暗闇の一閃 2
嫌だといいつつも自分の命の方が大事と遅れてブラットフォードやドミニクたちが侵入者に銃口を向ける。
しかし攻撃を始めるにはすでの遅く、盾を捨て身軽になり倉庫内に保管されているオートマトンの影に身を隠しながら黒い特殊スーツに身を包んだものたちが距離を縮めてきた。
「人を、斬るよ」
「ですね。俺も覚悟を決めるっす」
闇に溶け込む黒い影を見てホルテンやキュリルが険しい表情のまま剣を握る。
侵入者は依然出会ったときと似た顔の見えないヘルメットをかぶっていて暗い倉庫内でも身軽に動け、手には大きな銃のわりに銃身の短い銃を握っておりそれをベニユキに向けた。
「隠れろエレオノーラ」
オートマトンの下にエレオノーラを押し込みベニユキは相手が狙いをつける前に相手の死角に逃げ込む。
直後に眩い炎が二人の横を過ぎていく。
「火炎放射器!」
真っすぐ延びてくる炎の熱に炙られベニユキは銃を撃ちながらオートマトンから離れる。
同じようにエレオノーラもオートマトンの下を潜り抜け奥へと逃げていく。
「暗覗ゴーグルか、暗いところだとこっちの方が不利か」
どこからか戻ってきたアインが銃を撃ちながらベニユキのもとへとやってくる。
「どこに行っていた?」
「向こうに重機関銃を乗せたオートマトンがあったが弾が抜かれてた」
「倉庫だから、戦闘の用意されていなかったんだろう」
「だろうな、既に倉庫内に敵が入り込んで逃げながら皆戦っている状態だ。グリフィンはどこだ」
「俺も知らない、他と同じで引きながら戦っているんだろう」
「戦闘経験者の支持なしで戦って勝てるとは思えない。戦っていれば彼のもとに皆が集まって来るか」
さっきを感じ移動すると横に伸びる炎の柱がベニユキとアイン目の前を通り過ぎていく。
先ほどの火炎放射器を持った敵がベニユキを追ってオートマトンの影から現れた。
「あの火炎放射器をなんとかするか、前に出過ぎて孤立しているし背中のタンクを撃ち抜くのは容易そうだ」
「協力する、俺が気を引くからタンクを任せた」
倉庫のあちこちから銃声が聞こえ、音に合わせて暗い倉庫内に光が点滅する。
アインとベニユキは火炎放射器を持った敵を排除するため二手に分かれて走り出す。
誰かの攻撃を受けたようで攻撃の飛んできた方向へとむけて炎を撒いていた。
--よそ見をしてる。誰を狙っているかわからないがタンクを狙うチャンスか。
他の襲撃者に注意しながらオートマトンを盾に駆け寄ると背負ったタンクを狙って引き金を引く。
しかし、強化外骨格強化と同様に背負っている燃料の入ったタンクにも多少の装甲化がされており装甲の表面で火花を散らすばかり。
--弾かれた、威力が低いか。いいや、こっちに向けばアインが狙える。
攻撃を受け襲撃者は火を噴く銃口をベニユキの方へとむけた。
そばまで迫っていたアインがゆっくりと狙いを定める。
周囲の戦闘音に交じって短い射撃音。
「なにっ!」
マスクの中から驚いたような声。
穴の開いたタンクから気化したガスが噴き出し、まき散らされたガスが噴射部の種火に引火。
そのまま、タンクから炎を吹き出していたが急に噴き出す量が増え直後に爆発し、眩い光が一瞬だけ倉庫内を照らした。
高い天井にまで達する火柱の光にヘルメットをかぶった襲撃者は一瞬怯む。
その瞬間を逃さずロケット弾が足を止めた襲撃者に向かって飛んでいく。
爆音と振動が響く中、襲撃者に回り込んでいたアインがどこかで戦っていたドミニクを連れてベニユキのもとへとやってきた。
「奥にみんなが集まっている。俺らも合流するぞ」
そういうアインの言葉に二人の背中を追ってベニユキも姿勢を低くし走り出す。
「今誰かが走っていくのが見えた」
「正面に、誰か立ってるな」
背後に気配を感じベニユキが振り返ると暗闇の中、一人襲撃者が向かってくるのが見えた。
咄嗟に足を止め銃を構えるが向こうの方が先に銃を前に出す。
「後ろだ!」
自分が間に合わないと判断しほかの二人に知らせるために声を出すが、直後構える銃が赤く発光しそのまま腕と襲撃者の脇腹に音もなく穴が開く、
体に穴の開いた襲撃者はそのまま床に倒れ、後ろのオートマトンの足の一部が赤く発光し融解しているのを見る。
一瞬だけオートマトンの上から上半身を出すネシェルの姿が見え、彼女は長い銃を持ちオートマトンの影に消えていく。
「無事か、よく無事だった。これから反撃に出る、協力してくれるな」
ベニユキたちは無事逃げ切り生き残った皆と合流した。
グリフィンが合流してきたアインに近寄り黒い機関銃を渡す。
「この奥に大型の武器が並んでいた。小さなコンテナに乗せられなかった分の武器だ、弾も豊富にある。ただ、こいつの弾は置かれていなかったがな」
そういってグリフィンは近くのオートマトンの足を銃床で叩くと、アインに指示を出しながら去っていく。
そのオートマトンには何度となく大きな怪物を倒してきた重機関銃が備え付けてあった。
片腕を負傷したグリフィンが防御用の人員配置を指示しており、ブラットフォードやテンメイなどが目元を赤く腫らして銃を構えて移動している。
「みんな限界か」
無事逃げきれたのかを確かめるためエレオノーラを探していたベニユキは、並べられた武器から手榴弾を手に取るネシェルを見つけ話しかけた。
「さっきは助けてもらったな」
「大型の兵器が並んでいる個所を見つけたんです。それにこの銃なら人を撃った感触がないから」
そういってネシェルが奥を見る。
彼女の視線の先にはうずくまるホルテンの姿が見え、ベニユキはネシェルに視線を戻す。
「どうかしたのか?」
「人を斬ったっぽい。キュリルさんは比較的平常心だけど、血と臓物にまみれて連れてこられたホルテンは放心状態。多分しばらくは戦力にならないかも」
「そうなのか」
「だから私は銃で倒す、蒸発するし跡形もなす消せばいいんだ」