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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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鉄と熱と蒸気 7

 すぐに銃を構えキュリルが引き金を引くが、機械兵は射線から外れその背後の木々の幹が蒸発し倒れた。


『君たちの戦いは見せてもらった。勝つ自身があるから私はここに出向いてきた』


 無言で引き金を引き続けるが身軽にかわし続け、遅れてベニユキとアンバーが銃を撃ち始める。


「負けず嫌いなのか」

「しつこい」「数が少ないからサッサと倒そう」


 二人の銃の連射力はネシェルの持つ銃よりあり無数の弾をばら撒く。

 しかし二人の放つ銃弾は機械兵に命中しても強固な装甲に弾かれ、その足を止めることはできない。


「向こうあれ、戦車が来てる、早く進まないと」

「前のあれに言ってくれる。強引に通りたければ進んで、あんたが斬られるそのすきをついて私が倒すから」


 ギルベルトとネシェルが悪態をつきながら話している間に機械兵は片腕でブンと巨大な剣を振り上げると走り出す。

 大きな剣を持っているが相手は機械で、その鉄塊を軽々と振り上げ事もなげに走ってくる。

 剣を雑に振り回しネシェルの銃の射線から機械兵は、剣を振った勢いを利用し強引に大幹をずらし走りながら体の軌道を変えた。


「何だよあのキモイ挙動は」

「今までの敵よりは動けるようだ」


 機械兵は真っすぐネシェルのもとへと向かって行く。


「ネシェルの銃は躱すのか」

「おそらくは貫けるんだろう、その銃だけが頼りだねぇ。あんな武器相手に接近戦は厳しそうだし彼女を守らないと」


 頭や足元の関節部を狙うが正面からでは歯が立たず銃弾は弾かれ、迫ってきた機械兵から距離を取るように後ずさった。

 そこに戦車が走りながら撃つ砲弾がギルベルトのそばに落ち衝撃でテオとともに箱を落とししりもちをつく。


「くっそ、黙ってみてられない」


 テオは負傷し戦闘のできないホルテンから拳銃を奪い、替えの弾倉をいくつかか掴むと射撃しながらキュリルのもとへと向かう。


「テオ前に出ないで!」


 剣を持つ流石のキュリルも大きな剣を軽々と振り回す機械兵に近寄れず、距離を取り遠巻きに見ていることしかできない。

 飛行船は進行方向先の山向こうをぐるぐると旋回しておりベニユキたちの方へとは向かってこない。


「ベニユキさん」

「どうしたホルテン?」


「俺が隙を作るっすから、あの機械を倒すのお願いできるっすか?」

「何か策があるのか?」


「お、俺が囮になって……」

「駄目だ、みんなでなんとかして箱舟に帰る。あんなガラクタに負けない」


 火傷をした腕で無理をしながらも剣を掴みホルテンは前に出ようとしベニユキとアンバーが引き止める。

 ネシェルに迫った機械兵は剣を振るい大きく地面を抉った。

 間髪入れずキュリルが剣を振るうが剣だけ残して身軽に躱し戻ってきた勢いでキュリルを蹴り飛ばす。


「アグッ、ガフッ」

「キュリル!」


 鉄の塊に蹴飛ばされ吹き飛ぶキュリルにテオが駆け寄る。

 最大の脅威である県に向かって銃を撃つが剣が、着弾個所の刀身が赤く光るだけで溶けることも折れることもなくネシェルは舌打ちをした。


「今日こんなのばっかりだよ」


 更に近寄り銃身を掴んだ機械兵がもう片方の腕で剣を振り上げた。

 焦りながらもネシェルは背中に背負ったバッテリーと一つになっている銃を取り返そうと強く引っ張るが機械に掴まれたそれはびくとも動かない。


『まず一人だ』


 ネシェルに振り下ろされる前にアンバーが駆け寄りながら白い銃に持ち替えると銃を撃ちながら機械兵に向かって行く。


『勇敢で蛮勇な』


 アンバーの撃つ銃弾は当然の様に弾かれる。

 剣を斜めに振り下ろし、先に迫ってくるアンバーへとむけて機械兵は攻撃しようとした。

 そこに白い尾を引いて一発のロケット弾が飛んできて機械兵の手前に地面に落ち爆発する。

 機械兵はその場に踏みとどまるが、ネシェルとアンバーは爆風に煽られ大きく吹き飛ぶ。


「なかなか楽しそうなことをしているじゃないか!」


 グリフィンが町の方から走ってきて立ち止まると新たにロケット弾を装填する。


「グリフィン!」

「立て、武器を構えろ! 敵から目を離すな」


 腹を押さえながらキュリルが立ち上がり剣を構えなおす。

 吹き飛ばされ地面を転がり血だらけのアンバーとネシェルが恨めしそうな目で彼を見る。


「あんたが吹っ飛ばしたんだろうが……。口の中に石が……うわ、歯が折れたじゃん」

「びっくりして腰が抜けちまったよ」


 機械兵は壊れた銃身を投げ捨て剣を振り上げるとそばに倒れるアンバーたちに目もくれずグリフィンを狙って爆発で巻きあがる土煙を飛び越え走り出す。

 しかし同じく土煙を立てにして刺客から飛び掛かってきたベニユキとホルテンが赤く光る剣を振るう。

 すれ違いざまの一閃、機械兵の胴体に傷をつけ剣を持つ腕を切り落とす。


「すみません力が入らなくて」

「いいダメージを与えた、引くぞホルテン」


 背中に背負うタンクへとむけての銃撃、機械兵は残った腕で剣を掴みなおし振り上げる。

 そこにグリフィンがロケット砲を撃ち込む。

 機械兵は砕け散りばらばらとなる。


「倒した!」


 喜んでもいられずベニユキたちの付近に戦車の砲撃が二つ落ち地面を揺らす。

 向かってくる戦車の方を見ればだいぶ迫ってきており、追いつかれるのも時間の問題な距離まで来ていた。


「無事だったんだなグリフィン」

「ああ、町が入り組んでいて何度か道に迷った。さて周りに敵もいない、四人で箱を持って走って逃げよう」


 ボロボロになったネシェルが背負ったバッテリーを捨ててグリフィンに尋ねる。


「私らを殺しそうになって、何か言うことはないの」

「すまないな、だが箱を持ち帰りより多くのものを生かすための判断だ」


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