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作者: 葛城アモン


 沢田一雄は長いバス運転手生活の中で、少なからず気になって仕方ない乗客と乗り合わせてきた。大半は行きずりで、その後の消息を知ることはなかったが、時折、新聞の片隅に写真入りの記事を見つけることがある。それは名の知れた有名人の逃避行であったり、都会を逃げ出した自殺志願者であったりしたが、一度、連続殺人犯を乗せた時には、あとで知って肝を潰し、しばらくは乗る客すべてが凶悪な逃走犯に見えたものだ。


 沢田はいまも渡井の駅から乗り込んだ男が気になって仕方なかった。髪は伸び、薄汚れた身なりで、最後尾の席の窓側に身を寄せぐったりとうなだれている姿を、幾度となくバックミラー中に探している自分に気づくのである。

 途中の停留所で一人降り、二人降り、笛吹の停留所を越えたあたりで沢田はその客と二人きりになった。

 男は窓に額をつけ、身動きもせずただじっと惚けたような顔で流れる外の景色を眺めている。四月の始め、よく晴れた平日の昼下がり。まだ観光客や避暑にやってくる別荘族で混み合う時期ではなかったが、こんな風に客が途切れることはめったにない。沢田は尻の辺りがムズムズとどうにも落ち着かない気分になっていた。


あの男、何やら悪い薬でもやってるんじゃなかろうか……


 バスが神辺を出て市街地から鄙びた田園地帯に乗り入れた頃、バックミラーの中で男がゆっくりと立ち上がり、おぼつかない足取りで運転席の方に近づいてきた。

 とうとう来ちまったかと、沢田は胃の辺りがキュッと冷え下腹から力が抜けるのが分かった。客から見えない方の右手で座席の下をまさぐり、護身用の棍棒があるのを確かめる。

 男は運転席まで来ると、わずかに身を屈めるようにして沢田の顔を覗き込んだ。


「運転手さん。このバス、鳴海高原の別荘地まで行くだろうか。車では行ったことがあるんだかバスは初めてでね。何と言ったかな、あの麓の停留所まで」


 意外なほど物静かで優しげな声に、沢田はふと、営業所の廃車置き場に捨てられた、バスに籠る、錆びた鉄の匂いを思い出した。


「松任ですか。いや、このバスは行かないねぇ。渡井から高樹、浅井を通って福来の駅で折り返します。駅で降りて乗換えてもらえば、三十分くらいで松任の停留所に着きますよ」


 あぁそうなんだ、ありがとうと、男は席に戻りかけ、沢田が運転席の裏に無造作に突っ込んだ新聞に目を止めた。


「これ読んでもいいかな」


 沢田は、早く後部座席に戻ってもらいたい一心で、素早くそれを引き抜くと男の目の前に突出した。


「昨日のですけど、お読みになるなら差し上げますよ」


 男はもう一度礼を言い、新聞を大事そうに抱えてヨロヨロと後ろの席に戻って行った。

 こりゃ薄気味悪い奴をのせたもんだなと、沢田は新聞の中ほどのページをじっと見つめている男をバックミラーで確認しながらわずかにバスのスピードを上げた。やっぱり逃走犯かも知れん。自分の載ってる記事を探してるに違いねぇ。

 沢田は、あと十数分、福来の駅に着くのが待遠しくて仕方なかった。


 車内にアナウンスのテープが流れ、何事もなくバスは福来の駅に着いた。

 沢田はホッと息をつき、自分がどれほど緊張していたかを知った。ハンドルを握り締めた手が白い。

 男が頼りなげな足取りで運転席に近づき、小さな小銭入れから運賃を払い新聞の礼を言ってタラップを降りようとしたその時、沢田は自分でも思いがけずわずかに傾いだ男の背中に声をかけていた。


