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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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鉄と熱と蒸気 6

そのまま直進し最後尾から順に機械兵を切り離し落としていく。

そして空飛ぶ銀色の塊は風を巻き上げ高速でベニユキたちの頭上を飛び去っていき去り際に黒い粒をまき散らす。


「何か落としてきた!」

「機械兵も降りて来たよ!」


落下に伴い次第に黒い粒は大きくなっていき、突起のついた塊が尖った先端を下にして地面に刺さった。

上に一つ、下方に三つ棘の生えた波消しブロックのような鉄塊。


「みんな無事か?」

「確認はあとでいいから上のを落とせ!」


テオを共に箱を持ち銃を構えられないギルベルトが叫ぶ。

折りたたんでいたグライダーを広げ近くの建物の屋根に降りる機械兵たち。

ギルベルトとテオが箱を持ち上げると来た道を戻る。


「五十……もっといるか」

「数が多いっすね」


片腕を負傷し残った腕で拳銃を撃つホルテン。

ネシェルも飛行船を落とすのをやめ、屋根の上を走りベニユキたちを取り囲もうとする機械兵を撃ち落とす。


「身軽だから他のより足が速い」


軽装甲で簡単に手足を壊せるがそれでも数が多くまるで減る気配がない。

その多くが噴射する蒸気でまたしても周囲が白く霞み始める。


「はぐれたら各個撃破される。何とか突破できないのか」

「空見ろ! 飛行船、引き返してくるぞ!」


空飛ぶ巨船は一列に並び大きく弧を描いて引き返してこようとしていた。

旋回する船体が日の光を浴びて眩くきらめく。


「さっきは運よく誰も当たらなかったけど、何度も幸運が続くわけでもない」

「建物の中に隠れるかい?」

「囲まれたらもう逃げられないすよ」

「速度上げるよ、急いでテオ」

「無茶を言うな、これすごく持ち辛いし重たいんだぞ」


地面から空に向かって白い帯が伸びて行き、最後尾を飛んでいた一隻が黒煙を上げる。


「ロケット砲、エレオノーラたちか」

「向こうも戦闘しているんですかね」


「早く合流したいな」

「帰りましょう、みんなでもう戻るだけなんすから」


銃を撃ち機械兵を近づけないように戦う。

倒しても切りがなく、死角を作ると一気に詰め寄ってくる。

両手がふさがり武器の持てないテオとギルベルトは周囲を見て、迫ってくる機械兵の位置を皆に教え続けた。


「飛行船が来てる!」

「いったん建物の影に!」


次第にプロペラ音が大きくなってきて、大きく旋回し十字に隊列を整え戻ってきた飛行船の更なる攻撃。

まき散らされた黒い塊が街路樹や屋根、石畳を砕いて地面に刺さる。

振ってくる鉄塊が銃を撃つホルテンの無事な方の腕に当たり、鈍い音を立てた後にホルテンはうめき声をあげる。

そしてよろけるホルテンをアンバーが支えた。


「腕、折れたね……痛むよね」

「だい、じょぶっす……まだ、自分で、歩けますから」


飛行船が過ぎると知らぬ間に迫ってきた機械兵たちが尖った腕を伸ばし向かってくる。


「ベニユキ君!」


屋根から直接落下してきた機械兵の腕がベニユキの背中を斬りつけそのまま地面に激突し砕けた。

ホルテン同様に手当などする時間もなく痛みに耐えながら進む。

落下物に当たりホルテンが負傷したことでさらに攻撃するものの数が減り機械兵たちは倒してもどんどん距離を詰めてくる。

戦いながら移動しているうちに、皆が噴射された霧で散りじりになった場所へと戻ってきたようで霧が晴れた今無数の機械の部品と槍が散らばっている。


「最初に白い霧で分断された場所っすね」

「誰かまだこの辺に隠れてたりしないか」


「いても逃げているか、合流くらいしてもいいと思うけどな」


弾倉が付きかけると銃を撃てないテオとギルベルトから銃と弾倉を受け取り戦う。

やっとのことで街を抜け出すベニユキたち、最初に戦った機械兵たちの残骸を乗り越え山道へと向かう。


「ここからが長いな」

「上り坂だしね」


遠くで汽笛の音が聞こえ見回すと港町より遠くの位置に列車が走っているのが見えた。

線路自体は草に覆われているようで、列車は道なき道を進んでいるように見える。


「列車っすか?」

「見惚れてないで進め」


町はずれにある朽ちた外食店のあたりまでくると港町以外も見渡せ、そこから見える列車は何十両と貨物を乗せている。

そして速度を緩めることなく走行したままそのコンテナから機械兵が下ろされる。

機械兵だけでなくそこには戦車の姿も確認でき真っすぐベニユキたちの方へと向かってきていた。


「増援がいっぱい来たねぇ!」

「何楽しそうににしてるんだ進め、進め! 後ろから飛行船も来ているんだぞ!」


複数の戦車は側面と上部についた砲塔で狙いをつけ砲弾を飛ばす。

悪路を走行しながらの砲撃は命中精度は良くなくベニユキたちから離れた場所に着弾するが数が多い分、ごくまれにベニユキたちの近くに砲弾が落ちる。


「撃ってきた!?」

「まだ遠い、よっぽど運が悪くなければ当たらない」

「榴弾じゃないからまだ安心できるんすけどね」


道の先に立つ一つの機械兵。

行く手を阻むように立つその機械の手にしているのは巨大な刃物。


「なんかでかいのがいるっすね」

「ここに来たまた新しいのが出てきやがったか」

「あれって、斬馬刀?」


頭と肩が赤く塗装されている。

他の機体とわずかに違い塗装も新しく見える。


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