襲撃 5
湯船につかったエレオノーラとガーネット、アンバーが天井を見上げる。
「本社を襲ったテロリスト……」
「知らない世界で戦わされ、あのAIは最後には元の世界に戻すといってた……」
「ここまで記憶を返されたら十分に察せるねぇ」
「そういえば、皆さん病院に来ていたんですね」
「確かに、あなたの姿を見た気がするよエレオノーラ」
「私は病院にいた記憶はまだないんだけどね」
濡らした手拭いに空気を入れ湯船に付けて浮かべるネシェル。
「なんでもいいよ、元の世界に帰れれば」
肩まで湯につかりアンバーが答える。
「でも、元の世界に帰れば戦ってるんでしょ?」
「私には関係ないし、戻ったらすぐ戦ってる場所から離れるよ。元の世界に帰れば戦う必要なんかないし、警察とか軍隊に任せればいい」
「まぁそうだけど、ここまで私らを怪物たちを戦わせておいてそんなうまくいくのかな」
「あの会社、兵器もあったし使い方を変えれば兵器になるものも多かった。会社から離れれば安全というわけでもないかな」
「なにさ」
立ち上がり湯船の淵に腰掛けるキュリル。
「聞けば聞くほど、私は関係ないのにな。ただそばをたまたま通ってただけの巻き込まれ」
「不運は仕方ない」
ガーネットが湯船の隅で体育座りしているコウエイに話しかける。
「ところで、コウエイは会社が襲われてる時どこにいたの?」
「わっ私は、薬の治験のバイトで。そしたらそこで爆発が起きて、そっからあんまり記憶がないっす」
「あー、そういう感じか」
「その時はたしかカノンさんが先生でした」
アンバーは立ち上がり湯船から出る。
「さて、私はのぼせる前に出るかな。お先に」
「あ、なら私も出ます。湯船は苦手で、いつもシャワーにで済ませてたから」
脱衣所へと向かうアンバーを追いかけるようにキュリルも出ていく。
溜息を吐くネシェルとそれを気にかけるエレオノーラ。
「元の世界に戻ったら何が待ってるんだろうなぁ」
「あの戦いから逃すためではないでしょう。戦わせるためにいろんな世界を回っているのなら、待っているのは当然戦闘でしょうね」
「仕方ないか。でも所詮は人、あの怪物よりは強くないよね」
「かもしれませんけど、私は人を撃てるのかどうか……」
それぞれのタイミングで風呂から出ていく。
風呂から出て着替えを済ませエレオノーラたちはベニユキたちのいる礼拝所へと戻ってくる。
そこで各自それぞれのグループに分かれて戻っていきエレオノーラはベニユキやブラットフォードたちのいるグループへと向かった。
「ただいま戻りました、私たちがいない間に何かありましたか?」
「おかえり。まだミカからは何の報告もないな。何が起きているのやら、戦いたいわけじゃないけど、何も起きないという方が逆に不気味で」
何人かは食堂から持ってきた飲料を飲みのどを潤しており、アンバーとガーネットが遅れて戻ってきて長椅子に腰掛ける。
「今体はぽかぽかだけど、これで今日の戦闘で下ろされた先が寒いところだったら体壊すよね。湯冷めしない場所にしてもらえないか相談できるだろうか」
「時間が空けば何とかならないかな」
「まぁできる限り時間がかかってくれることを祈るしかないね」
「なんか眠くなってきた」
「目を覚ましたばかりだろしっかりしなさい」
「ううん、始まったら起こして」
施設全体にけたたましい音でサイレンが鳴り響く。
あまりのことで驚きのあまり何人かがいるから転げ落ち、何人かは耳を塞いでサイレンが収まるのを待った。
耳を塞ぎ音の聞こえる天井を見上げているとミカの声が響いた。
『皆さん、武装してください。申し訳ございません、こちらでなんとか抑え棟としていましたが防ぎきれませんでした。私がガブにしたことと同じことをやられました。この施設内に敵が来ます。すぐに戦闘の準備をしてください』
礼拝所の隅から武器の入ったコンテナを乗せたドローンが走ってきて各自人の集まっている付近で停車する。
「なになに!?」
「敵、ここに?」
突然のことで武器を選んでもいられず各自が慌てて目についた武器を手に取り、それに合わせた弾倉やカスタマイズ用のアタッチメント、手榴弾や救急箱を集めた。
ベニユキも目の前に止まったドローンから銃と弾倉を手に取り他に必要になりそうなものを探す。
「急だな」
警報を聞いて食堂などに行っていた者たちも戻ってくると、礼拝所はすべての扉を閉ざす。
他の場所への移動を封じられ、全員が武器を構え顔を見合わせる。
「この施設狭いですし戦うとしたらここですかね?」
「盾にもならなさそうな長椅子しかないぞ?」
「でも、もう扉は締まってしまってここから出れません?」
「敵もここに来るんだろ俺ら逃げも隠れもできない場所で戦うのか?」
などと話しているとドローン用の出入り口の近くの壁が開く。
「なんだ? 壁が急に開いたぞ」
「隠し扉ですかね、あそこへ逃げろということでしょうか?」
「案内はないけどそういうことだろうな、とりあえず行ってみるか?」
「はい」