「あんた、大丈夫か?  よくわからんけど馬鹿な真似しちゃいかんよ」


 男は驚いたように振り向くとすこし寂しそうに笑い、ゆっくりと頷いたあとバスを降り離れて行った。

 折り返しの調整時間は五分程度だったが、沢田はその男をずっと目で追っていた。男は乗換えの時間を確かめると、駅前のコンビニに向かって歩いていく。


どうして最後の最後に、あの男に声を掛けちまったのかなぁ……


 沢田は我ながら不思議だとばかりに首を捻り、その男がコンビニの中に消えるのを眺めていた。

 しばらくして、折り返しの乗客が数人ガヤガヤと乗り込んできたのを潮に、沢田一雄はその不審な乗客のことをきれいさっぱ忘れてしまった……。



※  ※  ※



 二十歳になって、地方だけど現役の女子大生で、けっこう成績も良くそこそこの美人で、男も知ってて失恋だって人並みにしてる。高田晴美は、コンビニのレジでその客と応対するまで私ってけっこう大人だよね、と思っていた。


 その男は、店に入ってきた時から晴美の目を引いた。

 昼下がりのコンビニなんて、外回りの掃除と商品の品出しが終わればもうやることはない。店長は奥で仮眠中だし、雑誌コーナーで立ち読みしてるサボリの中坊にだけ注意しとけばあとは暇つぶしみたいなものだ。

 その客は入口でカゴをつかむとまっすぐアルコールのコーナーへ行き、ウイスキーの角瓶を三本とビールのパックを二つ、近くに陳列してあるおつまみをよく見もせずわしづかみにしてレジまで運んできた。


なんか、病院勝手に抜けてきましたって感じのオヤジだなぁ……


 晴美は男の姿を眺めながら、大学のグランドの外れにある枯れた桜の樹を思い出していた。入学当時はきれいに花を咲かせていたのに、今じゃ虫にやられ、枯れて、折れた幹の中は洞になってスカスカで……


 男は、品物をカウンターに置くともう関心を失ったように、ぼんやりと自動ドアの向こうに視線を泳がせている。晴美がレジを打ち、袋に入れる間も、男は糸の切れた操り人形のように肩を落としじっと動かなかった。


「6720円になります」


 晴美はいつもより少し大きな声で言うと、薄いブルーのレジ袋二つを男の方に押し出した。

 男が我にかえり、緩慢な動作で品物に視線を移したその瞬間無精ひげの下にある顔が一瞬にして血の気を失い、今にも叫びだしそうに開いた口から声にならない低い唸り声が洩れた。男は信じられないといった風に何度かまばたきを繰り返すと、固く目を閉じ歯を食いしばって何かにじっと堪えているようだった。しばらくして、頬にわずかな赤味が差した頃、男は肩の力を抜いて大きく息を吐いた。

 すまなかったと呟いた男は、ポケットから取り出したクシャクシャになった一万円札を差し出し、釣りはいらないと言って品物に手を伸ばした。


「お客さん、困ります」


 晴美は慌ててお釣をつかむと、出て行こうとする男を追いかけてレジカウンターを飛び出した。

 店の前で追いついた晴美は、お釣りをグッと男の顔の前に突出した。


わたし何やってるんだろうなぁ。ほっといたら3280円儲かったのにさ……


 男はいらないんだと言い、曇った目で晴美の顔をじっと見つめている。

 二十年生きて出会ったことのない表情。単純に泣いたり笑ったり怒ったりするだけじゃない。わたしだってきっとあと何十年かしたらこんな表情を浮かべるようになるかもしれないけど、正直出会うのが早すぎるよ、と晴美は思った。だってどうしていいか何て言えばいいかわかんないじゃない。

 晴美は精一杯の笑顔を作ると、お釣りを男の空いている手の中に押し込んだ。


「ダメです。また来てください」


 晴美はそれだけ言うと無理矢理ニッコリ笑いかけて、元気にお辞儀をすると店の中に駈け戻った。

 男はしばらく途方に暮れたように立ち尽くしていたが、大きく息をつきバスの停留所に向けて歩きだした。

 晴美はカウンターの中で遠ざかる男の後ろ姿を眺めながら、笑いかけることしか出来なかった自分がなんて幼くて子供なんだろうと思った。何を経験したら、どんな生き方をすれば、人間はあんな表情になるんだろ。

 高田晴美はしばらくの間、その客から感じた胸が詰るような息苦しさをどうにも拭い去ることが出来なかった……。



※  ※  ※



 この季節がいちばん良い。

 山村トキはしみじみとそう思った。

 冬が終わって雪も溶け、狂ったような夏はまだまだ先で、時折暖かい風が吹くこんな春の日が散歩にはいちばん良い。八十を幾つか超えて脚もずいぶん弱ったけれど、ダラダラと続く坂道を、時間をかけてゆっくり上り下りするのは気晴らしにも丁度良い。

