ニューデータ:勇者リト レベル1
ウリィーッス!2作目です。
「はぁ〜、メシが不味い…帰りたい…」
よお。俺はリトって言うんだ。色々と訳あって今は勇者をやっている。
よくある絵巻物の勇者っつーのは、ガギーンってすんげーパワーで魔王を倒したりして、可愛いお姫様と結婚したりして、全男子の憧れっつーやつだろ?あれ、ちげーから。実際の勇者ってのは、日々魔物を狩りながら装備を整え、レベルを上げて少しずつ魔王城の方へ近づいていくんだ。
もう、それの辛いこと辛いこと…魔物は強いし、レベルは全然上がらないし……途中の町はメシがクソ不味いし…なんだよ、インペリアル子豚の唐揚げって…せめてトンカツにしろ……ん?なんだアンタ。俺が勇者に向いてない、ってか?それもあるかもな。
そもそも俺が勇者に選ばれたのは、たまたま俺が『はじまりの国』に住んでいて、たまたま最近魔王が復活したからだしな。歴代の勇者は全員『はじまりの国』出身だそうだ。でもよぉ、俺以外にもっとまともな奴居ただろ…俺、ただの町人Aみたいな奴だぞ??チクショ〜、オカンが王様に「うちの馬鹿息子をほっぽり出したいので勇者にでも任命して下さい」とでも言ったか…??
『はじまりの国』から少し離れた街の一軒の酒場の中、勇者リトは「ちぐしょお、ちぐしょぉお」と泣きながら一人寂しく不味い料理をつまんでいた。リトが魔王を倒す旅に出てから、およそ1ヶ月が経過している。『はじまりの国』の王様…ハジマリ国王が言うには「一ヶ月もあれば魔王なんてちょちょいのちょーいじゃぞ?^^;」とのことだ。
ちなみに一週間に一度、リトはハジマリ国王から手紙を貰っている。手紙の内容はほとんどが「ワシなら魔王は小指で倒せるんじゃが…?(^^;;」と、煽りの文章が綴られているらしい。ならアンタが魔王を倒しに行けよ…リトは毎回、手紙を読む度にそう思うのだった。
「あ、あの……勇者様ですか?」
ふと、白銀の髪を持つ少女が、泣きながらクソ不味いメシを食べているリトに話しかけてきた。
「んぅ〜?なんだ嬢ちゃん、金なら持ってねえぞ」
リトが勇者であることは有名だ。ハジマリ国王はなんだかよく知らない力を使い「勇者が旅に出るからよろしくの〜」と各方面に伝えているらしい。
なので、どこかの街へ行けば「勇者様、これを使ってください!」と応援され、食いっぱぐれることは無いのだが……。それと同じ分だけ「勇者様、ひと時の夢を見せてくださいまし?」と誘惑され、気がつけば有り金を全て持って行かれる(リト談)のだ。痛い目を3回ほど見たリトは、女に話しかけられたら「金はねぇぞ」と追い返すようにしていた。
「い、いえ…!あのぅ、私…ノエルって言います、そのぅ……」
「ノエルとやら、話したいことがあるならさっさと話しな。日が暮れちまう…ってもう暮れてたか!はっはっはっ」
リトの一人ボケツッコミに多少引いていたノエルは、少し息を吸いこんでから覚悟を決めたかのように言った。
「勇者様!私を旅に同行させてください!」
「却下だ」
「そ、そんな…!」
「女子供を魔王を倒す旅へつれていく必要はねぇ」
「わ、私なら勇者様を助けることができます!だから連れて行って下さい!!」
「一体何ができるって言うんだ?悪いが、俺より強そうには見えねぇぞ」
ちなみに、リトの本心は(ちぐしょおおお!!猫の手でも借りてぇところだが、流石にこのノエルって奴の手は借りることができそうにねぇ!絶対この子、魔物とか見るだけでアウトなタイプだろ!)と言ったところだ。
