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竜なる少女と回復士  作者: kanten
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第一話「追放」

初投稿です。対戦よろしくお願いします。

回復薬。

それは、ほんの2カ月前にここウェルキア王国にて開発された画期的な薬品である。規定量服用すればたちどころに傷が癒え、疲労も軽減されるという、全肉体労働者が歓喜するであろう魔法のアイテムだ。この世界にはそんなものを心から待ち望む人が多く、販売をされるとすぐに手に取るものが後を絶えなかった。それは超人気料理店の料理長であったり、日々の家事に追われる主婦であったり…冒険者であったり。「俺」も実際に使用してみたからわかる。あれはすごい効果だ。依頼で疲れた体が一気に軽くなったし、そこでへましてつけてしまった傷もすぐ消えたし。違和感はすごいが。これであのお値段なんだから、爆発的に売れるのもうなずける。ただ、太陽の光が影を生み出すように、回復薬という大きな光が生み出した影があった。それは…。


「ルーカス、君にはこのクランから出ていってもらう。」


「…なぜだ?そこまでの処置をされるほど大きなミスはしていないと思うんだが。」


「わからない君ではないだろう?回復薬の存在、忘れたとは言わせないぞ。」


冒険者は命を賭して依頼を遂行する者たちである。依頼の難易度が高ければ高いほど、報酬も多くもらえるが、そんな者たちは「A級」のほんの一握りで、それ以外はかなりカツカツな生活を強いられる。それがクランともなればなおさら。俺はそんな世界に存在する、大型のC級クラン「白銀の大翼」に在籍しているヒーラー、ルーカスだ。


「君たちヒーラーに払う給金と回復薬全員分を買う金額を計算、比較してみたのだが、後者のほうが低いという結果になった。」


そりゃそうだ。あんな破産覚悟かと見紛うほどの安値で売られているんだ。その結果になるのは明確だろう。回復薬が出てきた時点で解雇の可能性は十分にあったが、ついに来てしまった。こいつは頑固だから考えを曲げる可能性は低そうだが、俺にだって生活があるんだ。とりあえずあがいてみよう。


「俺は一応攻撃魔法も使えるぞ? 攻撃役兼回復役ということで一旦様子を見てみないか?」


これは本当だ。今回はヒーラーの立ち位置が悪くなっただけであって、それ以外の攻撃を担うアタッカーやウィザードにはなんの変化もない。そのポジションを狙った発言だったのだが…。


「君の攻撃魔法、確か初級魔法しか使えなかっただろう? 火力が足りないし、攻撃役としての連携も今から練習する余裕もない。」


その通り。俺が使う攻撃魔法はウィザードたちが一番最初に覚える初級魔法と呼ばれるものだ。魔法はいくつかの属性と初級、中級、上級、最上級、天上級という威力ごとの分類に分けられる。

で、俺は火の初級魔法しか使えないわけだ。そこまで強くないモンスター相手には多少は通じるが、それ以上にはほとんど効かない。ちょっと火傷させるくらいか?


「…俺は回復魔法と攻撃魔法を同時に展開できるぞ。何かに使えると思わないか?」


正論を言われてしまい、既に崖っぷちから手が離れそうな状況だが、まだ諦めたくない。苦し紛れにもう一つ利点に聞こえるかもしれないものを挙げる。が…。


「何かとはなんだ?それを今提示できなければ俺は考え直すことはできないな。」


だよな。こいつがこんな展望のあいまいな言葉に騙されるわけがない。

こいつは30人という大人数をクランという形でまとめ引っ張っているリーダー、アインだ。彼は実力もさることながら、依頼の達成を重視し、そのためならば合理的でかつ、非情な選択もできる恐ろしい男だ。だからこそ命を賭してモンスターという人間に害を及ぼす生物と戦い、報酬をもらう冒険者として信頼がおけるとも言えるのだが。

今はその性格が完全に俺に牙をむいている。これほど恐ろしいことはないだろう。


「…っ! 頼むよ! すでにもうギリギリの生活なんだ! ここから放り出されたら本当に飢え死にしちまう!」


情に訴えかけようとしても…。


「それはこちらも同じことだ。ここで君を抱えてクランごと破滅するか、君を放逐してクランを存続させるか。リーダーとしてどちらが正しいと思う?」


と返されるのは俺も予想はできた。…ここまでかな。これ以上言い争いをしても意味はないだろう。


「わかった、明日までには荷物をまとめて出ていくよ。それじゃあ…。」


俺は明日からどうしようという絶望を抱えながら荷物をまとめるために踵を返そうとした。


「ああ、頼む。あと…」


「?」


「今まで助かった。クラン「白銀の大翼」リーダーとして心から感謝を言いたい。」


…感謝をしているのだったらもう少し温情をくれてもよかったんじゃないだろうかとは思ったが、ここで言っても何も良いことはないので言わない。

そうして、俺は今までお世話になっていたクランを抜けた。これは何もここだけに限った話ではなく、ほかのクランのヒーラーを抱えるクランでも同じことが起こっているはずだ。これが影。俺らには大きすぎる影だ。


そして2日後俺は…


「………私と組まない?」


俺は、よくわからんちんちくりんに勧誘されていた。


読んでいただきありがとうございます。反応次第で続きを書きます。

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