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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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暗闇の一閃 5

「一人倒した、もう一人近くで倒れている」

「アンバーの応急処置が終わったっぽいな。他が集まってくる前に戻ろう」


「俺が殿を務める。接近戦なら得意だ追ってくるやつの相手は任せてくれ」


 殿を志願したベニユキを最後にし皆がグリフィンの元へと戻ろうと移動を始める。

 敵に背を向けて移動を始めたことで遠巻きに襲撃のチャンスをうかがっていた機械獣が動きだす。

 暗闇の銃声の鳴りやまない中を特徴的な硬い足音が響く。


「機械の獣だけか、人は」


 マルティンやギルベルトが機械の獣に向かって発砲しながら離れていった。

 振り返り視線を後ろに戻すとそこには迫ってくる生き残った方の襲撃者。

 手にした警棒を高く振り上げ、アンバーを支えながら撤収するアインたち一人から離れたベニユキへと向かってくる。


「取り押さえるのなら得意だ」


 他に襲撃者の姿も機械の獣の姿も見えず、ベニユキに勝てると踏んで一人突っ込んできた襲撃者。

 狙われたベニユキは元の世界で対人戦等の経験があり、警棒を銃床ではたき落とし襲撃者を取り押さえる。


「抵抗するな!」

『くそっ!』


 落とされた警棒は床に触れた途端に放電し周囲に紫色の稲妻を生み出した。


「アブねぇ!」


 相手は自分の力と強化外骨格の力を加えて強引に捕縛から逃れようとするが、それでもベニユキの方が力が強いようで襲撃者の腕を捻じり強引に床に押し倒す。

 機械の獣は去っていったアインたちを追い、今ベニユキのそばには取り押さえたうつぶせの襲撃者以外は誰もいない。


「体が細いな。さて、どんな顔が出てくるのやら……」


 一度周囲を見回し敵がいないことを確認して、武装していた拳銃二つと警棒の予備のようなもの、腰につけた複数の小型のポーチを遠くへと投げ捨て頭を覆うヘルメットに手を伸ばし引きはがす。


「中は本当に人なんだよな? これで人型のロボットだったりしたならみんな遠慮なく……」


 ヘルメットの下からプラチナブロンドの髪が広がり、一瞬ベニユキの思考が停止し代わりにヘルメットを取られた襲撃者が叫ぶ。


「くそっ、仲間のことは話さないぞ! フフっ、この鎧には自爆機能が付いている。道連れだ!」


 聞き覚えのある声にベニユキは取り押さえた彼女の名前を呼ぶ。


「ルナ……なのか?」

「なぜ私の名を知っている! 誰だ、顔を見せろ!」


 思わず力を緩め襲撃者の女性を解放するベニユキ。

 好機とばかりに束縛から抜け出し襲撃者はベニユキから距離を取り立ち上がると振り返る。


「誰だお前は、私の名を知っている!」

「俺を、覚えていないのか? ああ、記憶を奪われたのか……ルナ」


 ゆっくり後退り闇の中へと戻っていこうとする襲撃者。


「待ってくれ、ルナ!」


 呼び止めるも襲撃者はベニユキから十分に距離を取るとオートマトンの影に隠れていなくなる。


「ルナ……、ルナがここにいる」


 逃げ隠れた彼女は戻ってくることはなく、ベニユキは先に戻ったアインたちを追いかけグリフィンの元へと戻ることにした。




 グリフィンたちが守る防衛陣地では目立つように攻撃し、襲撃者の攻撃を引き受けることで積極的に戦闘できないものたちが武器を乗せたコンテナをかき集めてきている。

 オートマトンの影を進みアインたちがテオや負傷したアンバーを連れ戻ってきて皆が無事であることを確認する。


「よく無事に戻ってきたアイン君、テオ君。ん、ベニユキ君はどうした」

「一番後ろを守ってくれるはずだったが、いつの間にかに見失っていた」


「そうか、戦力として期待していたのだが残念だ」

「気になったんだが助けに行くときも戻ってくるときも、全くと言っていいほど敵の弾が当たらなかった。相手は素人か?」


「確かに不自然なほどに死傷者が少ないな、前に遭遇した時も負傷者は少なかったな」


 光の粒が集まっていきグリフィンの近くにミカが現れる。


『相手は銃に内蔵された機械により自動照準となっていて、こちらで情報を流すことで相手の照準のサポートをずらしています。以前の時もエレベーターやオートマトンを使って欺瞞情報を流し相手の照準システムを若干狂わせていました』

「何だ急に、もう箱舟のシステムとやらは大丈夫なのか?」


『制御の方は落ち着きました。ひとまずは大丈夫です、後は侵入者さえ排除していただければこちらから攻勢に出ることができます』

「動力やサーバールームなどが破壊されてここの機能が停止しなくて何よりだ」


『はい。この倉庫の奥がそうなっておりますので、皆さまに守っていただている状態です』

「問題がないということは、ここにいる機械どもを動かすこともできるんだな」


『はい、一応は。向こうにハッキングをされ奪われないようバッテリーは抜いていますが非常用の電源として5分ほどなら、この倉庫にある50体のオートマトンを動かすこともできます』


「ここが暗いのはなおらないのか? 向こうは暗闇でも自由に動けている、暗いのはただこちらに不利だ」

『そうですね、照明を相手に掌握されると厄介と感じ電源を落とし配線ケーブルを切断していましたがすぐに繋げ直し点灯させます』


 施設内全ての明かりがつき倉庫内が明るくなる。

 オートマトンの隠れていた襲撃者が浮かび上がり、同じく暗闇に隠れていた大砲を乗せた像のような機械の獣の姿が狙いをつけている様子が浮かび上がった。

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