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とある勇者の強くてニューゲーム  作者: ヤン・デ・レスキー
7/14

ループ2:勇者リト レベル66 ②





「…ノエル、また会いに行く」





 よお、さっき死んだリトだ。今、俺は俺の代わりに死んだノエルに語りかけているところだ。ちなみに今回もノエルの塵は集めておいた。



 少し違うのは、前まではセイがこれを集めてくれていたが、今回は俺がノエルの塵を集めたってところだな。ちなみに、ノエルの塵はこれで三つ目だ。俺が過去へ巻き戻れば戻るほど、ノエルの塵は同じ数だけ増えるんだろうな。



 ノエルを救うにはどうすればいいだろうな…いっそ、はじまりの国から魔法で魔王城を焼き尽くすことができれば良いんだがな。それができなくとも、出来るだけ遠い場所…ノエルが強制的に仕掛けてくるこの街よりも遠くから魔王を貫くことができたなら…いや、それならノエルに「魔王様を殺したのですか?!」とか言われそうだなあ…「俺が魔王だ、俺に従え!さぁメシを作ってこい」とか言っても消されそうだな…



 うーん、ノエルの気持ちがわからん。どうして俺が死んだ時、あんなに悲しそうな顔をしてたんだ…?



 まあ良い。魔王を倒しに行くか。前回よりもかなり早いうちに倒せそうだな、あの地下で見た人たちは恐らくまだ生きてる。あの人たちも早く助けておかないとな。








◇◇◇







 数日後、魔王城では退屈を持て余した魔王が僕の報告を聞いていた。



「魔王様、ニンゲンは勇者にやられたそうですよ。殺害に失敗したそうです」



「ほう、そうでしたか。中々帰りが遅いので手こずっているとは思っていましたが…

 でしたら、彼女の家族ももう必要ありませんね。明日以降、一人ずつここへ連れてきて下さい。暫くの間、それで退屈を凌ぎます」




「はっ、畏まりました」




 僕を下がらせた魔王は、一人ため息を吐く。



「この世界を征服する為に復活したのは良いものの、手下が優秀過ぎて退屈ですね…。あの恐ろしい魔女が死んだことは…まぁ一つのスパイスでしょう。


 さて、勇者様はいつここに辿り着くのでしょうか…数ヶ月と予想しました。魔界特製鏡を使って実際のところを調べてみますかね…。


 ふむふむ、あと三週間ですか。…三週間?

 勇者御一行がここまであと数ヶ月はかかると予想をつけて、彼女に勇者を殺すよう僕を送ったのですが…。


 面白いですね、勇者リト。魔女を倒したり、数週間でここに着く予定とは…下僕に調べさせた情報とは全く違う」




 退屈を持て余した魔王はにやりと笑う。勇者はどうやってここまで来るのか。それを観察することは、きっと人を嬲るより面白い。

 そう考えた魔王は、僕を呼びつけた。



「魔王様、用はなんでしょう?」



「先程、明日から人を連れてこいと言いましたが撤回します。彼らは…そうですね、今度遊べるようにまだ生かしておいて下さい」



「畏まりました」





 翌日、恐ろしい速度で森を駆け抜ける勇者一行を確認した魔王は少し恐れを抱きながらも、勇者一行の旅路に興奮するのだった。






◇◇◇





 ノエルを三度失ってから二週間後。リト達は魔王城の前まで来ていた。




「な、なあリト…ノエルちゃんを亡くしてから、なんか旅のペースが急速に上がったんだが…魔王城までこんなにすぐに着くなんてよ…」


「リト、貴方はもしかしてペース配分という言葉を知らないのですか?

 私達はまあ着いてこれましたが、ノエルさんも一緒なら…いえ、なんでもありません。言うべきではありませんでしたね」



 ヤンが少し戸惑いながらリトに言うと、セイも続けて言い放った。



「…ああ、二人とも悪りぃな。二人ならここまで着いて来れると信じてこのペースで来た。

 二人ともありがとう、俺に着いてきてくれて。

 ちなみにセイ、ノエルならここまで一瞬で来れたと思うぞ。なぁ、そうだろ?魔王さんよ」




 リトは二人に向けて礼を述べた後、ふと違う方を向いた。彼の視線の先には一人の男が居た。



「ほう…私が魔王だとよく気づきましたね。ああ、失礼…何故ここで見ていることに気づいたのだ!の方が適切でしょうか?