「あ、あう……」
「ほらな。何もできねぇなら旅に着いていくとか言うんじゃねえ。旅っつうのは、故郷を二度と見ることができないかもしれねぇんだからな。
話は終わりだ、帰ってくれ。俺ぁこのクソ不味いメシを処理しないとダメなんだ」
ノエルは、リトの言葉に一瞬目の光を失ったかのように見えた気もしたがぐっと眉を上げ、強い意志をした眼差しでリトを射抜いた。
「……私、料理が出来ます」
「なんだと?」
「これから、旅に連れて行ってくれるのなら毎日勇者様に料理をご馳走します。不味いなんて言わせません。どうか連れて行ってください」
「…なら、明日の朝、この隣の宿屋にメシを持ってこい。それで考えてやる。
(うまいメシが食えるのか…?ううー、仲間にしたい…でもオカンが怒るよなぁ…『アンタ!女の子を旅に連れていったのかい?!とんだ甲斐性なしだねぇ!!いくら家に居ても穀潰しだからと言って、旅に出すんじゃなかったよ!!』とか言って殴られそうだよなぁ…オカンの拳、チョー痛いんだよなぁ…)」
内心超弱気のリトの言葉に対し、ノエルはぱぁっと表情を明るくした。
「はい!明日伺いますね!!…あ、食べられないものとかはございますか?勇者様?」
「リトでいい。食べられないものはクソ不味いものだ」
「分かりました、勇者様!では、また明日」
◇◇◇
次の日の朝、こんこん、とリトの泊まっている部屋にノックが響いた。ノエルが来たのだろう。
「おはようございます、勇者様。ええと…ぱぱっと作ったものです。毎日これくらいの料理を作れます、食べてみてください」
ノエルが持っていた鍋の蓋を開けると、ふわっと甘い出汁の良い匂いと蒸気が部屋に広がった。
「ノエル、これはなんだ?
(めっちゃいい匂いがするんだが?!!!それに、オカンの料理でもこんなに美味しそうな見た目のやつは見たことが無いぞ!!??)」
早く食べたいと言う気持ちを落ち着かせながら、リトはノエルをテーブルに着かせた。
「これはインペリアル子豚の角煮です。付け合わせに白コメも持ってきました、一緒に食べると美味しいんですよ。ぜひ食べて下さい」
いつの間にかテーブルの上に出されていた白コメと角煮に、リトは(用意が早いな〜)などと考えながらも「いただきます」と手を伸ばした。
突如、リトの視界が何か透明なもので覆われた。目から体液が流れ出し、心臓が恐ろしい速度で脈を打ち、脳は「これはいけない」と警鐘を鳴らしている。いま、リトは自分がどんな顔をしているのか分かっていない。だが一つ、分かっていることがあった。
ノエルの料理は、めっちゃ美味い。
「ノエルゥゥゥウ"…これ…めっぢゃ美味いよ……オカンの味だぁぁ…いや、オカンの味以上だよ…ノエル、俺は勇者ではあるけどよぉ、ノエルのことを守れねぇかもしれねぇけどよぉ、旅についでぎでぐれぇぇえ"〜!!頼むぅゔがらぁあ"ぁあ!!!」
「……!?そ、そこまで喜んでいただけるのですか…??」
リトの言い様にノエルはかなり驚いた顔をしていたことをリトは知らない。
そうして、ノエルは勇者リトの旅に『炊飯係』として着いていくことが決定した。
◇◇◇
勇者リトがノエルを仲間にしてから数ヶ月が経った。レベルはまだまだ上がらないが、少しずつ魔王城の方向へと歩みを進めていた。今はちょうど昼食を作っている最中らしい。
「なあノエル、ずっと思ってたんだけどよぉ。料理で火を起こすのは大変じゃねえのか?