 この二、三年でこの辺りも閑静な別荘地からただの山の手の新興住宅地に様変わりしてしまったが、それでもまだ八割の住人が夏場だけやってくる別荘族で、この春先は昔のままの贅沢な静けさを取り戻す。


 トキが、鳴海公園という名の遊具もないただの更地の脇を通り過ぎたときその男に気がついた。

 男は何か困った様子で辺りを見回しながら、手にしたコンビニの袋を引きずるように坂道を上ってくる。男が近づくにつれ、そのヨレヨレで磨り減らしてような風采とは裏腹に、トキの頭の中では古い映写機をカラカラと回すように、切れ切れの映像が何か楽しい思い出と結びついて蘇ってきた。


お知り合いかしらねぇ。でもずいぶん昔の話みたいで思い出せない。あぁ、歳は取りたくないもんだわねぇ


男はトキに気づくと驚いたように立ち止まり何かを思案している様子だったが、しばらくすると渋々といった感じでトキの方にやってきた。


「すいません。以前、この辺りに橋爪……さんの別荘があったと思うんですが、場所をご存じありませんか。なにかずいぶんと変わってしまって、道に迷ってしまったようなんです」


 トキはその風体に似合わぬ優しげな声に、ますます不思議な感覚、どこか懐かしくそれでいて物哀しい不思議な気持ちに囚われた。


「あぁ、この辺りも開発、開発でね。昔の面影なんてどこにもありゃしないよ。橋爪さんて、あの小難しい横文字の、アイテーだかアイチーだかいう会社の社長さんだった人だろ。あんた一筋道を間違えてるよ。この道を少し上って右に曲がったら、一筋向こうの通りを上ってごらん。すぐ見つかるよ」


 男は合点がいったのか、礼を言い坂道を上っていった。この暖かい春の日に、その男の回りだけ冷たい風が吹いているような妙に寒々として頼りなげな背中だった。


そうだ。お巡りさんに知らせなきゃ。不審者がいたら何時だってお知らせくださいって掲示板にも書いてあったしねぇ


 山村トキは、単に道を尋ねられただけだというのに居ても立ってもいられなくなって、得体の知れない胸騒ぎに押されるように駐在所に向かう道をヨタヨタと下っていった……。




※ ※ ※



 橋爪祐一は、六年も前に売りに出した夏の別荘が、まだ売れずに残っていることにさして驚かなかった。ドアは合鍵で開けた。

 鍵が交換されていれば窓を割ってでも中に入ろうと決めていたのだが、きっとその必要はないだろうと確信していた。ここに来ようと決心した直接の原因であるこの合鍵は、別荘を売りに出した際に返し忘れ、先日荷物を整理していて見つけ出したものだった。


 家の中は、時折不動産屋が空気を入れ替えているのかうずたかく積もった埃や腐臭といったものは微塵もなく、四月の爽やかな空気が部屋を満たし、まるで六年前で時が止まっているようだった。

 祐一は応接間、居間、キッチン、寝室、書斎とすべての部屋を見て回り、地元の悪ガキや流れ者の浮浪者が入り込んで部屋を荒らしていないか確かめた。皮肉なもので最初に侵入した不審者がこの別荘の元持ち主で、この北欧風の別荘はもう二度と買い手がつかないだろう。


 祐一は二階の書斎で寝ることに決めた。二日ほど過ごせるだけの食糧は麓のコンビニで買ってある。そしてその後はどうするかちゃんと決めていた。


確か、山下といったかな、あのおばあさん。七年ほど前、この別荘の庭でご近所を招待してパーティーを開いた時、涼子にあれこれ手を貸してくれて……


 祐一は首を振り、妻の名前に今でも激しく動揺する自分を苦々しく思いながら、ソファーにかかったシーツを払いのけると、腰を下ろし、乱暴に安ウィスキーの封を切った。



※  ※  ※



困ったぞ、こりゃ……


 福来ハウジングの高橋孝造は、橋爪祐一の別荘だった建物の前でこの家の鍵が見当たらないことに気がついた。鞄の中を掻き回しポケットというポケットを裏返しながら、こりゃ減給ものだぞと汗をかきはじめていた。

