異世界転生
「痛ッ」
うつぶせの状態からから起き上がろうとしたとき強烈な痛みが頭を走る。
痛みが引きようやく起き上がり辺りを見回すとそこは知らない場所だった。
外明かりはなく中央付近に青白い光を放つ小さな炎がある。
うすぼんやりとした暗闇の中から人影がひとつ近付いてくる。その人影が男だとわかる前にそいつは
「よっ!」と片手を上げ話しかけてきた。
俺はこいつのことを知らないし、こいつも俺のことは知らないはず、だが何故こうも気軽に話しかけてくるのかは俺には理解出来ない。
すると男は困惑した目つきで
「俺だよ遼河だよ!」と言った。
やはり俺はこの名前に聞き覚えはなく、思い出されるものはひとつもなかった。
俺は遼河と名乗る男にお前は誰なのか、そして何故俺達はこんな見知らぬ場所にいるのか聞く。
男は自分のことを、西村遼河と名乗り、俺とは2歳の時からの幼馴染であり遠井白兎という俺の名前を当ててみせた。
ここに来た理由や、原因は分からず、この場所で目を覚ます前までは高校の屋上で昼食をとっていたらしい。
見知らぬ場所で目が覚め、目の前には自称俺の幼馴染の男、おかしなことが同時に起こり頭を抱える。
頭を上げると何故か誇らしげな顔をする男が癪に触るが、今は関係ない。
ひとつ男との共通点をあげるとするならば同じ制服を着ていることだろう。
「思い出話は済んだかな?」
今までこの場所には俺とこの男以外に全く気配が感じなかったはずが、急に俺の後ろの方から声が聞こえた。
振り向くと今まで無かったはずの青白い光で照らされた玉座のようなものと、それに座る小柄な人影がぼんやりと見える。
その影に対して、
「誰だ!」
と西村は声を荒げる。
中性的ながらも男だと察せられる影は、「はー」とため息を吐く。
「せっかく君たちをこの世界に連れて来てあげたのに」
「この世界?ここは日本じゃないのか?」
俺の問いに男は、
「そう!ここは自由の世界、面倒な縛りは一切ない自由な世界」
男は気分が良くなったのか、両手を上げ大声で話す。
「何故こんなところに連れて来られたんだ?」
と俺は尋ねるが男は無視し話を続ける。
「君たちにはこの世界であることをしてもらう」
「あること?」
「簡単に説明するとこの世界の頂点である神、
創造神アルキューレを殺す、それだけだ」
「神を殺す?」
神?殺す?あまりにも非現実的な言葉に、急に現れた謎の男、否応なしに別の世界に来たことを実感させられる。
「簡単に言ってるけど無理に決まってるだろ、
そもそも簡単なら俺らじゃなくてもいいだろ」
西村はずっと男に対して喧嘩腰だ。
「君たちにしかできないよ?なぜなら、、、」
男が不気味な笑みを零し言いよどむ。
男が話し終えた途端座っていた玉座が眩い光を放つ。
「まぁ、とりあえずデュレン神殿に来てよ、そこでまた会おう」
放たれた光に身を包まれ、気を失う寸前に男がそう言ったのが聞こえた気がした。