俺ぁあんまり料理とかしねぇから口出しするのもどうかと思ってたけどよぉ、毎日毎日料理をご馳走してもらってんだ、何か手伝えることはねぇか?」
基本的に、料理の食材はリトが獲ったものを使っているが、調理は全てノエルに任せていた。
大抵は魔物を狩った後、日が暮れる前に街へ戻り宿屋に泊まるので宿屋の調理場をノエルが借りて料理を作っているのだが、時々野宿となってしまうことがあったのだ。
「いえ、大丈夫ですよリト様!私、実は火魔法を少しだけ使うことが出来るんです。鍋を温めるくらいしか出来ないんですけれどね」
この世界では魔力を持つ人間が大半だ。大抵の人が一属性くらいの魔法を使うことができる。リトは珍しくも火、水、土の3つの属性の魔法適性があるらしい。ハジマリ国王が手紙にそう記していた。俺ですら適性なんて知らないのに、なんで知ってるんだよ。とリトは手紙を見ながらボヤいたらしい。
「そぉか。水が必要になったら言ってくれ。さっきレベルアップで水の魔法を覚えた」
「ありがとうございます、リト様。では、ヤカンに水を入れてもらえますか?お茶を沸かしますので!」
ノエルからヤカンを手渡されたリトは、ヤカンの内部に水を満たすイメージを浮かべながら魔法を唱えた。
「…器に恵を満せ!ウォータ!」
魔法は詠唱すればするほど力強く、そして成功率が上がる。魔法を無詠唱で発生させることはとても難しく、それができる人は大魔法使いと呼ばれる人たちの中でも数少ないトップエリートなのだそうだ。役職:勇者のリトには関係のない話だが。
ヤカンいっぱいに水を満たしたリトは、それをノエルに手渡した。
ノエルが作った料理を堪能した後、お茶を啜りながらリトは(あ〜、メシが美味いって最高だな〜)と呑気に考えていたのだった。
◇◇◇
さて、勇者リトが旅に出てから一年と一ヶ月が過ぎようとしていた。相変わらずハジマリ国王から「ワシなら一年あれば魔王を倒した後に魔王になれるんじゃが(^^;; 魔王になった後、神を撃ち落とす余裕まであるんじゃが(^^;;」などとふざけた手紙を貰ったりもしているが、リト達は魔王城まであと半分と言ったところに来ていた。
勇者リト御一行は新たに武闘家のヤン、僧侶のセイを仲間に加え、リト、ノエル、ヤン、セイの四人で旅をしていた。
「ふー、今日もノエルのメシは美味い!!!」
リトが夕食を食べ終わった後、僧侶のセイが話しかけてきた。
「リト、ならば私達にもノエルさんの料理を分けてくださいよ」
「ダメだセイ!!ノエルの料理は誰にも渡さん!!!!てめぇらは食堂のサンドウィッチでも充分美味しいって言ってただろ!俺ぁノエルの料理とオカンの料理以外食えねぇんだよ!」
「リトが食べることができる料理…一体、あなたのお母さんとノエルさん、どんな共通点があるのですかね…」
「メシが美味い!」
「そんなことは聞いていません」
数ヶ月前にとある街で仲間になった武闘家のヤンも僧侶のセイも、ノエルの料理は口にしたことがなかった。ノエルが料理を作っている側にはいつもリトが居て、二人で他愛もない会話を続けているのだ。そこを邪魔するのも野暮だなあとサンドウィッチを齧りながらヤンと話していると、大体気がつけばリトもノエルも食事を終えて会話に混ざっているのだ。
リトとセイがそんなやりとりをしている中、武闘家のヤンが話に加わってきた。
「なあリト。…ノエルちゃん、今朝からなんか様子がおかしくないか?なんかずっと思い詰めた顔しててよ、さっき声をかけようとしたらフラッと宿屋からでてっちまったんだよ。いつもなら今の時間は俺たちと今後の予定について話してる頃だろ?」
「ノエルが…?分かった。ヤン、サンキュな。ノエルに少し話を聞いてくるわ」
「俺もついてくぜ、ノエルちゃんは仲間だからな!」
