襲撃 3
そこでベニユキは夢から目を覚ます。
「それで、ここにいるのか……」
起き上がり睡眠カプセルから出ると用意された服を着て部屋を出る。
いつも迎えに来ていたエレオノーラの姿はなく、見回せばグリフィンやギルベルトが部屋から出てくるところだった。
「やぁ、おはようベニユキ君。いい夢は見られたかな」
「おはようグリフィン。だんだんと記憶が返ってきてるよ。今日はいつもと目覚める順番が違うみたいだな。まぁ、だから何だってのはあるけど」
「そのようだね。ここにいても仕方がない、広間へ行くか? いつも皆が起きてくるまで少し時間がある、食堂へ行き軽食を取るのもいいだろう。食べ過ぎはお勧めできないが」
「いや、いつもエレオノーラに迎えられていたから今日は迎える側になるよ」
「そうか、ならまた後で会おう」
「ああ」
部屋を出てきたアンバーが同じく部屋枯れあくびをしながら出てきたガーネットに飛びつきそのまま強く抱きしめ、いきなりのことで困惑しながら礼拝所へと向かうガーネットを軽く手を振って見送る。
少し遅れてエレオノーラが部屋から出てくると彼女はすでに廊下に立っているベニユキの姿を見て駆け寄ってくる。
「あっおはようございます、ベニユキさん。今日は早いんですね」
「ああ、なんか今日は早く目を覚ましたみたいだ」
「私、大部分の記憶を思い出したんです。元の世界のことと私の状態と、大切な人たち。私の職場の近くの建物がテロリストに襲われてて、いっぱい怪我した人たちがきてて」
「ああ、みんな記憶が返却されてる。おそらくはグリフィンやキュリルたちもかなりの記憶が戻ってきているんじゃないか? ところで、昨日のことは大丈夫か?」
「はい、みんなは昨日のことを覚えていませんものね。今日こそはみんなが無事に帰れるようにしっかり頑張ります」
「ほどほどにな、銃弾とかが飛び交う中ではできることも少ないから」
部屋から出てきて傷の無くなった腕を見せるホルテンや、まだ半分寝ているようなキュリルらに挨拶をしながら合流しみんなで礼拝所へと向かう。
「おはようベニユキ君、なんかみんなの顔つきがいつもと違うな」
「ああ、二つ前の戦闘でみんな酷い戦いをしたらしいからな」
「らしいというのは、まるで見てきていないかのような言い方だな?」
「その戦いでは俺も死んだからな、記憶がないんだ」
「そうか。なら我々も頑張らなければならんな」
「ああ、そうだな」
皆が礼拝所へと集まるといつもと同じように通路への扉が閉まる。
もう慣れたいつもの行動でベニユキたちは長椅子に腰掛け明かりが消えていくのを待つ。
しかし青白い光が消えることはなくミカも現れない。
少し経ったのちにアナウンスが流れる。
『申し訳ございません、トラブルのため本日は少し時間がかかります。こちらの準備が整うまで施設をご利用しお待ちください』
施設全体にミカの声が響きそれを聞いて何人かが礼拝所を出ていく。
放送に耳を傾けていたエレオノーラがベニユキの方を見る。
「トラブルですって?」
「何だろうな、俺らにできることはないだろうからどうするか?」
やってきたテンメイがやってきてエレオノーラの手を取って立たせた。
「つまり休みってことね! お風呂に行きましょうエレオノーラ! みんなで入りに行くには今しかない!」
「そうですね。おはようございますテンメイ、いきなり来てびっくりしました」
「これからみんなを集めるわよ」
「でもどれくらい時間がかかるかわからないし、みんなでお風呂入っている時間あるんですかね」
エレオノーラを自分御そばに立たせるとテンメイはブラットフォードの方を向いて彼女に手を差し出す。
「ブラットフォードも一緒にお風呂に行きましょ」
「悪いが私は遠慮しておくよ、のぼせやすいんだ」
「そうなの? なら、また戦闘後とか機会があったら誘うから」
「すまないな、機会があれば」
テンメイに連れらえれエレオノーラはアンバーやネシェルたちの方へと向かう。
彼女たちが離れていくとブラットフォードはため息をつく。
「どうした?」
「いや、元の自分と違うといろいろ困るなと」
「元の自分? なんだ、今の姿は元の世界での姿ではないのか?」
「私は元の世界では男だったからな」
「んあ? そう、なのか?」
「そんな驚かないでくれ。細かく説明するのは省かせてもらうが簡単に言えば心と体が合っていない人生だった。ここにきて、今の自分の姿を見たときは驚いたよ」
「心と体が一致したわけだもんな」
「昔の記憶が戻ってくれるにつれてて視線の高さやトイレの時少し戸惑うが、ああ、あと風呂のときか。何日前だったか、私は皆が寝静まった後にこっそりとここに戻ってきて、この体で元の世界に戻してくれるようミカに頼んだよ」
「そしたらなんて言ったんだ?」
「しっかり戦い生き抜くことを条件にこの体でいさせてくれることを了承してくれた。だから私はしっかりと生き残っていかねばならない……頑張って入るんだけども、出来ていないんだがな」