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出会い⑤ 告白

「この後どうする?時間ある?」

「そんなに遅くならなければ大丈夫だけど・・。ひょっとしてデートの誘い?」

六城さんはいたずらっぽく笑った。

「いやあ、もうちょっといろいろお話とかしたいなーって思って。」

「あら、気が合うわね。私もそう思っていたところよ。」

 僕は頭をフル回転させてこの後のプランを考えた。といっても所詮は中学生の知識なのでそんなに気の利いたところは思い浮かばなかった。どうしようかと焦っていると六城さんの方から声をかけてきてくれた。


「私、繁華街のメイン通りに行きたいな。桧室君はどこか行きたいところはあるの?」

「さっき、いろいろ考えたんだけど、これといっていいところが思いつかなかったから、そこに行こうよ。」

 残りのごはんを食べ終わり僕たちは店を出た。そして、メイン通りを目指して歩いて行った。

「今日は梅雨なのにいいお天気でよかったわね。ちょっと暑いのがいやだけど、夏だからしょうがないわね。」

「そうだね。雨が降らなかったから僕は嬉しかったけどね。」

「やっぱり日曜日は人が多いわね。ここは曜日に関係なく多いのかな?」

「有名な繁華街だからね。曜日によって客層が変わるんじゃないかな。」

 

 雑貨店、洋服店、靴店など様々な商店がずらりと軒を連ねた通りをたくさんの人に埋もれながら僕たちはゆっくりと歩いていた。歩きながら僕は今日中には必ず六城さんに対する想いを伝えないといけないと思って少し焦っていた。

 今日を逃すとメールでやりとりはできるとはいえ、なかなかこんなうまい具合に二人で会えることはないだろうと思っていた。いつ、どのタイミングで伝えればいいかを考えるが、なかなか上手い考えは浮かばなかった。

 でも、必ず今日中に想いを伝えると心に決めた。二人でウィンドウショッピングをしながら、ぶらぶら歩いていると、街の中を流れている堀のような川のところに来た。そこには有名な橋が架かっていて、観光スポットにもなっていた。現に今もカップルが写真を撮っているところだった。


「ねえ、川に沿って歩かない?」

僕は六城さんに言った。

「いいわよ。」

 僕たちは橋のたもとの階段から川沿いに降りた。そこは遊歩道になっていてきれいに整備されていた。川には遊覧船も出ていて、船着き場があったり、ところどころにベンチが備え付けられていた。僕たちは遊歩道を川沿いに歩き出した。


「ねえ、六城さんって付き合っている人とかいるの?」

僕はどうしても聞きたかったことを思い切って聞いてみた。

「あははは。いるわけないでしょ。女子校だし、家も厳しいからね。」

「桧室君はどうなの?彼女さんいるの?」

「いないけど、好きな人ならいるよ。」

「へえ、どんな人?」

「うーんと・・・、六城さん。六城さんです。僕、六城さんのことが好きになってしまいました。よかったら僕と付き合ってください。」

一気にそこまで言うと、僕は六城さんに手を差し出した。

「えー。私!ビックリしたー。ちょっと待ってよ。本当に私なの?」

「はい。六城さんです。よろしくお願いします!」

「私でよかったらいいよ。こちらこそよろしくお願いします。」

そう言って六城さんは僕の手を握ってくれた。

「あーよかった・・。むちゃくちゃ緊張したー。断られたらどうしよかと思ったよ。」

「ふふふ。桧室君、そんな風に私を見てくれてたんだ。」

「うん。気が付いたら好きになってた。」

「私は、うーん、どうかな?でも、このまま講座が終わって桧室君と会えなくなるのは寂しいかなって思ってたよ。」

「ありがとう。嬉しいよ。」


 それからしばらく、いろんな話をしながら川沿いを歩いていた。途中にベンチがあったので並んで座って話をした。とても楽しかった。この時間が永遠に続けばいいなと思った。それから、お互いの連絡手段の話になって、六城さんがやっぱり電話はまずいということなので、今まで通りメールでのやり取りをすることになった。

 会うのも頻繁に会うのはバレるかもしれないから、休みの日は月に1回ぐらいで、あとは週に1回平日の放課後に時間を合わせて会うことにした。

 あと、友人からもバレる恐れがあるので、僕たちの関係は二人だけの秘密ということにした。あまり会えないのは残念だが、六城さんの学校や家にバレてしまって、この関係が終わるのは嫌だったので仕方がなかった。その代わり、会える時間は思いっきり楽しもうと思った。楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、そろそろ時間も夕方近くになってきた。


「あっ、いけない。もうこんな時間だわ。そろそろ帰らないとヤバいかも。」

「そうだね。そろそろ帰ろうか。今日はとっても楽しかったよ。ありがとう。」

「こっちこそ。告白されてビックリしたけど楽しかったわ。」

 僕たちはベンチから腰を上げ、難波駅に向かって歩き出した。駅を見ると講座のころの帰りの電車や一緒にジュースを飲んだことなどを思い出し、また楽しい気分になった。券売機で切符を買い、ホームに入った。六城さんの降りるM駅まで一緒だ。付き合うことになって、また会えるという安心感があって心地よかった。


「そろそろ期末テストだね。桧室君、学校の勉強もちゃんとやってる?」

「実はあんまりやってないんだ。今日から頑張るよ。」

 電車の中で学校の話やテストの話をした。六城さんと話をしていると、どんな話題でも楽しい気がした。話しているうちに電車がM駅に着いた。

「じゃあね。今日は楽しかったわ。また連絡するね。バイバイ。」

「僕も連絡するよ。バイバイ。」

 僕は、一人になってから今日一日のことを考えた。随分と濃い一日だった。検定試験があり、六城さんに思い切って告白をしてOKをもらった。そしてデートがてら、いろんな話をした。今日の日は僕の中の記念日としてとっておこうと思った。そして僕も家に帰り着いた。


「ただいま。」

「あら、お帰りなさい。試験はどうだった?」

母親が台所から顔を出して声をかけてきた。

「うん。そこそこできたと思うけど、結果が来るまではわからないね。」

「合格してるといいね。」

 僕は着替えて、ご飯を食べて風呂に入った。風呂から上がると六城さんからメールが来ていた。


〈今日は楽しかったね。期末テストが終わったら会おうね。それまではお互いに勉強頑張ろうね。〉

〈僕の方こそむちゃくちゃ楽しかったし、最高の日になったよ。期末テストが終わるまで会えないのは残念だけど、次に会える日を楽しみにして勉強頑張るよ。〉


 それから、約10日間、僕たちは期末テストに向けて勉強した。何だかこれまでより勉強に熱が入り集中できた。お互いに会うことはできなかったけど、ちょくちょくメールでのやり取りはやっていた。

 まあ、内容的には「勉強しんどいね。」とか、「頑張ろう。」とか、「テスト終わったらどこにいこうか?」といった内容だった。

 そして、期末テストが終わった。テストの結果はこれまでのテストと比べてかなり良かった。これも六城さんの効果かなと思ったりした。何にせよ、これでやっとお互いに会うことができるようになった。今度会うのは日曜日で、メールのやり取りの中で、六城さんのリクエストで遊園地に行くことが決まっていた。付き合って初めてのデートなので、「どんな服を着ていこうか?」とか「お昼ご飯は何を食べようか?」とか想像をたくましく膨らませて、数日前から楽しみで仕方なかった。


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