暗闇の一閃 3
動かなくなった武器を乗せたコンテナ付きのドローンを押して回り皆に弾薬を配り歩くカノン。
ベニユキも使った分の弾倉を補充し攻撃の準備を進めるグリフィンに話しかける。
「まだ犠牲者は少ないな」
「ああ、逃げ足は速いようでまだ数人やられた程度だ。戦力はまだ整えられる、相手も簡単に倒せないとわかり一度引いた。今のうちだ」
「誰かここに来ていないのは? 誰がやられた」
「向こうに取り残されたアンバーとガーネット、それとテオ君だね。こちらからの支援射撃で近寄らせてはいないが、テオ君以外が攻撃に参加せず非常に危険な状態だ。それと向こうの壁際にマルティン君と髪の長い女性が気が付かれないように身を隠している」
「エレオノーラを見なかったか? 見当たらないんだ」
「エレオノーラ君か? そういえば見ていないな、今確認を取る」
グリフィンは近くにいたドミニクに指示を出し、彼は暗闇に走っていく。
「それでベニユキ君なんだが、君はアイン君とキュリル君、ギルベルト君を連れてテオ君の救出に向かってもらいたい。もしかしたらどこかに隠れているエレオノーラ君を見つけられるかもしれない」
「ああ、わかった。助けにはいつ行く?」
「準備できているならすぐにでも行くか、君が返ってきているならすぐにでも行ってもらう予定だった。すぐにでも行けるか? 誰かを殺し気が動転はしていないな」
「昔の記憶もだいぶ戻っている、俺は大丈夫だよ」
手足を負傷し包帯を巻いたキュリルとギルベルトと合流し、様子をうかがうアインのそばに寄る。
ギルベルトはいくつもの光が瞬く暗闇の奥を指をさしてから答える。
「アンバーとガーネットは?」
「向こうの先だ、4人で救出に行くという話だったがお前が最後の一人か?」
「ああ、少なくとも足手まといにはならないと思う」
「頼りにしてるよ」
ベニユキたち四人は姿勢を低くしグリフィンの作った防衛拠点からでてアンバーたちの救出へと向かう。
襲撃者たちは倉庫内に散らばり、グリフィンたちの隠れる場所へと向かってゆっくりと進んで生きていた。
彼らは逃げ遅れたテオを狙っていたが、飛び出てきたベニユキたちに気が付き狙いを変えて発砲する。
射撃時の銃口の光を狙ってグリフィンらが攻撃を行って注意を引く。
「あちこちにいるな、不用意に出られない」
「何か知らないけど、向こうは射撃がすごく下手みたい。よっぽど下手なことしなければ当たらないよ」
相手も不用意に近づいてはこず銃撃で足を止めさせ、そこへ蜻蛉型のドローンが手榴弾を投げ込んできた。
「逃げろ!」
転がってきた手榴弾をアインが蹴り飛ばし暗闇へと消えていく、遅れて爆発音が聞こえる。
銃撃をしている襲撃者の隠れるオートマトンの一部が赤く光りだす。
「ネシェルの持つ重は銃弾が見えないから隠れて撃つにはちょうどいいよな」
「大きいし連射できないって聞いたけど」
ネシェルが乱暴にバットを振り回しオートマトンを解体し、破壊したその大きな部品を銃撃の光を頼りに襲撃者の方へと打ちこんだ。
勢いよく飛んでいった部品が襲撃者の近くへと飛んでいくが、隠れられたり躱されたりして命中することはなかった。
「おしい、当たらないか」
「おい、無駄なことしていないで行くぞ」
アインはキュリルを呼び再び皆が集結してアンバーたちの救出へと向かう。
もう少しでアンバーたちがいる場所へとたどり着くというところでベニユキは、カツカツと硬いものが床に当たる軽い音が聞こえ振り返る。
視界に一瞬黒い影が見えそれは素早く移動しており、オートマトンの上から音が響く。
そこにいたのは暗闇に溶け込む光沢のない黒い色をした四足歩行の機械の獣。
背中には小さな銃が取り付けられておりその銃口がベニユキに向いていた。
「くそ、何だあれ!」
反射的に銃を機械の獣に向け引き金を引く。
ベニユキの撃った弾丸は貫通しなかったが、その威力で体が揺れ狙いがぶれたことで獣の射撃は外れオートマトンの受けから降り闇の中へと消える。
「あれ、放っておいたら誰かがやられるな……」
「ベニユキ何をしている、行くぞ」
少し考えたのちベニユキはアインに言う。
「俺はさっきの機械を破壊する、直感的にあれは危ないと思った」
「今さっきのか? あれが一機とも限らないだろ、誘われているかもしれないし無視しとけ。今はグリフィンの指示に従いテオらを救出する」
機械の獣の襲撃に気を付けながら移動し、テオたちのもとへとたどり着く。
「助けに来た、皆歩けるか?」
床に散らばる大量の薬莢と空になった弾倉。
弾切れになった銃が捨てられており、アインが声をかけると戦っていたテオより先にガーネットが叫ぶ。
「アンバーが撃たれた、助けて!」
「なぁに脇腹だよ、救急箱がないからうまく止血できていないが……すぐには死なないよ」
取り乱すガーネットに膝枕されたアンバーがいて、テオがバットを握って救助を待っていた。
彼女の腹からは大量の血が出ていて、彼女らの手は赤黒い血で染まっていた。