


 襲撃者の銃撃音にかき消されないほどの大声でグリフィンが指示を出す。

 その声で物陰で攻撃を耐えて隠れていた皆が一斉に射撃を開始。

 勢いづいた一斉攻撃で襲撃者たちは倒れ戦闘は終わり、すぐに負傷者の手当てが始まる。

 終わってみれは跳弾する弾丸にどこかしら被弾し、軽傷でいられたのは武器を取りに行きここにいない二人を覗いてはベニユキのみ。


「何人やられた」


 戦闘が終わるとグリフィンはすぐ指示を出し負傷者の確認をさせる。

 床に転がる無数の弾丸を転ばないように足でかき分け道を作って皆が合流し、の子ている傷薬を分け合いながら手当てを始めた。

 その隅で数人寝かされ起き上がらないものたちの姿。


「4人。ぼんやりして逃げ遅れたテンメイとホルテン、あと運悪くテオとマルティンだ。生きてはいるが戦闘不能はギルベルトとウーノン、重傷でおそらく二人も助からない」

「そうか、動けるものはすぐに入口の警戒についてくれ」


 ベニユキは一人倒した襲撃者のヘルメットを剥がして自分たちが倒した死亡者の確認をしていた。

 一人ひとり顔を確認するベニユキに足を引きずって近寄ってきたブラットフォードが不思議そうに話しかける。


「何をしている? 敵の武装から使えるのを探しているのか?」

「知り合いによく似たやつがいたんだ……暗かったし一瞬で確証はなかったが確認しておきたい」


「そうか、わかった。無駄に殺されるなよ」

「気を付ける」


 襲撃者の持っていた手斧や警棒を回収する。

 グリフィンは手斧を一つ掴み持ち上げた。


「ほぉ、面白い強く、グリップを握ると斧の刃先が伸びるぞ。どういう原理だ」


 グリフィンが持ち手を強く握るたびにその刃は大きく広がり一回り大きくなる。


「取りに行かせた武器が間に合わなかったな。どうだった知り合いだったかな?」

「いなかった」


「何?」

「倒した敵の中にルナ……さっき俺が出会ったやつがいなかった」


「ということはまだ戦いは終わっていないということか」


 オートマトンにも似たデザインにも似た人型の機械がゆったりと歩いてきて、帰って来るカノンとコウエイ姿が見えた。

 大きさは3メートルほどで、腹側に操縦席があり背中には大きなエンジンのような機械を背負っている。

 後ろにはベニユキたちが眠っていた睡眠カプセルより少し大きめのコンテナを積んだ台車を牽引していた。


「パワードスーツだ」

「こちらにも強化外骨格があったか。だが、戦闘用か? 作業用の機械にも見えるが」


 グリフィンたちが見守る中、二機のロボットは背中から蒸気を吐き膝を曲げて停止する。

 ロボット胸部が開き操縦席から二人が降りてくる。


「お、お待たせしました!」

「この床一面に転がるすごい数の弾丸はなんです? 私たちの知らない人も倒れているし、もう戦闘は終わったんですか?」


 彼女たちの服装が変わっており、頭にはヘルメット、全身を包むウエットスーツのようなやや体の浮き出るような服装になっていた。


「いいや、まだ終わっていない。まだ伏兵がいるようだ、新しい武器も来たしこれからあぶりだすか?」

「その服装はどうしたんだ?」


 ブラットフォードが尋ねると二人はヘルメットを脱いで答える。


「あ、あ、あの。はじゅかしいのであんまりみないで……」

「ミカがこれに乗る際に服や髪の毛が可動部に巻き込まれると、腕や体ごと引き千切られるから着替えるように言われたんです。動きやすいですよ?」


 皆が怪我をしているのを見てコウエイは顔を青ざめさせるが、グリフィンの一言でさらに彼女の血の気が引く。


「その服を着ていないと安全に動かせないのなら、これの操縦は君らに任せよう」


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