出会い
気を失ってどれくらいたっただろうか。
目を覚ました場所は全く違う場所だった。
白を基調とした市松模様の天井、豪華な装飾が施されたベッドで横になっていた。
目が覚めたばかりの重たい体を無理やり起き上がらせると、紫色の長い髪をなびかせながらせっせと作業をこなしている女性がいた。
窓からあふれる小さな光が紫色の髪を輝かせ色気がます。
俺が女性にみとれていると、女性が俺が起きたことに気付いたようで、見た目とは裏腹にそそくさとした様子で部屋をとびだして行った。
少し情報を整理しようと思ったその時、これまた慌てた様子で西村と先程の女性、そして色気とは程遠く、俺よりも一回り、二回りは小さい可憐な少女が部屋に入ってきた。
「大丈夫か白兎!」
西村は気を失う前に着ていた制服とは違う洋服を着ていた。
少女は俺の目の前まで来て腰を下ろし、俺の手を握る。
少女がボソボソと何か言ったように聞こえた。
「大丈夫ですか?」
少女は顔を覗かせながら可愛らしい声で喋りかけて来た。
「あ、あぁ」
少女の顔があまりにも近いため少しキョドりながら返事をする。
「はじめまして、私はアウラ・ローリアといいます。気軽にアウラと呼んで下さい」
「俺は遠井白兎、よろしくアウラ」
名前を呼ばれて嬉しかったのか、アウラは無垢な笑みを顔に浮かべる。
そんな顔を見て余計に緊張してしまい俺が目をそらすとアウラは慌ててずっと握っていた手を離す。
沈黙に耐えかねたのか西村が口を開く。
「アウラさんここは何処なんですか?」
唐突な質問にアウラは少し間を開け話し出す。
「ここはダグタリア、この大陸で最も工業が優れていて、工業都市とも言われてます。
工業の他にも農業、林業、水産業、そして錬金術も盛んなんですよ」
「錬金術!?」
非現実的過ぎる言葉に俺と西村が口を揃えて言う。
「はい、錬金術です」
あまりの驚きに空いた口が塞がらない。
「一つお聞きしたいことがございます」
呆けている俺達に女性が口を開く。
「もしかしてですが、おふたりは日本という場所から来られた方でしょうか?」
日本という聞き馴染みのある単語でハッとし、女性の顔を見る。
「え?なんで日本を知っているんですか?」
あまりの驚きに西村は女性に近寄り、顔を近付ける。
その状況に女性は不満を感じたのか顔を顰め紙を差し出す。
「私はカーラー、以前にもあなたがたと似たような境遇の方と出会ったことがありまして、
ダグタリアには冒険者が集まるギルドがありまして、その紙にギルドまでの道のりを書きましたので向かってみてください、そこで働いている佐倉勉という男性がいると思いますので、その方が日本から来たと言ってらっしゃったのでもしかしたら力になってくださるかと」
「ありがとうございますカーラーさん!」
よほど嬉しかったのか西村はさらに顔を近付ける。
トントン拍子に進んでいく話についていけず俺とアウラは顔を見合わせる。
「白兎、宛もあるみたいだし、早速行ってみようぜ」
「え、あぁ」
まだ今の状況についていけてない俺は戸惑いながらも西村の意見に同意する。
「もう行かれるのですか?」
アウラはどこか物悲しそうに言う。
「いつまでもお世話になる訳にもいきませんから」
俺はベッドに手を付き立ち上がろうとすると、
「待って下さい、今起き上がると」
俺の動きを止める声は少し遅く立ち上がる。
とやけにスースーする。
アウラは視線を逸らし西村は俺の下半身に指をさす、
下半身を見ると大事な部分が盛大に晒されている。
顔が真っ赤になるのがわかるほど顔が熱い。
おもわずベッドのシーツで身を包むようにし、そっぽを向く。
「すみません見るつもりは」
「いや、俺の不注意のせいなので」
「郊外にある林の中でお二人が気を失っているのを見てここまだ連れてきたのですが、
お二人とも服の損傷が激しく新しい洋服をと思って、すみません」
カーラーさんは口に手を当ててクスクスと笑っている。
「じゃ、じゃあもう少しだけお世話になってもいいですか?」
「それが良いと思われます」
カーラーさんは耐えきれずにそのまま吹き出してしまった。