「私も着いて行きますよ、リト。なにやら良くない予感がしますので」
三人で宿屋を出て、ノエルを探すと彼女はすぐに見つかった。宿屋を出て少し歩いた先、少し開けたところー。ノエルが出て行ったとヤンに聞いたにしては追いつくのに早すぎる。まるでリト達を待っていたかのよ…
途端、リト以外の二人が吹き飛んだ。
宿屋の壁に強く打ち付けられた二人は「うう…」と唸っている。リトの目の前には、二人を吹き飛ばした張本人がいた。
「な…!?ノエル??どうしたってんだ?」
リトの問いかけに、ノエルは悲しそうな顔をして微笑んだ。
「………。勇者様、私はずっと勇者様のことを騙していました…。私はノエル、魔女のノエルです。
私は…魔王様より、勇者であるあなた達を処分するように言い渡されていました。
リト様、あなたはとても面白い人でした…ですが、タイムリミットが来てしまったようです。………これ以上、言葉を交わすことはできません。
それでは勇者様、耐え抜いて下さいね」
ノエルはそう言い終わるのと同時にモソモソと小声で何かを唱えた。するとノエルとリトは立方体の透明な箱のようなモノの中に囲われた。刹那、間髪無く攻めてくる火の玉の嵐。リトは盾でそれを防ぎながら、ノエルへと叫んだ。
「ノエル!俺の旅に着いてきたがったのも、俺を最初から殺すつもりだったからなのか?!」
ノエルは俯いて何も返さない。ただ代わりに火の玉が飛んでくる。
「…っ、くそっ!!こんにゃろ!ウォータ!!」
火の玉を弾きながらも、リトはどうすべきか考えた。とりあえずノエルを無力化させるしか無い。リトは水魔法を唱え、まずは火の玉を無力化させようとした。しかし何がいけなかったのだろう、何も起こらなかったのだ。
「…?!ウォータ!ウォータ!」
再度呪文を唱えてみるも何も起こらない。火の玉がリトの身体を焦がす。
「…っ!あ"ぁっ……!!」
ノエルはリトを殺す気だ。そうリトが理解した瞬間、リトはノエルを救うことを知らず知らずのうちに諦めた。意識も朦朧とする中、腰につけている剣を抜き、焦げる身体に喝を入れながらもリトはノエルの方へと駆け出した。
「うぉぉぉぉぉぁぁあああっ!!!」
一撃、ノエルの身体に剣を突き刺す。
ノエルの身体が大きく揺れる。
火の玉の猛攻が消えた。
リトとノエルを囲っていた立方体の箱がきえた。
ノエルが倒れた。出血量が夥しい。
彼女はきっと、助からない。
リトはヤンとセイの息があることを確認した後、ノエルの方へ近づいた。
「…ノエル」
「………リト、さ、ま。私を、救ってくださって、ありがとう、ございます…」
「ノエル?」
「リトさま…リトさまに、祝福を…」
ノエルは定まらない視界と、もう動かすこともできないであろう身体を動かし、リトへと魔法を掛けた。
「ノエル、この魔法は何だ?」
自身の身体がキラキラと輝く中、リトはそう尋ねるも彼女が応えることは無かった。ノエルは幸せそうに目を閉じ、「お父様…お母様………どうか…」と呟いた後、深い眠りについたのだった。ノエルの亡骸はまるで分解が恐ろしい速度で進むかのように、ぱらぱらと消えていった。
「…っう!おい!リト!!ノエルちゃんは?!」
「…一体、何があったのです」
ノエルとやりとりをしているうちに、ヤンとセイが起き上がったらしい。二人はリトの方へ歩みを進め、状況を尋ねた。
「……ノエルは、魔王の手先らしい。
俺は、ノエルを、剣で、斬りつけて、ころした。
ノエルは、俺に、感謝、していた。
ど、うして……」
「リト、もういい。何も話すな。明日詳しい話を聞かせろ。ノエルちゃんに関しての話をだ」
発狂寸前のリトを宥め「痛ててて」と言いながら宿へと連れ帰ったヤンとは違い、セイはノエルの亡骸と思わしき塵を観察していた。
