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実働隊は僕達なのに、そっちのけですか!

「あなたは!玄人君にまで手を出していたのですか!」


「え、嘘。ちびったら、俺のひいじいちゃんにヤラれちゃった?それで、自暴自棄になっちゃってるの?」


 いや、そう言う事じゃなくて、死神側の僕が死神として、ええと覚悟を決めていたというか。

 なんだか、自分と長谷を楊達から一線を引いて考えた自分が、彼らの間抜けな台詞によって一瞬でどうでも良くなってしまった。

 それどころか、僕はこの間抜コンビを、どこかに本気で埋めてしまいたい気持ちになった。

 僕を馬鹿にするのもほどがある!


「長谷さん。雪山に行きたい。かわちゃん達をまず埋めたい。」


 ブハっと噴出した笑い上戸の魔物は、僕にかけていた手を外し、しゃがみ込んでの大笑いだ。

 彼こそ破滅させたいという気持ちに動かされるように、気が付けば僕は彼の足を軽く蹴っていた。


「ちび!こんなにやさぐれちゃって。」


 どこまで本気なのか僕は楊に抱きしめられ、今度は髙までも笑いの波に乗っているではないか。

 僕は馬鹿な人達に降参し、楊の手を汚す道を選ぶ事にした。


「いいの?」

「お前は俺の弟分だろ?」


 僕を抱く楊の手にそっと手を乗せて、僕は楊の温もりと鼓動を堪能するために目を瞑った。

 楊の鼓動を覚えたならば、僕は大丈夫だ。


「僕は優の中にある泊の内臓を殺します。でもね、内臓が潰されてもそれは体の中だから、優の死人化が促進するだけ。死人になった彼らを僕はいつも死体に戻すでしょう。だから僕が殺すって事。いつもやっていることでしょう。」


 楊はさらに腕に力を籠め、僕はぎゅううと楊につかまれている。


「それじゃあ、背負えないけど、失敗するかもしれないけれど、かわちゃんは手伝ってくれる?彼女の体内で内臓を燃やしたい。完全に炭化させて固めてから取り出すの。」


 僕をつかむ腕は、そこでびくりと蠢いた。

 鼓動もどきりと跳ね上がった。


「失敗したら……彼女は死人化するだけ。すぐに僕が死体に戻します。彼女の死人化はもうその方法でしか止められそうもないから、だから、気にしないで。」


「お前はだって、以前に署を襲った半死人を助けただろ。」


「あの人達は死人の肉片を食べて、それで、です。もともと違法薬物で内臓もイカレていたから、簡単に死人の肉片で死人化したのでしょう。でも。」


 その先を僕が言う必要が無かった。

 一番状況に詳しい魔物がいたからだ。


「彼女の場合は外科手術で体に埋め込まれたからだ。マサトシはそれで僕の所に来たのでしょう。この場合の死人は、クロちゃんが以前行った死人化した部分だけ殺すってわけにいかないんだよ。死人の内臓はこの女性の新鮮な血液を供給されて生者になっているのだからね。普通に切れば死人の血が溢れる。だからこその燃すという手段だね。」


 しかし魔物に答えて返事をしたのは髙であった。


「内臓を燃したらその後は医療処置が必要ですね。病院の手術室をジャックできませんか?あるいは。」


「救急車内で処置しよう。彼女はそのまま病院に運び入れて、真っ当な医者に手渡し、ニセ救急隊員の僕達はトンズラ。マサトシは謎の救急車に乗っていた美女二人を保護するべく、保護者が迎えに来るまで警護していたって、クロちゃんの傍に置いておけばいい。」


 僕と楊はもう少しお互いでやり取りをしたかったが、勝手に作戦を練る魔物と魔物のような狡猾な男にみるみる段取りが出来上がっていくのを間抜に見守るしかなかった。


「かわちゃん。できそう?」


「生きている人をボゥワって燃やして殺しちゃったら、俺は生きていけないよ。」


 僕は楊の心臓が爆発しそうな鼓動をしているのを背中に受けながら、楊の持つヨタカ型の火の鳥は破壊と爆発だけが得意そうだったな、と思い出していた。

 失敗したらどうしよう。

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