 ええと、ノエル?さん?ですか??…ああ、彼女のことですか。アナタ達、彼女をどうやって倒したのです?それにこんなに早い到着といい……そうですね、大変面白い」



 魔王はゆったりとした口調でそう語る。楽しくて堪らなさそうな笑みを浮かべながら。




「どうやって殺したか…か。今から実演してやっても良いが、身体が一つでは足りねえ…ぞ!!」




 勇者が魔王へと斬りかかる。魔王もそれを迎え撃つ。ヤンとセイは二人の闘いを黙って見ていた。今、割って入ったとしてもリトの足手纏いになるだけだと直感したからだ。








◇◇◇





 勝負は数十分続いた。先に倒れたのは、魔王だった。




「じゃあな、ノエルと黄泉で少しの逢瀬を楽しんでろ」



「それは…少し、嫌ですね…」



「何?」



 魔王が思っていたこととは違う事を言ったので、リトはかなり困惑した。



「…あんな…恐ろしい魔女…よく倒せましたね……その時点で、私の負けは決まっていたのでしょう…」



「おい、お前はノエルの上司じゃねえのかよ。どういうことだ」



「上司なんてものでは………」



 最後まで肝心な事は言わないまま、魔王は姿を泥へと変えた。




「なあリト、すげーな。魔王を一人で倒しちまうなんてよ!」



「リト、このまま街へ戻りますか?魔王城に入らないまま、魔王は倒してしまったみたいですが」



 このまま街へ戻っても良いとは思ったが、リトは前回見つけた人たちを助け出しておこうと思った。



「…ん?あぁそぉだな。少し魔王城に探し者が居るんだ。それを見つけてから帰る」




「探しもの…?何かは知りませんが、折角ですし着いていきますよ」


「おう!俺も着いていくぜ!元気が有り余っているしな!」





「場所の目星はついてる。行くか」




 そして、リト達は魔物が居なくなった魔王城へと侵入し、地下を目指した。



 地下の少し開けた所…前回彼らを見つけた場所よりは、かなり手前の方にある部屋で彼らを見つけた。




「よお!元気か?助けに来たぞー」



 リトの呑気な登場に驚いたのだろうか、そこにいた数十人の人たちは誰も何も発さなかった。



「あ、ええと…すみません、私達は魔王を倒すべくここへやってきました。そして、魔王を倒したので城の中を探索していたところなのです」



 慌ててセイが説明する。話を聞いていた人たちは少し眉を上げ、代表らしき人物が言葉を発した。




「あなた方は、勇者なのですか?」



「いや、勇者は俺だけだぞ。リトって名前だ、よろしくな!

 お前ら山奥の村の住人だろ?とりあえず、街へ連れて行くけどいいよな?」



「は、はい…ありがとうございます」


 ここから出て行けるというのに村人達の空気は重い。だがそれは気にする事ではなかった。



「ヤン、セイ、探し者は見つかった。帰るぞ」



「お、おう…?よく分かったな、人が居たなんて…」



 ヤンが少し変なものを見る目で見つめてくる。すこし傷つきはするが、まぁおかしいと思われても仕方のない行動をしたことは事実だ。



「ただの勘ってやつだな。まあ…生きてて良かったさ」



「うん?なんか言ったか?」



「何でもない。さあ出るぞ」






 魔王城を出た一行は、最寄りの街で村人達を保護してもらった。そしてその後、リト達はそれぞれ故郷へと帰ったのだった。






◇◇◇





 ここははじまりの国。魔王を討ち倒した勇者リトは、故郷であるこの国へと帰還した。ちなみに、転移魔法を用いて帰還している為大層なお出迎えとかは無い。悲しいものだ。


 家へ帰ったリトは久々に食べるオカンの料理に「うん、普通に美味い」などと言い、「アンタ!!普通にってどういう事だい!!!」とオカンにげんこつを喰らったそうな。





 その数日後、リトはハジマリ国王に呼び出されていた。




「勇者リトよ!よくぞ帰還した!今回のタイムは…七ヶ月か!うむうむ、良い感じじゃのう!流石勇者といったところじゃな、伸び代がデカい!


 さて勇者よ、そなたは魔王城に居た数十人の村人を助けたじゃろ?