「…(死体の分解速度を最大まで引き上げる魔法…?いや、魔物を倒した時と同じような仕組みか…?ノエルさんは魔物…な訳は無いですね。
それに、気絶する前に見たあれは恐らく結界魔法……勇者リトが吐かずに唯一食べることができる料理…ノエルさんに、早めにレシピを聞いておくべきでしたね…)」
セイはあともう少しのところまでウンウンと唸っていたが、まともな答えも出そうに無かった為、不謹慎ではあるがノエルの塵を一瓶分だけ集めて部屋へと戻った。
◇◇◇
(俺が…ノエルを殺した……俺がノエルを殺した…俺がノエルを殺した…仕方がなかったんだ…俺がノエルを殺した……でも仕方がなかった…殺さないと殺されると思った……でも…ノエルは俺に感謝していた…でも俺はノエルを殺したんだ…俺は.…俺は俺は俺は…)
同日深夜、リトは宿屋の自室で蹲り、自問自答を繰り返していた。これまで魔物を斬ったことこそ数え切れない程あったリトだが、ニンゲンを、しかも仲間を斬ることなど考えたこともなかった。対策をしていなかった分、彼の精神的ダメージは大きい。HPは言うほど減っていなくても、彼は瀕死に近しい状態だった。
コンコン、とノックが響き、リトが「入らないでくれ」と言う前にドアが開けられた。
「失礼しますよ。リト」
「セイ、入ってこないでくれ。勝手に開けるな。帰ってくれ」
ズカズカと部屋に入ってきたのはセイだった。彼は帰る気はまだ無いらしい。
「あなたに渡し物です。リト。あなたが発狂している間に冷静な私が集めておきました。きっと次の日には何も無くなっていたでしょうね。
ノエルさんの塵です。リト、これはあなたが持つべきものです。ノエルさんの死を、あなたの感じている罪を全て背負って生きなさい。
詳しい話は明日聞きますので、それまでにそのしけたツラを直しておくのですよ」
セイはそう言い終わると、リトの方は小瓶を投げた。それをキャッチしたリトが小瓶の中にノエルの塵があると認識し、「セイ!!テメーノエルを投げたな!?」と激昂する頃にはセイの姿はリトの部屋に無かった。
「…ノエル。魔王の命令だかなんだか知らねぇが。俺はノエルの作ってくれるメシが大好きだ。ノエルのことも…大好き、なんだな。こんなことになってから自覚するたぁ…俺は、つくづくダメなやつだ。
でもよ、ノエル。俺ぁ勇者だ。勇者って肩書きを国王から貰っちまった時点で勇者でしかないんだ。ノエルは悲しむかもしれんが、魔王は倒させてもらう。すまないな、あの世で魔王と一緒にしてやるって言ったら喜んでくれるか?魔王の手先ってことは、魔王に憧れてたりするんだろうな」
リトはぼそぼそと小瓶に話しかけ続けた。
夢か現か分からない状態の中、いつしか朝が来ていた。
◇◇◇
「おはよう、リト、セイ。良く眠れ…はしないよな」
「おはようございます、ヤン、リト」
「…おはよう。…二人とも。昨日は…いや、今日か…?まぁなんだ、その…ありがとう」
リトの言葉にヤンは、にぱっと笑った。
「その調子だと、元気はまぁ戻ったっぽいな!それで、昨日は何があったんだ?」
リトは昨日起こった事を細かく話した。
「……ノエルちゃんが魔女…か。リトが掛けられた魔法ってのは大丈夫なのか?呪い…だったりしないよな?」
「ステータスに問題は無さそう…いえ、問題大ありですね。リト、あなた昨日までレベル27でしたよね?レベルが…40になっています」
「は…?」
リトの身体は元々レベルが上がりにくい体質だった。そのため苦労も多かったので、一晩でこのレベルの上がり様は驚異的…いや、奇妙な程だった。
一般的には、レベルアップのための経験値は強い魔物を倒す程に多く貰える。つまり…
「うーん、ノエルちゃんは恐ろしく強かったのか…?」
