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転々  作者: 待って
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23……24かな?

23……24かな?

もう、何度目かの生。


これだけ生き死にを繰り返しても、淡々とどれだけ生きられるのか考える私は、なるほど『継承転生』と言う能力を持つに相応しい人間性と言う訳だ。



この度、私が産まれた家は子爵位を持つ貴族だった。

幸い、この何色混ざったか分からない黒い髪や目は特に問題にならなかった。基本は今世の髪、目の色なので別に汚くはないが黒に近い色になってしまうのだ。

今世の母上は綺麗な緑の髪なので、私の髪も目も光の加減でチロチロと緑が反射する黒髪。父上から受け継いだ銀、を帯びた黒目。


顔の造形は整っているが、特徴の無い中途半端な顔だ。いつぞやの生では暗殺者として誉められた。嬉しくないが。

今世は、父上に似て若干つり目の埋没顔である。


貴族ながらに、優しい父と母のお陰で3男としてのびのびと平凡に過ごしている。


固有能力『継承転生』

異能力『偽擬適応』

特殊技能『自己解析』

祝福『種族限界破棄』

加護『恵厄豊穣』


……平凡に過ごそうとしている貴族男子だ。


様々な世界を渡り産まれたせいで、複数のチート(世界外能力)を持っているが、やっぱりここはここまで育ててくれた家族の為に使いたい。


家はリーン子爵で、フォレスタ公爵家の分家としてフォレスタ領都の領主代理の筆頭文官を代々続けている。

領都、の名の通り魔物から身を守る為に都市には高い壁や結界が必要で、その都市自体が少ない。


領都を持っているのはこのエレメート王家、3公爵家、8侯爵家しかない。

新たに開拓を任されて居るのが、2つの辺境伯家。

伯爵位の者の多くは、宮廷に仕え。

子爵、男爵は高位貴族に仕えている。


リーン家は、子爵家の中ではトップクラスの家である。

本来の領主、公爵閣下は基本的に王都で暮らす。ので、領主代理として公爵家の身内がつく。領都でトップの領主代理の側近がリーン家なのである。


3男の私は、筆頭でなくとも文官として暮らすのだろう。

問題は、『恵厄豊穣』の加護である。これは土地を豊かにし恵みをもたらすが、代わりに強い魔物も寄ってくる。倒せば魔物も肉に毛皮にと有用なのだけれども。


「いっそ、魔物討伐隊に入った方が……」

「ギルはマ隊(魔物討伐隊)に入りたいのかい?」

「あ、ヴィロン兄上」

リーン家次男のヴィロン・リーンは文官を目指している。普通は、親や家の職業かそれに近い仕事につくものだ。


「マ隊は大変だ。怖ーい魔物と戦うんだよ?」

「えっと、兄上達を魔物から守りたい、です」

一応私、ギルバート・リーンは5才だったりする。

文官としては2人の兄が居るし、私が武官職に就いても問題はない筈である。


「じゃあ、父上にお伺いを立ててみようか」






「では、武術の先生を手配しよう」

「!ありがとうございます、父上」

思ったよりあっさりと決まったが、父上が私や自身の身体を見たのに気が付いた。


残念ながら、代々文官の家で父上や兄上達はヒョロい。まだ5才の私だが、成長の方向性が見えている。父上は実際にやってみれば音を上げるだろうと考えたのかもしれない。



尚、『偽擬適応』と言う異能力は偽り擬態し、周囲に合わせると言う能力だ。今は、ギルバート・リーン5才として合った体格、力加減をしているが、『継承転生』によって蓄積された力や技術がある。先生からは、この世界の武術を学びたい所である。



「まずは、型の練習から行きましょう」

「はいっ」

柔軟体操や準備運動がない世界は多い。もっとも、型の練習と言いつつこの先生はゆっくり、正解にさせられたのですぐに変な所がプルプルし始めた。


「む、大丈夫ですか?顔に出ないので気付くのが遅れましたね。一度休憩しましょう」

「……はい」

プルプルは身体の反応であり、継承した筋力とは関係ない。つまり、『偽擬適応』による偽りかつギルバートとしての正しい反応である。意志で抑え込めるとは言え、私はギルバート・リーンと言う身を手放したくはない。


……異質な力は何度も私から家族を奪う。







3年をかけて、家族に魔剣士としての才能が有ると認めさせた私は10才の時に騎士養成所に入った。家を継げない(貧乏)子息の救済、対魔物の戦力を育てる場として設立されている。


入学条件は9才以上、学費は公爵家と実戦で得る魔物素材で賄われ、25才で退学、騎士団入団試験合格が卒業条件だ。


平均より2年早い16才で卒業、つまり騎士団に入った私はそれから、魔物討伐隊で『恵厄豊穣』によって増え始めていた魔物を多く倒し、功績を挙げていった。












「ギルバート、お前は3男だからと好きにさせてきたし、それ以上にお前自身の努力で功績を挙げてきた」

「……はい」


「……そろそろ26か、身を固める気はないか?」

「何処ぞとの政略の話でしたら、リーン家の者としての務めは果たさせていただきます」

貴族とは、そう言うモノである。


私自身としても、ギルバートである間はきちんと相手と向き合う覚悟もある。


「……はぁ。ギル、お前は聞き分けが良すぎるな。言っておくが、先方からの要請で、断る事も可能だ」

「どちらからの?」

「うむ。フィルマメント公爵家の次女で」

「……公爵家」

「……年が……14だ」

「12年差ですか」

「うむ。流石に年齢の面で断れない事もない」

「政略であれば、十分な範囲でしょうが……。公爵家側の利が分かりませんね」

「それが……ご息女の一目惚れだそうだ」

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