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竜なる少女と回復士  作者: kanten
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第二話「ソロでの依頼」

自分も安くて腹いっぱい食べられるA定食が食べたいので初投稿です。

クランを出ていった翌日、俺は朝早くから冒険者ギルドへ行き一人でもできる簡単な依頼とヒーラーでも入れそうなクランかパーティが無いかを探していた。前者の理由は簡単で、金が欲しいからである。後者の理由は生存率の高さを考えてのことである。クランは大人数が一つの依頼の報奨金を分け合うので一つの依頼の難易度と金は高いがそれぞれの懐に入るのは雀の涙である。が、人数が多いほどモンスターに与えるダメージも大きくなるし、味方のカバーにも入りやすい。要は一人一人が死ぬ確率が低いのである。命あっての物種であるので基本的には個人で依頼を受けることはあまりなく、少人数で組むパーティもしくは大人数で組むクランに入ることがこの界隈での当たり前だ。だから、人員を募集している所がないかギルドの受付に聞いてみたのだが…。


「人員を募集しているクランやパーティ自体はありますがぁ、ヒーラーを募集している所は一切ないですねぇ。」


「だよな…。」


まあこうなるわな。というか、回復薬とかいうやつが便利すぎるんだよ。あそこまで手軽に、格安で心身ともに回復できるんだからヒーラーという人間にかかるコストと比較すれば誰であっても前者を選ぶだろう。俺がアタッカーでも即鞍替えする。が、俺はアタッカーでもウィザードでもない。迷惑を被っているヒーラー側の人間なのだ。正直勘弁してほしい。


「じゃあ、この依頼を受けさせてくれ。」


「薬草の採取ですかぁ?ですが階級的に…いえ。わかりましたぁ。手続きを行いますので少々お待ちくださいねぇ。」


そう言ってギルドの受付嬢は奥に引っ込む。階級、か。確かに今まで受けた依頼からしてありえないくらい難易度の低いものを受けたなとは自分でも思う。依頼には難易度ごとに階級がある。難易度が一番低いE級から、D級、C級、B級、A級、S級という順に高くなっていく。先ほど受けた薬草採取は難易度E級、冒険者なりたてがはじめに受けるような依頼だ。以前在籍していたクランではだいたいC級、高くてB級あたりの依頼を受けていたため、それを知っていた先ほどのマイペースなしゃべり方の受付嬢は内心驚いていたはずだ。が、これを通した。基本自分のレベルに応じない低い難易度の依頼を受けることは禁止されているが、今回ばかりは特別なのだろう。ギルド側でもまさか回復薬というヒーラーの存在を消し去るほどの薬が出てくるとは思わなかったのだろう。ヒーラーに限り自分の元居たクランやパーティの階級に見合わない低難易度の依頼を受けることが許可されている。これは俺らとしては非常にありがたいことだ。少ないながらも金が手に入るからな。


「お待たせしましたぁ。手続きが完了いたしましたのでぇ、準備が完了したら出発してくださいぃ。」


「わかった。」


「にしても少なくなりましたよねぇ、薬草の採取依頼。回復薬の素材になりそうだしむしろ増えていないとおかしいと思うのですがぁ。」


「…確かにそうだな。」


薬草採取が少なくなっていたのは俺も疑問に思っていたところだ。自分もルーキーだったころ薬草採取は頻繁にしていたが、依頼が貼ってある板にある依頼数の倍あってもおかしくなかった。受付嬢の言う通り、通常だったら増えていてもおかしくないはずなのに、むしろ少なくなっている。回復薬には薬草なんて使われていないのではないか? と思えるほどに。


「製造方法も公開されてませんしぃ、ちょっと怖いですよねぇ。」


「まぁ売ってる側からして製造法を真似されてさらに安く販売されたら困るだろうし、公開していないのはなにもおかしくない。」


「そうですかぁ? そうですねぇ。」


それっぽい理由を言ってみたらそれで納得したようで、その後いくつか世間話をしたのち、俺は準備に向かった。薬草採取とソロでの活動が久しぶりなので、入念に準備をして薬草採取に向かうか。


~3時間後~


「はい、依頼文に書いてある薬草全てを確認いたしましたぁ。依頼達成です、おめでとうござ…大丈夫ですかぁ?」


「あっ、あぁ…大丈夫だ…。」


嘘だ。息は上がっているし、泥まみれ傷だらけだしで、はたから見たら依頼を失敗したようにすら見えるだろう。何故こうなっているのかというと、俺がソロであることと、モンスターを攻撃する能力の低さが挙げられる。俺の攻撃方法は初級魔法しかないため、モンスター一匹を倒すのに時間がかかる。なので、群れることが多い小型モンスターには反撃される可能性が高いため喧嘩を売れないのだ。ではどうするか? 基本隠れてやりすごし、ばれたら撒くまで逃げるのである。ゆえに、そこまで遠出はしていないがここまで時間がかかったし、採取後全力で逃げ帰ってきたため息は上がっているし、隠れている途中で泥にまみれるわ切り傷ができるわで散々だった。これだけ辛い思いをして…。


「そ、そうですかぁ…。では、こちらが報酬金ですぅ。」


銅貨五枚が渡される。これだと今日の飯だけで精いっぱいな金額だ。これだけ辛い思いをしてこの金額だと思うと涙がでてくる。じゃあ冒険者を止めて別の職業につけばいいじゃないかという話だが、それも難しい。なぜならほかのどの職業でも最低限の教育を修めていなければ受け入れられないからだ。俺は親から捨てられた身。子供のころ受けるはずの教育を受けておらず、定職につくことができず最後にたどり着いたところがこの冒険者ギルドである。ここは最後のセーフティネットだ。教育を受けていなくても、何かしらの理由で元居た居場所を追われた者でも、命の危険と引き換えに、依頼を達成できさえすればその難易度に応じて金がもらえるという夢のような場所なのである。


「おばちゃん、A定食1つ。」


俺はそんなことをぼんやりと考えながら、いつも飯を食っている定食屋「グランデ」に行く。ここは安くて比較的量が多いため、頻繁というか、ほぼ毎日行っている。ここが無くなったら俺は本当に餓死してしまうかもしれないというくらい、俺にとっては重要な場所だ。ちなみに頼んだA定食は一番安いやつな。


「またかい? たまにはお高めの店に行ったりしなよ。」


「やだなぁおばちゃん。俺の懐事情、知ってるっしょ?」


「まったく! 一番安い奴をひたすら食べられるあたしの身にもなってほしいよ。」


「あっはっは。ごめんごめん。」


こうは言っているが、いつも俺のことを気にかけてくれる優しいおばちゃんだ。ここには安くてうまい飯を食いに来てこそいるが、この人の人柄がなければ俺は今頃無料で食える木の根っことかを味わって食べていただろう。


「はいよ、A定食! ちゃんと食って気張りなよ!」


「ありがと、おばちゃん!」


さて、腹いっぱい食って明日も頑張りますか!


そして運命の日が訪れる。俺の今までの人生からは想像もつかない荒波に飲み込まれる、運命の日だ。


多少はストックがあるので、一週間くらいは正午に毎日投稿できると思います。後は週一になるはず。

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