 月に2回、この地区にある担当物件の換気と補修箇所のチェックが孝造の主な仕事だったが、鍵を失ったとなれば防犯上別荘の鍵はすべて取り替えることになる。そしてそれがすべて考造の評価と給料に跳ね返るとなれば落ち着いてなどいられるはずがなかった。

 春の陽は短い。ましてや山間の避暑地となれば尚更で、早々と傾き始めた日差しを恨めしそうに見上げながら、考造は公園に停めた車に戻って車内を探すか、外回りだけチェックして戻るかグズグズと迷っていた。

 その時、顔見知りの巡査に声を掛けられた。


「こんばんわ。いつものお見回りですか」


 考造が、えぇそうなんですがと鍵の経緯を説明すると、そりゃ残念だなぁと巡査は頭を掻いた。実は昨日、ご近所のおばあさんからこの橋爪邸を訪ねて不審な男がうろついている。のっぴきならない雰囲気がするから、どうか調べて欲しいという届け出がありましてね。運良くあなたを見つけたから中を見せて貰おうと自転車でやってきたわけでしてと、若い巡査は軽く敬礼をしてみせた。


「ここまで来たんですから、一応外回りだけでも調べておきませんか」


 巡査の提案に考造はうなずくと、そそくさと門扉をあけ中に入った。

 橋爪邸は北欧風のログハウスで、派手さはないがどっしりと落ち着いた雰囲気を醸し出していた。普通なら五年も放置すれば傷みが出るものだが、この別荘は不思議といま誰かがドアを開けて出て言ったような奇妙な生活感を感じさせる。

 考造は巡査に先立って右回りに別荘の横手に向かった。

 この何日か日照り続きで地面は乾ききっており、庭に不審な足跡は見当たらない。窓もキチッと施錠されていて厚いカーテンが引かれている。雑木林に面した裏庭に回って勝手口を確かめ、一周して玄関に戻ったがこれといって気になる点はみつからなかった。

 考造が、今日のところはこれで切り上げて鍵の件は明日上司に相談しようと考えていると、思案げに二階の窓を見上げていた巡査が、これは個人的な興味なのだがと遠慮がちに話しかけてきた。


「自分は不動産にはからきし知識がないので、的外れな質問かも知れんのですが、この別荘が長い間売れ残りそうな家には見えんのです。何かただならぬ曰く因縁があるのでしょうか。自分はここに来てまだ三年目なので、それ以前のことはまったく知らんのです。差し支えなければお聞かせ願えませんか」


 考造は、教えてよいものかどうか迷っていたが、もう随分昔のことだからと自分を納得させることにした。


「いやいや、この別荘自体が傷物だというわけじゃないんですよ。元の持ち主の橋爪さんという方は当時まだ三十半ばでね。中堅クラスのIT企業を経営してたんですが、ありゃ六年前の夏だったかなぁ、奥さんを交通事故で亡くされてね。それからはもう坂を転げ落ちるように、会社は人手に渡るわ、この別荘は売りに出すわで、今はどこでどうしているのやら。この別荘を新築された時に何度かご夫妻にお会いしましたけどね、確かに仲睦まじくて夢いっぱいて感じでしたよ。ただ正直なとこ、嫁さんが死んだってだけで、何もかも無くしてしまうような男はイマイチ頼りない気もしますけどね。私なんか女房が死ぬのを今か今かと待ってるような塩梅でして」


 考造は少し言い過ぎたと思ったのか、一つ咳払いをすると営業的なな口調に戻って言った。


「その後、幾組か買い手が現れたんですがね、カタログを見る分にはすぐにでも手付けを打ちそうな客も、ここに連れてくると不思議に購買意欲が削がれるのか、いつの間にか次の機会になんて話になって現在に至ってる、てな感じですかねぇ。まぁ、不景気なご時世だし、もう少し値を下げれば何とかなるでしょう」


 考造は、ニンマリ笑うと、それじゃまたと巡査に軽く敬礼をして汗を拭き拭き坂道を下っていった。巡査はまだ何か釈然としない様子でしばらく別荘を見上げていたが、考造を追うように自転車を押して歩き出した。


