背水の防衛線 2
オートマトンの並んだ倉庫からミカの指示で更なる奥へと逃げ込んだベニユキたち。
そこは武器の生産工場の様で部屋の中央に伸びる大きなベルトコンベアの両脇にロボットアームや大きな装置が並ぶ。
「ここはオートマトンの製造工場か、誰でもいい何かバリケードになるものを探してきてくれ」
グリフィンは銃を構えてテオやアインとともに通路を警戒し襲撃者が現れるのを待ち構えた。
倉庫から運んできた武器の乗ったコンテナから替えの弾薬を補充し戦闘に備える。
皆が次への戦闘へとむけて準備を進める中、ギルベルトに引きずられてテンメイとホルテンが工場の隅に捨てられる。
「戦力になるとは思えないけど見殺しにできず連れてきた」
「先に逃げていえることではないけど、人として当然だと思うよ」
最後にベニユキが通路を抜けて辿り着き倉庫の方を振り返っているとグリフィンに肩を掴まれ新たな部屋の奥へと引き込む。
「ベニユキ君で最後だ、早く来なさい」
「みんな居るのか?」
「生きている者はね」
ブラットフォードがベルトコンベアを避けて工場の奥へと進む。
「見たところなんか車を組み立てるところみたいだな、ここであのオートマトンをくみ上げていたのか? いや組み立てるだけなら他の銃などもここで作っていたのか?」
奥に進んでも景色は変わらずキュリルは怪我した肩を押さえてつぶやく。
「武器は無いの? もっと強い奴はさ、さっきは運よく弾が当たらないみたいだけど」
工場は緩やかなカーブを描いていてどこから始まっているかわからない。
ベニユキは逃げてきた皆を見回し、その中に探していた者がいないことに落胆する。
「エレオノーラはいないか……助けられなかったか」
ガーネットがアンバーの手を引いてベニユキの横を通り過ぎて行き奥へと進んでいく。
「こう見るとこの箱舟も以前の別の箱舟と同じで、エレベーターのある位置を起点に円を描くように作られてるねぇ」
「もう少し奥に行ってよう、アンバー。ここだと戦闘に巻き込まれる」
「この辺でよくないかい? あんまり離れすぎると、戦いに参加できなくなってしまうよ」
「まだ戦う気なの、そんな怪我をしているのに! 他の人に任せようよ」
「もちろん戦うさ、あんたをガーネットを守るために。私は修羅にだって、悪魔に魂を……いてて、力が入り過ぎた」
「いいって、戦闘はグリフィンやベニユキたちが何とかするって」
頭に包帯を巻いたネシェルが少し離れたところで大きな銃を入口に向けて構える。
「死ぬもんか、敵を返り討ちにして生き残ってやるんだ」
負傷者が増え治療するため救急箱を持ってあちこち走り回るカノンとコウエイの姿。
ベニユキも新たな弾薬をもらい天井を見上げた。
「ミカ、話はできるか? 敵の状態を知りたい」
『はい、現在襲撃者たちは私の妨害の影響を受けない武器の到達を待っています。武器は独自で判断し動ける機械、機械制御ではない通常武器、あるいは異質なるものでできた武器。武器が到着し次第、攻撃を仕掛けてくるでしょう』
「今回は前回みたいに相手を止めて終了にはならないのか?」
『残念ながら私はまだ箱舟3号の制御を取り戻しただけで、相手の箱舟に干渉できていない状態。乗り込んでいた者へ退却指示を出させるのは難しい状況です』
「相手の着ている強化外骨格は固い、もっと威力のある銃。オートマトンの上に乗せる重機関銃を用意してくれないか、オートマトンの上に取り付けていたやつが全部というわけじゃないよな?」
『確かにあります。ですが先ほどとは別の倉庫に格納されていて……、いいえ通路を開けますですがあの部屋には襲撃者たちを入れたくないんです。ここで時間稼ぎをするものと武器を取りに行くもの二班に分かれてもらえませんか』
話を聞いていたグリフィンがベニユキとミカの会話に割って入る。
「なら、俺らが時間を稼ごう。で、誰が武器を取りに行く? もうそれほど人がいない、歩くのがやっとな怪我人もいる」
「テンメイとホルテンは駄目か?」
「いざ自分らが死にかけても逃げ出す余力もなかった。こちらの言葉が届いていないな、まだ時間がかかるだろう。向こうのエレオノーラ君の代わりに手当てをして回っている彼女らに取りに行ってもらうのがいいのではないか?」
「わかった。グリフィンここは任せた俺が頼んでくる」
ベニユキは少なくなってきた救急箱の中身を集めているカノンとコウエイのもとへと向かう。
「なぁ、そこの二人。少しいいか?」
「はひぃ!」
「お気になさらず、それで何でしょう? 怪我の手当てですか?」
「ミカの指示に従って武器を取りに行ってくれないか? 俺たちはここで襲撃者の足止めしないといけないんだ」
「取りに行くだけなら。い、いけます」
「場所さえわかれば、それで相手を倒せるんですよね」
二人の了承を得ると光の粒が集まっていきミカが現れる。
『では案内をします、ついて来て下さい』
それだけ言うと光の粒となって消えるミカ、そして消えた粒は細い線となり行くべき道を示す。
「あれが道標らしいな、ついて行ってくれ」
「わわわかりました、いきます」
「いってきます、ここのことお願いしました」