ヤンの言葉にリトもセイも黙りこむ。ノエルについて答えが出ないまま、時間が過ぎていった。
すると「くぅー」と誰かのお腹がなったみたいだ。
「す、すまない…私だ」
「セイ…。っしゃ!唸ってるだけじゃなんにもならねぇ、昼餉を食べるとするか!リト、リトも食えねぇかもしれんが腹の中になんか入れとけ!まぁ無理なら無理で仕方ないがな!」
赤面するセイを見て表情を和らげたヤンは「昨日の余り物だけどな」と言いながらもサンドウィッチをテーブルの上に置いた。
因みにサンドウィッチとは、砂漠地帯に出現する魔女を模したサンドイッチのことである。魔女の三角帽子みたくカットされたパンにインペリアル子豚のハム、サンディーレタス、チーズを挟んだそれは携帯食として、とても優秀なのだ。
両手で一つのサンドウィッチを持ち、はむはむと齧っているセイ、一つずつ両手にサンドウィッチを持ち右手、左手と交互にサンドウィッチを齧るヤンの様子をじっと見ていたリトは、ゆっくりとサンドウィッチに手を伸ばした。
「クソ不味…く、ない…?」
普段、サンドウィッチを齧ってもすぐに顔を顰めてトイレに駆け込むリトのその言葉に、ヤンとセイの二人、そしてリト自身もとても驚いている様だった。
◇◇◇
ノエルと闘ってから数ヶ月後、リト達は魔王を討ち倒した。魔王との戦いは熾烈を極め、ギリギリの末になんとか倒したと言ったところだ。
リト達は簡単な転移魔法を使い、魔王城から脱出、そして近くの街へと帰り魔王の死を伝えた。
◇◇◇
時は進み、場所は『はじまりの国』。ヤン、セイと別れ祖国へ帰ったリトはハジマリ国王から礼を言われていた。
「勇者リトよ、よくぞ戻った!んー…一年と半年かぁ〜…まだまだじゃのう(^_^;)
まあええわい!なんか望みはあるかの?ワシならなんでも叶えれるんじゃが(^^;;」
なんだかクッソ腹立つメタい国王だな…と思っても言わないのがお約束。言ったが最後、いくら勇者でも命の保証はせんぞ?(^^;;とのこと。
「国王様、俺に望みって望みはねぇんだが…」
「あるじゃろ?言うてみ?叶えるぞ?(^_^;)」
「……。ノエルの作った料理が食べたい。
俺は…」
「詳しく話す必要は無いぞ、全て見えておったからのう。うむ、叶えよう。明日またここに来るのじゃよ?少し準備するからの〜」
「お、おお…?」
国王の軽いノリに「???」と思いながらも、次の日国王に「リト様〜作っておきました!食べてください(^^;;」とか言われたら大変不敬ではあるが殺そうと考えたリトであった。
◇◇◇
翌日、リトが国王と謁見した場所へ赴くとそこには杖を持った国王が一人で待っていた。
「ふぉふぉふぉ、よく来たな勇者リトよ!おぬしの返答など要らん、時間も無い(気がする)から手短に話させてもらうぞい!
今からお主は過去の世界へと送り出されるのじゃ!なーに心配はいらん、お主のステータスは変わらんままで送ってやるからの!つまりよくあるループモノってやつじゃよ!そこからはお主の好きにしたら良いぞい!ただ、魔王を倒すことは絶対じゃ。
また向こうのワシがお主の面倒はみるからの〜、それじゃあの〜!」
「えっ…はぁ…?!」
言いたいことを言うだけ言い、ハジマリ国王は呪文を唱えた。リトの身体は青い光を帯び、ふわっとどこかへ吸い込まれるかのように消えていった。そして謁見の間には国王一人だけとなった。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。何回時渡の魔法を使えば、ワシの望むエンドを見れるかの〜。
楽しみじゃのう…ずっとこの時を待っていたわい」
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