二人が去ったあと、見つからなかったのが不思議なほど、道端の側溝の中で、無くしたはずの鍵が西日を浴びてキラキラと光っていた……。



※  ※  ※



 ビルの中を走っていた。妻を、妻を見つけなければ。時間が迫っている。外は夜なのか、窓から射すのは淡い月明かりで、長い廊下の果ては暗くて見えない。会議室にも、社長室にも、厚い埃と割れて粉々になった陶器が散乱しているだけで誰もいない。階段を上り、踊り場から続く渡り廊下を見渡すと、向こうから、月明りに照らされて黒い塊が跳ねるように近づいてくる。堪らなく臭い。逃げるように階段を駈け登り、廊下を曲がると、遥か向こうにぼんやりと明かりの点る一画がある。コンビニだ。店内に入ると、見覚えのある店員がいらっしゃいませと声を掛けてきた。妻を探していると言うと、哀しそうな顔でトイレを指差した。トイレに駆け込むと、

そこはあのドラッグストアの店内だった。怖い。脚が萎え、震えが走る。手術用の白衣とマスク、ゴム手袋をした手を目の前にかざして、数人の男たちが口々に、奥さんは中絶手術の真っ最中だと叫ぶ。中絶手術の真っ最中だ! 真っ最中だ! まっさいちゅうだぁ〜! まっさいちゅうだぁ〜!  その大合唱に建物は揺れ、バラバラと天井が崩れ始めた。男達から逃れようと振返ると、頭から薄いブルーのレジ袋を被った女、子供に取り囲まれ、店の入口に押し戻される。自動ドアの外は何もない。真っ暗な奈落の底に突き落とされそうになっていた。ジリジリと押し出される。ジリジリと、ジリジリと……


 祐一は、脚に絡み付くシーツから逃げるように飛び起きた。息が荒く、絞り出すように吐息がもれる。西日を浴びてひどい寝汗をかいていた。

 ここしばらく見ることのなかった悪夢に再び襲われたのは、昨日駅前のコンビニで買い物をしたときの青いレジ袋のせいだった。


死ぬ覚悟を決めて、ここに来たはずなのに、夢の中ではまだ死を恐れているのか、おまえは……


 祐一が、

床に落ちたまだ中身の残るウイスキーのボトルに手を伸ばそうとした時、外からかすかに話し声が聞こえてきた。ふらつく足で窓辺に寄りカーテンの隙間から覗くと、背の高い若そうな巡査と上背よりも横幅がありそうな小男が話し込んでいた。

 しばらくして、小男の方がおどけた調子で敬礼すると汗を拭き拭き坂道を下りていった。思案げにこの窓を見上げた若い巡査と目が合ったような気がしたが、彼もまた何事もなかったように自転車を押して坂道を下っていった。

 この世に未練があるわけじゃないが警察に煩わされるのはごめんだ。

 祐一はソファ―に倒れ込むと残りのウイスキーを一気に喉に流し込んだ……。


 六年前、生まれつき耳の不自由だった祐一の妻が、けたたましいクラクションの音に気づかず暴走するトラックに弾き飛ばされたとき、その身体は妊娠十週目だった。

 遺品の中に薄いブルーのレジ袋に包まれた妊娠検査薬と、産婦人科医院の電話番号を記したメモを見つけて時、何も知らされていなかった祐一は、妻を失ったショックとお腹の子供に対する疑惑で二重に打ちのめされたのだった。

 病院に問い合わせると、妻が中絶手術の予約を入れていたことを知った。当然同意書にサインした覚えもなく、逆に病院からどうなっているのかと詰問される有様だった。

 その後は指の隙間から砂がこぼれ落ちるように、会社も家も、妻がお気に入りだったこの別荘も次々と人手に渡り、祐一がその日暮しの浮浪者に身を落とすまでさして時間はかからなかった。

 立ち直ろう、やり直そうとするたびに、ドラッグストアの薄いブルーのレジ袋に入った真新しい妊娠検査薬のパッケージが脳裏をかすめ、答えのない問いが延々と祐一を苦しめた。


 妻は裏切っていたのだろうか……。 こうして、誰もいない四月の別荘で薄いシーツにくるまりながら、酒に溺れ、死を決意したいまでも、祐一は気がつけば自問自答を繰り返していた。


