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魔法使いが優遇される世界で物理特化で頑張ります  作者: 啾聲カケル
1章-工業都市ダグタリア-
5/5

ギルド加入-2

「お待たせ、ついてきて」


佐倉さんに案内され、ギルドの中に入る。


「へぇー、筋肉ムキムキで剣とか背負ってる人ばっかりと思ったけど意外にいないんだね」


遼河の言う通り、冒険者イコール強靭な肉体というイメージだったがどうやら違うらしい。

どっちかというと、体格は一般的な人ばかりだ。

中には自身と同じくらいの大きさがある杖を持った人もいた。


「どうぞ」


佐倉さんは部屋の扉を開き入るように促す。

俺と遼河は中にあった椅子に座る。

向かい側に佐倉さんが座ると話始める。


「で?会いに来たってことは何か用があるってことだよな?」


「はい、俺たちは佐倉さんと同じ日本から来たものです」


俺はここに来てあったことを話した。

謎の男、謎の場所については話さずに、神を倒すなんて話はそもそも信じていないし、余計な話をして佐倉さんを混乱させるわけにはいかないと思った。


「それで俺に助けを求めてるってわけか、なるほどな」


「あったばかりで図々しいとは思いますが」


「まぁ、やれることは少ないと思うけどそれでもいいならできるだけ頑張るよ」


「ありがとうございます」


俺は深々と頭を下げる。それを見た遼河は慌てた様子で俺の真似をする。


「その代わりといっちゃなんだがギルドに入らないか?」


「え?ギルドにですか?」


「あぁ、ギルドメンバーのみが利用できる寮があるんだ。それと、今後何をするにもお金とかが必要になってくる、そういった時に俺が支援し続けるのも流石に厳しいからな」


「そうですよね」


「本当は魔物と戦うなんて危なっかしい仕事を進めるのはどうかと思うんだが、今すぐ就ける仕事が他にあるわけでもないし、君たちは高校生だろ?見た目や歳も相まって余計にな」


「いえ、やります。楽しそうですし」


遼河は俺に同調するように縦に大きく首を振る。


「決まったみたいだな、今日はギルマス、あぁギルドマスターが不在だから俺の一存で加入にしてやることは出来ない。収入もない今は宿に泊まることは無理だろうから今日から数日間は俺の家に泊まってくれ」


「そんなことまですみません」


「いいや、いいんだよ。実は今この街のギルドは少々力不足でね、そんな中命懸けで戦ってくれる人にはそれぐらいのことはしないと」


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


「あの質問なんですけど、俺たちってギルドに入ったら何をすればいいんですか?」


今まで喋らなかった遼河が口を開く。


「そうか、それを話してなかったな」


佐倉さんはおもむろに席を離れると部屋の扉を開ける。


「ついてきて、ギルドを案内するよ」




「ここはギルマスの部屋、普段はここにギルド加入志願者や依頼主がやってくる。

今日みたいに不在の場合は鍵がかかって開かないようになってるから。

ギルドに入ったあとは特に用事はないからこのくらいで、次は1階の案内だな」




「次はここだな、依頼を受ける時に受注するためのカウンター、基本的にはあそこにある掲示板を見て受けたい依頼を選んだあと、ここに来て依頼を受けることになる。

もし失敗したとしてもきちんと報告してくれ、そうしないと自分たちの身に余る程難しい依頼なら他の人に任せる必要があるからね」


遼河は掲示板が気になったのか駆け寄る。


「この依頼の紙全てにいろんな色が付いてるんですけど何か意味があるんですか?」


「いいところに目をつけたね、それは大雑把に難易度が設定されていると思って貰って構わない。

依頼主が依頼を持って来た時にギルマスが目安として付けるものだ。

ついでに話しておくけど、ギルドに入った時にギルマスからランクが付けられ、同じランクの依頼までが受けられる。

冒険者には会員証のようなカードが渡される、そのカードにも色がついていて青、緑、黄、橙、赤、の順番で依頼の難しさ、冒険者の実力が高くなる」


「依頼側のランク付けって何が基準になってるんですか?」


「それはモンスターの強さ、討伐数によって変わってくる。

例えば、このスライム5体の討伐は比較的他のモンスターよりも倒しやすい、だから青色になっている。

細かいことはまたギルドに加入して、受けられるようになってからかな」


真剣な雰囲気の中、遼河はスライムという言葉に反応し、目を輝かせている。


「よし、これで案内はだいたい終わったかな」


「はい、ありがとうございました」


「2人はこれから何かする予定はある?」


「いえ、これといっては」


「じゃあ、ギルドから出て右に行くと南門がある。そこから外に出るとモンスターがいるから腕試し程度に行ってみるといい、スライムとかの弱いモンスターだから初めて戦う相手にはいいんじゃないか?」