 そなたに会いたいと言うておる人たちが居ての。その人たちと十分に話をしてくるのじゃ。そしたらまた時渡しようでは無いか!」





 ハジマリ国王がそう言い終わると、リトは城の中にある一室へと通された。中にはオカンと同じくらいの歳の男性と女性が居た。魔王城に居た人たちの中の者だ。




「勇者様、突然押しかけてしまい申し訳ございません。私達は山奥の小さな村に住む者です。半年以上前に魔物に誘拐され、あそこでずっと暮らしていました」



 女性に続いて男性も話す。女性の方は穏やかな顔をしているが、男性の表情は曇っている。



「ええと、私達を助けて下さったこと、本当にありがとうございます。実は、一つ聞きたいことがございまして…」



「何でも聞いてくれ。答えられない質問には答えられないと言う」



「…ノエルという名前の、銀髪の女の子が勇者様の前に現れませんでしたか?」




「……!」




 リトは目を見開いた。何故この人たちがノエルのことを知っているのだ、と。そして二人をじっと見つめた。すると、男性の方は顔つきが。女性の方は髪の色がノエルとそっくりだった。



「ノエルのこと、ご存知なのですね」



「おじさんとおばさんは、ノエルのお父さんとお母さんなのか?」



「…ええ。そうよ」



「おじさん、おばさん…ノエルの話を聞かせてもらえないか?」



 勇者の言葉に、ノエルの両親は顔を和らげる。そして、ノエルの幼少期のことや村が焼かれたこと、家族を人質にとられ勇者候補を殺していたことを知らされた。


 リトはこの時初めて、ノエルが魔王の手下ではあるが手下では無かったことを知った。通りで魔王の反応が思わしくない訳だ、とも思った。



「勇者様、ノエルは……」



 ノエルの母親が声を震わせて尋ねる。リトは答えた。



「ノエルは…俺が殺した」



 今度は俺の番だと言うかのように、リトはノエルとの思い出を語った。酒場で出会ったこと、長い間旅をしたこと、料理が上手い事、少し抜けているところもある所、そんなノエルのことが大好きだという事…


 話を聞いたノエルの父親が静かにリトへと伝えた。




「勇者様…ノエルのことをとても気にかけて下さったのですね。


 私たちは…村のみんなの為にと殺しを続けるノエルを見ることがとても辛かった。あの娘は…ただの村娘なんです。私たちと会う時はずっと笑顔でしたが、人を短期間で大勢殺したという罪の意識はずっとノエルの中にあったんです。あのまま続けていたら…いえ、もう遅かったのかも知れません。ノエルの心は完全に壊れていました。


 勇者様、きっとノエルは勇者様に感謝しています。私たちからも礼を言わせてください。


 …本当に、ありがとうございました」




 リトは黙って頷き、しんみりとした空気が辺りを漂った。


 その空気を破ったのはノエルの母親だった。



「勇者様、もし良ければですがこれを…最初に渡せたら良かったのですけど、遅くなってしまいすみません。村の皆からのお礼みたいなものです」



 そう言うと彼女は大きな紙袋をリトへ渡した。



「これは一体…?」



「火除のマントです。勇者様にお渡しするような大層な物ではなくてすみません」



 紙袋から出してみると、青い肌触りの良い生地で出来たマントがあった。無駄な装飾などは一切なく、利便性に特化した物だと言うことが伺えた。



「…いや。一眼見るだけでかなりの効能があると分かった、これはとても良い物だな」



「はい。私たちの村周辺では、魔力が大気中に溶け込んでいるので、それを利用してこういった防具や武器を作ったりしているのです。

 ただ、それを街へと出すと悪用される恐れがあるので、売りには出さずに村を守ってくれる守衛さん専用に作っています」



 魔力を料理に使うこともあるのよ、とも言うノエル母。その話を詳しく聞こうとした所、突然部屋の扉がバァンと音を立てて開き、思わぬ乱入者が現れた。




「アンタ!!!!ハジマリに会う前に部屋を片付けておけとアタシは言ったよね?!!はい分かりましたと言ったのは誰だい!!!全く片付けていなかったじゃないか!!!!!」



「お、オカン…!今お客さん来てっから…!!ゴメンって、後で部屋は片付けるよ」



 オカンはリトがノエルの両親と話をしている最中であったのにズカズカと割り込み、リトの耳を引っ張った。



「アンタァ!!!それに加えて、今日の晩御飯の作り置きを盗み食いしたね?!!」



「いてててて!!ゴメンって!!!お腹が空いてダメだったんだよ!!!」




 しんみりとした空気感も、オカンの手に掛かればコメディとなる。ノエルの両親は突然始まったお笑いショー(?)にドン引きしていたが、オカンの顔をじっくりと見た二人は驚愕の表情を作った。