妻は何故、何も言ってくれなかったのだろう……。



※  ※  ※



 桜井次郎巡査が一日の勤務を終え、細々とした雑事のあと私服に着替え自転車で橋爪邸に戻ったのは、夜の八時を回った頃だった。

 この地域も三年でずいぶん区画が整理され真新しい家が立ち並び、

四季を通じて定住する者も増えたけれど、この時刻になるとまだ寒さの残る町並みに、家族の団欒を思わせる窓の灯はいまだ数えるほどしかない。

 夕方、福来ハウジングの検査員にこの別荘について尋ねたのは、長い間売れ残っているからという理由だけではなかった。


あれは確かに若い女性だったんだがなぁ……


 三ヶ月ほど前、年が明け、まだおとそ気分が抜けないまま自宅で飲み、ほろ酔いで日課の見回りに出た時のことだった。いい気分で自転車を押しながらこの通りに差しかかった桜井巡査は、橋爪邸の二階の窓に若い女性が立っているのを見つけたのである。その女性は巡査のほうにゆっくりと向き直ると、闇に溶け込むように徐々にぼやけて消えてしまった。その顔が微笑んでいるように感じたのは桜井巡査の錯覚だったかもしれない。

 その夜は酔っていたこともあり、幻を見たのだと自分で自分を納得させたのだったが、それ以来この別荘は桜井巡査にとって気になって仕方ない家になった。見回りの際はしばらく立ち止まってこの窓を見上げるのが日課になった。そして今日、この別荘にまつわる経緯を知ったのである。


この別荘は、亡くなった奥さんのお気に入りだったに違いない。そしていまもここに……


 桜井巡査は何か切なく、哀しい気分に襲われ、駐在所の裏にある二部屋しかない狭い一軒家で待つ、妻が無性に恋しくなった。

 一つ大きな溜め息をついて自転車に跨がろうとした時、道端の側溝で何か光る物を見つけた。近づくとそれは小さなプラスチックの名札がついた鍵だった。


こりゃ、福来ハウジングさんの無くしたこの別荘の鍵だな。それにしても、こんなとこに落ちてて気づかないわけないんだかなぁ



 桜井巡査は明日朝一番に連絡をとって、その時に一緒にこの別荘の中を見せて貰おうと決めた。

 鍵をポケットにしまい、もう一度窓を見上げると、風のないこんな夜に微かにカーテンが揺れた気がした。

 桜井巡査はニッコリ笑うと、妻が待つ駐在所への道を全速力で下っていった。



※  ※  ※



 一日はあっという間に過ぎる。


 寝ている時以外は飲んでばかりいた。痺れたような頭の隅で、祐一は明日にはけりをつけようと呪文のように繰り返していた。

 もう何もかもが、うんざりだった。

 眠りに落ちようとする祐一の頭の中で、昨日読んだ新聞の見出しが際限なくクルクルと躍っていた……。



※ ※ ※



確かにあの娘は思い詰めた目をしてたねぇ。一途過ぎて哀しいくらいだったよ


 山村トキは自室の卓袱台の上に、押入れの奥から出してきた文箱の中身を広げながら、七年前の事を思い出していた。箱の中には手紙や写真、葉書といったものが無造作に詰め込まれていて、お目当ての物を見つけるのは一苦労だ。さっきまで座椅子の上で丸くなっていた猫が、物珍しげに卓袱台に飛び乗ると無遠慮に手紙の上を踏み渡っていく。

 あったあった、これだわとトキが抜き出したのは一枚の年賀はがきだった。

 裏に流麗な女文字で、新年の挨拶と短い追伸がある。


ご迷惑でなければ、いつか山菜料理のレシピを教えて下さいね。橋爪涼子


 昨日、道で橋爪邸の場所を尋ねられてからトキはそのことが頭から離れず、何年か前に一度ホームパーティに招かれたこと、翌年の明けに年賀状を貰ったことなどを思い出したのだった。


そうそう、涼子さんといったねぇあの娘。耳が不自由なのに明るくて親切で、屈託のない娘さんだったねぇ


 四月とはいえ夜はまだまだ肌寒い。窓の隙間から忍び込む夜風がカーテンを微かに揺らしている。トキは最近痛み始めた膝をかばうようにゆっくり立ち上がると、窓に近付き外を眺めた。

