一 ~ 赤いドレスの彼女 ~
殺意はある。
殺す。
強い意志はずっと持っていた。
だからこそ……。
町は死にかけていた。
いつものように月日が流れても、時折時計の針は止まろうとする。
針を動かすため、その塔に向かっていた。
鬼が住むといわれるその場所に。
最上階の部屋は薄暗かった。
レンガ造りの部屋。壁の上部に開かれた穴から、月明かりが淡く部屋の中心を照らしていた。
足音が床に響く。
その姿を見つけ、足が止まると緊張から息が詰まる。
彼女は木製の椅子に座っていた。
項垂れるようにして前かがみになる姿からは、表情は伺えない。
しなやかに伸びた黒髪が床に触れようとしていた。
一向に動こうとしない姿は異質であり、どこか空間を切り取ったみたいな気味悪さを漂わせていた。
彼女の周りに何か影が転がる。
彼女の足元には人、女性と思しき物体が横たわっていた。
それは死体なのか、それとも人形なのかが分からない。
まったく動かなかった。
手に握っていた刀を握り返してしまう。
それなのに、足が竦んでしまう。
息を呑んだ瞬間、彼女の肩がビクッと動く。
そこでこちらに気づいたのか、ゆっくりと顔を上げた。
氷みたいな冷たい眼差しが体を締めつける。
彼女は子供がふざけるように足を開いて座り、こちらを見上げた。
華奢な彼女はどこか幼さの残る表情をしていた。
鮮烈な赤いドレスを着ていた彼女。肩からのぞく肌は血が通っているのか、疑ってしまうほどに肌が白かった。
なぜか靴を履いていない。裸足になっていた。
赤いドレスが際立ち、血を浴びているようで恐怖が肌にへばりつく。
彼女はこちらに気づくと、眉間にシワを浮かべ、こちらを睨んだ。
その禍々しさに刀の刃先が震える。
殺意を向けたとき、彼女は不敵な笑みを浮かべた。背もたれに細い体を預けて。
見えた八重歯が獣の牙みたいに威嚇される。
こちらを嘲笑いながら、薄い唇を動かす。
言葉が流れるように、脳裏を駆け巡ってくる。
まるで頭のなかを覗き、掻き乱すように。
自分の感情が無様にさらされているみたいな苦しさ。
それでも拒めない。
呆然とする様を嘲笑うように、彼女は唇を一舐めし、口角を吊り上げた。
それまで人形なのか疑っていた雰囲気が一変し、背筋が凍り、手から力が抜けようとする。
彼女のそばで横たわっていたのは人形? それとも死体?
それならば、殺したのは……。
女の子の姿をした彼女は……。
……鬼。
分からない。
ただ、妖艶で不敵な笑みが心を揺さぶる。
脳裏を痛める言葉が築かれていく。
ーー 人間、お前は面白いな。
赤いドレスを着た彼女に睨まれる。そこからイメージを抱いて、勢いに任せて書いてみました。
構成的にはちょっと変えてみました。
よろしくお願いいたします。