「リーナ…?貴女リーナじゃないの?」



「…ん?ああ…


 …こりゃまた、珍しいお客さんと話してたんだね、リト」



 リトの母親…オカンの名前は確かにリーナである。なぜノエルの両親がオカンの名前を…?リトは訳が分からなかった。




「オカン、どういうことなんだ?」




「あー…アタシはねぇ、この二人と同じ村の出身なのさ。ちょっとした知り合いってことだね!」




 オカンが何ともなさげにガハハと笑う。それをノエル母が続けた。



「リーナは…勇者様のお母様は、およそ二十年程前に村を出て行ったのです。

 それまで私達はずっと一緒に居ましたから…リーナが居なくなって、当時は本当に辛かった。

 ですが…そうですか。勇者様の母親がリーナ…何となく、理由がわかる気がしますね」




「なあオカン…どおして村を出て行ったんだ?」




 リトはノエルの両親、加えてリトも気になっていることを聞いた。




「ん?んー…


 ある日、夢を見てね。村で産まれた私の息子が何故か勇者に選ばれるんだよ。何でうちの子が?って思ったよ。勇者と言っても人身供養みたいなもんさ、息子は魔物に何度も殺され続けた。何度も、に違和感があるだろ?死ぬ度に聖職者から息を吹き返させられるのさ。

 バカみたいな話さ。魔王を倒した後、息子は自害した。最期の言葉は確か…『人を道具みたいに扱うこの世界なんて、滅ぼされたら良かったのに』だったかね。


 あんなにハッキリと見た夢は一度きりだったよ。あの日、アタシは成人の儀を終えたところだった。数日後には何処かへ嫁いでいたのだろうさ。確証も何も無かったのに、ここから出なければと思ったね。村で子供を産まなければ、悪夢は実現しない、ってね。


 まあ、アンタが勇者に選ばれることは変わらなかったけど、生きて帰ってきてくれて本当に良かったと思ってるよ」




 オカンの独白はリトの心に響くものがあった。リト自身は一度しかまだ死んでいないが、炎に焼かれ、意識を失うまでの間は並の人では耐えられないだろう。それを何度も何度も繰り返すのだ。心がおかしくなっていても、おかしくない。



 リーナの言う通り、彼女の息子が勇者であったことやリトの表情から、ノエルの両親も色々と察したようであった。




「リーナ。勇者様…貴女の息子さんは、魔王城に攫われた村のみんなを助けてくれたのよ。あのままだと私達、全滅していたところだったの。

 …リーナ、勇者様を育ててくれてありがとう。また手紙でも送ってちょうだい。連絡の一つもよこしてくれないのはとても寂しいわ。


 勇者様、この度は本当にありがとうございました。村一同、勇者様にはとても感謝しております。村の復興が終わり次第、一度村へ来て下さい。歓待致します」



 ノエル母がオカンとリトへ再び礼を言った後、ノエル両親は「そろそろ時間ですので、失礼します。本当にありがとうございました」と部屋を去った。オカンとリトも家へと帰ることにした。



 夕陽が城下町を染める帰り道、リトはオカンに気になっていたことを尋ねた。オカンは何ともなしに答えてくれた。



「なあオカン、オカンの料理って自己流なのか?」



「いや、あれは村でアタシがアンタくらいの歳の頃に教えてもらったものを自己流にアレンジしてんのさ」



「…ふーん。どんなアレンジなんだ?」



「料理を作る際に、魔力を流し込むのさ。

 村では大気中の魔力を使ってたんだけど、ここらでは魔力なんて溢れてないからね。魔力を流し込みながら、おいしくなーれって唱えるのさ」



「…そっか。オカンの料理、味が濃かったぞ」



「カカカ!これからもずっと食べる料理の味だよ!!濃かったんじゃない、濃いんだよ!」



「…そうだな」





 茜色の町に、二つの影が並んで歩く。

 一つは、昔からの隠し事を救われた明るい影。もう一つは…















「ふぉふぉふぉ、勇者リトよ!よくぞ来おったのう!

 この世に未練はもう無いかの?では、さっそく次へと行こうではないか!」
















これまでのデータを、セーブしますか?


→はい

 いいえ


勇者リト レベル74 セーブが完了しました




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