「白兎早く行こーよ」


待ちきれないのか遼河は俺の腕を掴み体を揺らす。


「まてまて、行くのはいいけど俺たちどうやって戦うんだよ」


「大丈夫だって、俺は剣道、白兎はボクシングやってたんだから」


「その自信はどっから来るんだよ、あと俺はまだしも遼河は武器になる剣はどうするんだよ、それがないと剣道やってたことなんて戦える理由にならないだろ」


「あ、そっか。佐倉さんこの街に鍛冶屋的なものはないんですか?」


「うーん、あるにはあるんだけどな」


佐倉さんは何か言いたくないことがあるように言い淀む。


「見つけにくい所にあるから案内するよ」


「こんなことまですみません」


「いやいやいいんだよ、戦える武器がないといけないし、多分この街のほとんどの人が知らないと思うから」


俺たちはギルドを出てさっきの道を通り、大通りに出る。そこから更に真っ直ぐ進み大通りを渡り、脇道に入る。

道の突き当りまで進むと赤い光が見え始めたと同時に熱風が押し寄せる。


「しおりー、久しぶりだな」


佐倉さんの声に気付いた相手は、佐倉さんを見ずに手に持っていた黒い何かをこちらに向かって放り投げる。


「来んなっていっただろ?」


「佐倉さん?大丈夫ですか?」


俺と遼河は声を震わせながら佐倉さんの心配をする。


「だ、大丈夫」


しおりと呼ばれる女性はゆっくりと立ち上がり、こちらに投げてきた黒い何かを拾う。


「詩織、元気だったか?」


「はぁー」


女性は大きなため息をつく。


「なんで来たの?」


「いやー、この二人の武器を作って貰えないかなーって」


「は?馬鹿なの?そんなのもっと早く言ってくれないと無理に決まってるでしょ」


「実はなこの2人、俺たちと同じ日本から来た子なんだ。しかも明日ギルドの加入テストがあるから今日練習としてスライムと戦えたらなって」


「はぁー」


さっきよりも大きくため息をつく。


「試作品として作ったものがあるけどそれでいいなら」


「流石詩織、ありがとう」


女性は奥の部屋へと入っていく。


「あの女性は?」


「彼女は潮詩織、俺と一緒にこの世界に来た人で俺の知り合い、ちょっとしたすれ違いで喧嘩してそのまま会わずに謝れずって感じ。

ここは彼女が持っている家で、日本に居た頃、鍛冶の修行をしていて今は鍛冶屋として生計を立てている」


「ほら、持ってきたぞ」


詩織さんは短剣や長剣、ゲームでよく見るような槍、そして弓などを大きなお盆のようなものに入れて持ってきた。


「白兎、俺これがいい!この長いやつ!」


遼河は長剣の柄の部分を持ち軽く振り回す。


「じゃあ、俺はより近接になるから短いやつかな」


「なぁ白兎、武器も揃ったんだしそろそろ南門向かおうよ」


「ま、そろそろ行ってもいい頃かもしれないな」


「やったー!じゃあ今すぐいこ!!」


遼河は手を無理やり引っ張り南門ヘ連れて行こうとする。俺は遼河に引っ張られながら大声で二人にお礼を言いそのまま南門ヘ向かった。


「到着!」


遼河は自信満々に胸を張り門の前に立つ。


「いいか遼河、ここからは一つのミスが命取りになるかもしれない、絶対に油断だけはするなよ」


「わかってるって、そんな馬鹿なマネはしないよ」


遼河は早く戦いたくてうずうずしている様子だ。

俺たちは外へと一歩を踏み出した。門から一歩足を踏み出しただけでまた、そこは別の世界のような感じがした。




門から出て数分歩いたところで緑色をした液体や個体、どちらにも分類され難いドロドロとした物体が蠢いていた。


ゲームや小説ではこういったものをスライムと表現するのであろう。


「なぁ白兎、あれってスライム?もっと可愛らしいの想像してたんだけど」


「あ、あぁにわかに信じ難いがそうだろうな」


「じゃ、じゃああれと戦うの?」


「まぁ、戦いたいなら付き合うけど」


「気は進まないけど試しにやってみるか」


遼河は剣を両手で持ちゆっくりとスライムに近づく。


スライムに目があるかどうか分からないため気づかれているかもしれない状態ではあまりにも軽率な行動だろう。


遼河は長剣が当たるギリギリの間合いまで近づき思いっきり振りかぶる。


確かにスライムの中心を捉えたはずの剣はスライムの体をすり抜け地面に叩きつけられた。

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