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心情の行方  作者: ひろゆき
1/5

 一 ~ 赤いドレスの彼女 ~

 殺意はある。

 殺す。

 強い意志はずっと持っていた。

 だからこそ……。

 町は死にかけていた。

 いつものように月日が流れても、時折時計の針は止まろうとする。

 針を動かすため、その塔に向かっていた。

 鬼が住むといわれるその場所に。


 最上階の部屋は薄暗かった。

 レンガ造りの部屋。壁の上部に開かれた穴から、月明かりが淡く部屋の中心を照らしていた。

 足音が床に響く。

 その姿を見つけ、足が止まると緊張から息が詰まる。


 彼女は木製の椅子に座っていた。

 項垂れるようにして前かがみになる姿からは、表情は伺えない。

 しなやかに伸びた黒髪が床に触れようとしていた。

 一向に動こうとしない姿は異質であり、どこか空間を切り取ったみたいな気味悪さを漂わせていた。

 彼女の周りに何か影が転がる。

 彼女の足元には人、女性と思しき物体が横たわっていた。

 それは死体なのか、それとも人形なのかが分からない。

 まったく動かなかった。

 手に握っていた刀を握り返してしまう。

 それなのに、足が竦んでしまう。

 息を呑んだ瞬間、彼女の肩がビクッと動く。

 そこでこちらに気づいたのか、ゆっくりと顔を上げた。

 氷みたいな冷たい眼差しが体を締めつける。

 彼女は子供がふざけるように足を開いて座り、こちらを見上げた。

 華奢な彼女はどこか幼さの残る表情をしていた。

 鮮烈な赤いドレスを着ていた彼女。肩からのぞく肌は血が通っているのか、疑ってしまうほどに肌が白かった。

 なぜか靴を履いていない。裸足になっていた。

 赤いドレスが際立ち、血を浴びているようで恐怖が肌にへばりつく。

 彼女はこちらに気づくと、眉間にシワを浮かべ、こちらを睨んだ。

 その禍々しさに刀の刃先が震える。

 殺意を向けたとき、彼女は不敵な笑みを浮かべた。背もたれに細い体を預けて。

 見えた八重歯が獣の牙みたいに威嚇される。

 こちらを嘲笑いながら、薄い唇を動かす。


 言葉が流れるように、脳裏を駆け巡ってくる。

 まるで頭のなかを覗き、掻き乱すように。

 自分の感情が無様にさらされているみたいな苦しさ。

 それでも拒めない。


 呆然とする様を嘲笑うように、彼女は唇を一舐めし、口角を吊り上げた。

 それまで人形なのか疑っていた雰囲気が一変し、背筋が凍り、手から力が抜けようとする。

 彼女のそばで横たわっていたのは人形? それとも死体?

 それならば、殺したのは……。

 女の子の姿をした彼女は……。

 ……鬼。

 分からない。

 ただ、妖艶で不敵な笑みが心を揺さぶる。


 脳裏を痛める言葉が築かれていく。

 ーー 人間、お前は面白いな。

 赤いドレスを着た彼女に睨まれる。そこからイメージを抱いて、勢いに任せて書いてみました。

 構成的にはちょっと変えてみました。

 よろしくお願いいたします。

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