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転々  作者: 待って
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中立都市

召喚が行われたのは中立都市。独立都市であり、召喚者達がこれから暮らす都市だ。

都市運営は生産ギルド、商売ギルド、闘技ギルドのトップが担う。


ギルドは中立都市特有の組織であり、中立都市の住民は必ず何れかのギルドに所属し、完全に能力によって階級が決まると言う特殊な都市だ。


勿論、ギルド内部は更に細かく分けられるが。



タカは商売ギルドに入る事となった。

『学習定着』は突き詰めれば戦闘において万能職に成り得るし、生産ギルドの研究部でも深く活躍出来るだろう。

けれど、戦闘特化のクラスメイトには及ばないだろうし、研究するにしても実戦力には繋がり難い。よって、商売ギルド()()()に入る事になったのだ。


(闘技ギルドには暗殺部も有りますし、生産ギルドには研究部(人体実験)(禁忌)とかも有りますね)

(うげ。僕はそんな感じの所に入るの?)

(はい。しかし、表向きには商人になります)


「あんた達が、英雄の1人でウチの諜報部に入りたいって?」

「「はい」」

タカの他に印象操作の能力を持つよし……アヤさん(全員下の名前で呼ぶ事になった)が諜報部に入る。


「ふ~ん?召喚されて3日でどうやって諜報部について知ったんだろうねえ」

「「……」」

「おまえさんかい」

商売ギルドの長ははっきりとタカを見て言った。


(アヤ様がこちらへ視線を送ったので勘づかれたようです。タカ様は指摘された際の動揺が顔に現れております)


「はぁ。まだまだ未熟なガキどもだね。だが、話を聞く限りじゃ将来性が有る。何より英雄様に強くは出れない。キール、ジェシー、世話しな」

「嬢ちゃんのかい?」

「キール、バカ言うんじゃないわよ。宜しくね、アヤ・ヨシカワ」

「はいはい。宜しく、タカ・ナカミチ」

「「宜しくお願いします」」


女には女の、男には男のやり方と言うモノが有ると言う事で、タカはキールと言う男性に師事する事になった。

(キール様は逆に言えば英雄達への諜報を行う立場とも言えますので言動には注意してください)

(やっぱり思うのだけど、僕が諜報部に入る意味って有る?ナビって、何でも知ってるんだよね)

(……事実と一般に流れる噂は異なります。また、敢えて間違った情報を渡す事も情報戦と言えます。事実だけでは行動を誤りますよ)



元々タカは、学校では黙々と勉強するタイプであった。成績は上の下、運動部にも入っていた。ただ、愛想が無く地味な顔立ちで特にモテた事は無かったが。


キール曰く、

「化粧映えのする顔」

らしい。特徴が無いと言えば無いし、男でも違和感の無い化粧でガラリと印象が変わる。


「だがまず、表情と声だな。そもそも商売人としての顔が無い」

「はい」

そうそう変えられるモノではない……が『学習定着』を持つタカには関係無かった。

召喚され魂、精神と肉体が馴染みきって無かったのは幸いか災いか。


1週間もすれば笑顔な無表情が板についた。

「自身を画面……俯瞰的に見て、操る感覚ですかね?」

「お、おう……。タカ……お前すげぇな」


顔に笑みが浮かんでいるが、そこに表情が感じられない事は中々に圧がある。

タカは順調に学習していった。









夕食。

召喚されたばかりと言う事で、夕食時は集まって取っている。屋敷と金銭は各国から借金の形で手に入れた。魔物を倒した素材や加工品を売って返していく予定である。

利子は高めだが期限はないし、言えば更に金を積んでもらえる。度が過ぎれば借金奴隷になる危険もあるが堅実に距離を保った結果だった。


「……ヒトシ、彼女は?」

「……奴隷。ちゃ、ちゃんと自前で買ったぞ」

「はぁ……。捨て値で売られていたって。私が治したけど欠損が酷かったわ。まあ、個人的には治癒の訓練になるし問題はないわよ」

「じゃあ、俺とかが買っても……」

「ええ、治癒は任せて」

「薬が必要なら僕に言ってね。奴隷って言うのもこっちの世界の常識確保や単純作業に有用だし。僕も薬草採集用に考えてる」

奴隷への忌避感はあまり無いようだ。実際に清潔にして、きちんと生活を保証すれば秘密厳守な従業員である。


「では、屋敷の管理(清掃等)に2、3人買うのはどうですか?」

異世界に来ても、掃除は必要だった。信用上、国が雇った人を追い出した結果1週間の成果が部屋の隅に現れ始めていた。


「……賛成」

「うん」

「必要かな」

「なら、明日の夕方までに候補を見繕って来るからショウさん、タカさん、アヤさん、商人的なアドバイスを下さい」

「はい」

「はい、先生」

ショウさんは、英雄達の金庫番。佐藤先生は鑑定能力が有る。人の情報を覗くのはあまり好きではなさそうだが、必要なら躊躇しない。



英雄として呼ばれた彼らは、一人での行動を恐れ、集団心理、同郷意識、そして同居する中で表面上は単純に仲良く。根深い共依存が生まれていた。

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