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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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背水の防衛線 3

 指示を受け走り去っていく2人はカーブする工場の奥へと消えていく。

 走り去っていく姿を見届けた後、ベニユキとグリフィンは武器を持ち直し自分たちが通ってきた通路へと向かう。


「2人だけでよかったのか?」

「武器が二人でもてないほど重たいこともないだろう、台車か何か貸し出されるだろう。この掃除ロボットの上のコンテナみたいなものだと思っていたんだが?」


 周囲を見て他に誰か武器を取りに行けそうなものがいないかを探しグリフィンとの話をつづけようとしたが、その前に銃声が聞こえてくる。


「来たか」

「投げものに注意しろよ、蜻蛉はすぐに落とせ!」


 皆に聞こえるようにグリフィンが叫ぶ、同時に蜻蛉ドローンが飛び込んできた。

 電気が付いたことで室内は明るくなり、俊敏で飛び回る黒い塊は目立つ。

 手元にいくつもの銃を並べて待ち構えていたギルベルトたちはショットガンを手に取り羽根羽ばたかせて飛び回る蜻蛉型のドローンに向けて射撃。

 羽根や胴体に命中しバランスを崩して床に向けて落ちていき、墜落したところでもう一度射撃し粉々に砕く。


「入ってきたドローンは砕いた!」

「爆弾も落とされていない!」


 落ち着く暇もなく、次に通路を走って向かってくる機械の獣。

 グリフィンやブラットフォードたちの銃の掃射を受けても止まることはなく、機関銃を受けて装甲版が剝がれ損傷が出てもなお前に進む。

 武装は背負っている小さな銃のみで、銃撃を受けている中でまともに狙ったところに当たることもなく何もできずに砕けていく。


「次が来るぞ! 皆離れろ!」


 機械の巨獣の攻撃を受けて大きな被害を出すという最悪の事態を起こさせないために、その場にはグリフィンだけを残して皆離れ工場の機械の陰に隠れる。

 小型に気を取られているうちにゆっくりと移動する巨獣型の機械の獣が射線の通る位置に移動しており、射撃に時間がかかっているうちにグリフィンが対戦車用のロケット弾を撃ち込む。

 機械の獣からの反撃がないため爆炎で見えなくなっているが、二発目を込めておおよそ同じ個所へとむけて撃ちこむ。


「反撃がないな」


 グリフィンが三発目の対戦車用のロケット弾を込めながら呟く。

 念のためにもう一発撃ちこもうとすると発射筒を構えると、燻った爆炎の奥から銃弾が飛んでくる。


「来るか、どうやらでかいのは倒したようだ。戻ってきてくれ、今度は室内に入れさせるな」


 盾を持ち駆け寄ってくる強化外骨格に包まれた人影。

 装備を変更した襲撃者は連射力に長けた銃を持ち、反撃を許さない苛烈な攻撃が隠れている壁や床を叩く。

 甲高いモーターの回転する音と火薬の弾ける音が交じり合い、弾が壁や床天井を跳ねまわり離れた位置に隠れているネシェルたちを脅かし。

 その脅威の発信源がゆっくりと近寄ってきている。


「弾交換の隙がないな、ガンガン撃って来るのに途切れないぞ」

「チェインガンの類か向こうは弾数がかなり多いようだ。まぁ、あのスーツで筋力も底上げされているのだろう。一発このロケットを撃ち込みたいが顔を出した瞬間ハチの巣だな」


 テオが襲撃者が接近してきたタイミングで手榴弾をいくつも投げ込む。

 しかし転がる手榴弾に襲撃者の一人が背負っていた火炎放射器のような物から放たれた白い泡が包みこみ、直後に爆発した。

 だが爆炎も破片も飛び散らず、すべてを包み込こんだ泡が膜のように固まりダメージを減らし足止めにもならない。


「爆発しないぞ、全部不発だ」

「いったん下がれ。くそ止められなかったか、ドローンはうまく対処できたというのに」


 物陰へと引きながら対戦車ロケット砲を持ち待ち、襲撃者が現れるのを構えていると機械の獣が二匹現れそれを先兵と勘違いしてグリフィンが構えていたロケット弾を撃ち込む。

 爆発し機械の獣を倒すがその爆炎の中から弾けるように襲撃者たちが飛び出てくる。

 回転する8つの銃身、モーターのついていることで大きな引き金周り、銃から延びる鉄のホースのような物、それだ繋がる背中に背負うほどの大きな弾倉。

 銃自体が大きく両手で持たないと構えることすら難しそうなそれを、襲撃者たちは銃を片手で持ちもう空いた片方の手には手斧を持っている。


「くそ単純な罠に引っ掛かった。指示を出す側に回って勘が鈍っているな、俺は」


 空になった発射機を捨ててグリフィンが舌打ちをして武器を切り替え機関銃を撃ち放つ。

 そして加熱した銃身を掴み取り新しいものへと取り換える。


「弾切れは見込めないか、取り換えるのがまさか銃身とは。冷えたらまたあれを付け直すのか」


 物陰に隠れたグリフィンは床に転がる弾丸を一つ拾い上げた。


「見たか、弾の口径が小さい。完全に軟目標を薙ぎ払うためだけのものだ。硬いものに弾かれ、殺傷能力を持ったまま暴れまわる。威力が低いから跳ね返った球があのハイテク鎧を貫通はしないようだ」


 激しい銃弾の嵐は工場の決して固くないであろう機械を粉々に破壊することもできない。

 だが、跳弾し何度も跳ねまわるそれは強化外骨格を身に着けていないベニユキたちに十分脅威だった。

 隠れていても離れたところに放置されたホルテンや戦っていたアインなど何人かが不運にも跳ねてきた弾丸に被弾し負傷する。


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