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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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暗闇の一閃 4

 負傷したアンバーのそばにキュリルが駆け寄る。


「大丈夫?」

「やぁ、元気とは言えないが……まぁそこそこだよ」


 グリフィンたちの元へと戻るためにキュリルとガーネットに支えられながら立たされ、その痛みで苦笑するアンバー。

 少し動くだけで多くの血が床に滴る。


「ハハハ……あ、笑うと痛い。あんまり、強くは引っ張らないでおくれよ。閉じかけた傷口が開く」

「それだけ喋るならまだ大丈夫だね。手遅れになる前に運ぶよ」


「厳しいね君は」


 深く息を吸い痛みをこらえながら歩き出すアンバー。

 彼女たちが引き返す道のりを確認している隣でテオはアインに手を伸ばす。


「弾の替えをくれないか? 全部打ち尽くしちまった」

「ああ、今渡す。銃は何を使ってる」


 闇の中からはカツカツと機械の獣の立てる足音が響くが、完全に闇に溶けこんでおり小銃を乗せたその姿を見ることはできなかった。


 ――近くに来ているが見えない。足も速そうだし厄介だな。


 ベニユキはギルベルトとともに周囲を警戒し、銃撃の光へとむけて射撃し敵を牽制する。

 ふと襲撃者の銃撃の近くで動く影を見つけた。

 動く人影は襲撃者の着ている強化外骨格を着用しておらず、黒い闇の中で髪が揺れる。


「そこに誰かいる」

「敵が迫ってきてるのか」


 銃声が辺りから響き続ける中、ギルベルトは銃を構え敵を探す。


「いや待て、敵ではない」

「う、撃たないで……」


 暗闇で眩く瞬くストロボのような銃撃の光でマルティンとコウエイがベニユキたちの方へと向かってきている姿が見えた。


「やぁ、撃たないでくれると助かるな。こっちも怪我をしていて避ける余裕はないんだ」

「マルティンか!」


 肩を負傷しているようで肩を押さえながら向かってくるマルティンがベニユキらを見て小さく手を振る。

 二人の背後に四つ足の機械の獣の姿。

 至近距離に二人がいるにも関わらず獣の銃弾は二人に当たらず、近くのオートマトンなどに当たり跳弾する。


「2人とも伏せろ!」


 再び姿を見せた機械の獣にベニユキとギルベルトが銃を撃って、火花を散らし装甲がべこべこになった機械の獣を追い返す。

 銃撃を避けて二人が地面を這いながら合流する。


「ベニユキくんよかった、無事に合流出来た。ほら君も」

「フヘヘ……相手の射撃が下手で助かったぁ」


 怯えていたコウエイは顔見知りになったガーネットたちのもとへと安心感を得るために駆け寄ったが、アンバーの怪我を見て慌てて救急箱を取り出す。


「きゅ、救急箱、あります。ててて手当します」

「やぁ、手当てできるのか。頼むよ」


 コウエイは二人に肩を貸されて立たされていたアンバーを寝かせ服をめくりあげ腹の横についた弾の跡へと触れる。


「よよ横っ腹、すれすれ。内臓は、だいじょぶそう危なかったね。でも血がすごい、消毒とガーゼ……ガーゼどこ」

「急いでくれるのはうれしいが、落ち着いてやってくれ」


 アンバーの手当てを始めるコウエイとそれを補佐するガーネット。

 彼女が手当てを終えるまでベニユキとギルベルトはテオとアイン、キュリルとともに周囲を見る。


「怪我人を連れてすぐ帰る予定だったのに」

「アンバーの手当てしてくれているんだから、エレオノーラもまだどこに居るかわからない状態だし傷の手当てができるやつは貴重だ」


「そうだけどこうしている間にも敵はこっちに向かってきてる」

「グリフィンたちが足止めしてくれている、彼らを信じろ」


 手当てを受けるアンバーの痛みに呻く声が聞こえ。

 オートマトンの影に装甲の凹んだ機械の獣の姿があり、奥にもう一機同じ機械の獣が見えキュリルが舌を打つ。


「数が増えてる。ところで最初に飛んでた蜻蛉は?」

「まだ飛んでるけど、爆弾を付けているのはいないな。再装填もされていないようで、使いきりらしい」


「ならもう不意打ちの爆発は無いか。上見上げているうちに何人撃たれたことか」

「見えていないのがいるかもしれないから安心はできないが」


「だから早く戻りたいの」

「ああ、わかったよ」


 弾倉の補給を終えアンバーの手当てを済ませるとグリフィンたちのもとへと戻る準備をする。

 飛び掛かってはこないが周囲を頻繁に姿を現し、オートマトンの間をうろつく機械の獣の奥にゆっくりと向かってくる強化外骨格で身を包んだ襲撃者の姿が見えた。


「敵が来る」


 機械の獣を先行させてグリフィンたちの攻撃の死角になる道を見つけたようで、向かってくる襲撃者は迷いがない。

 数は三人、襲撃者の手には青くランプの灯る警棒のような物を持っている。


「来るよ、あいつら剣じゃない何か持ってる」

「流石に今度はまぐれが続いて攻撃が外れるってこともなさそうだ。武器を構えろ戦うぞ」


 ベニユキたちは迎え撃つためにオートマトンの影から飛び出て、横一列に並ぶと迫ってくる敵へお向かって銃撃をする。

 攻撃を察知し迫ってきていた敵たちはオートマトンの影に隠れるが、一人が関節部分の装甲の薄い部分に弾丸が当たって転倒し集中攻撃を受けて体を覆う装甲版を砕かれ動かなくなった。

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