 夜空には星がわずかに瞬くだけで、近隣に灯のともる家もなく、窓は暗幕を張ったように部屋の灯を写し込んで皺くちゃの顔がジッと見つめ返していた。


ただ旦那さんにだけはずいぶん気を使ってたねぇ。目の前の幸せが、ちょっとした弾みにパンッと割れて、消えてしまうんじゃないかと、内心ひどく怯えてる、そんな感じだった。きっと幸せ過ぎたのかも知れないねぇ


 その後、何がどうなったのか別荘は売りに出され、噂では旦那さんの会社は人手に渡り奥さんは亡くなったと聞いた。

 トキは窓に映る、年老いて、白髪で、老眼鏡が手放せない、この頃とみに物覚えが悪くなった頑固な老婆に問いかけてみた。


あんたにも、あんなに必死で相手を想った時期があったのかい。あれほど、失うのが怖くて怖くて仕方ないほど大事に想ってたもんが、あんたにもあったかねぇ


 トキは、困ったような顔で何も答えない、窓に映る自分自身に見切りをつけるように勢いよくカーテンを締めた。階下からテレビの音に混じって息子夫婦や孫の笑い声がかすかに聞こえてくる。トキは散らかった手紙や写真を文箱に戻すと、一番上に橋爪涼子の葉書を置いた。

 仏壇に目をやると、十年前に死んだ亭主の遺影がやさしげに微笑んでいる。


大事なものを失っても、何があっても、どんな時も、耐えて、受け入れて、その折々に出来ることを精一杯やるだけ。それが人生てもんじゃないかねぇ


 トキは、橋爪涼子の葉書に手を合わせると、そっと文箱の蓋を閉めた……。



※  ※  ※



「ねぇねぇあんた、この記事見てよ。クロウブリッジって会社、確か鳴海高原に別荘持ってた橋爪さんの会社じゃなかった? 今度大手の企業に吸収合併されるらしいわよ。大変ねぇ」


 台所のテーブルで新聞を読みながら幸枝は、夜のスポーツニュースに一喜一憂している考造の背中に話しかけた。一時期、幸枝も福来ハウジングで、考造と机を並べて経理の仕事に就いていたので、夫の仕事内容については少なからず知識はあるのだった。


「知ってるよ。お前それ一昨日の新聞だろ。それに橋爪って人はずいぶん前に会社を放り出されて、いまの社長は全然違う人だよ。鳴海高原の別荘だってそのとき売りに出されたもんだし」


 プロ野球の開幕戦ハイライトを食い入るように観ていた考造は、気が散るとばかりに妻の方を見ようともせずぞんざいに応えた。幸枝も幸枝でそんな夫に慣れているのか、かまわず思いついた疑問を口にした。


「あらそう、放り出されるなんて穏やかじゃないわねぇ。確か奥さんが事故で亡くなったとかなんとか聞いた記憶があるんだけど……」


 考造は文字通り蠅にたかられたような顔で振返ると、仕方ない奴だなとため息をついた。口の端にビールの泡がついている。


「裁判所で、奥さんを轢いた犯人に殴りかかって大怪我させたんだよ。殺してやる、殺してやるって四人がかりでも取り押さえるのに苦労したって話だ。暴行自体は示談で済んだんだが、会社の方はそうもいかなかったみたいで、体よく辞職に追い込まれたってことらしい。五年も前のことだがな」


 幸枝は、お気の毒にねぇ気持ちわかるわとか何とかつぶやきながら、もう新聞をめくっている。関心はもはや別の記事に移ったようだった。

 考造は、野球からサッカーの試合結果に変わったテレビの画面を見つめながら、いつしか橋爪邸のことを考えていた。無くした鍵のこと。巡査に話したこと。そしてあの別荘を売った当時のこと……。


昼間は巡査にあんなこと言ったが、こいつが死んだらおれはどうするんだろうなぁ。小さいながら家があって、仕事もそこそこ順調で、この頃太り出した古女房がいて、長男は大学受験、下の娘は中学生。そんな現状にどっぷり浸かって不満ばかりだが、もしこいつが前触れもなくポックリと逝っちまったら……


 考造は、不意に現実的で生々しい死に触れたような気がしてぶるっと身震いした。


あんな風に、嫁さんが死んじまって、会社も人手に渡り、別荘だってありゃしない。それに加えて、自分の作った会社もこの世から無くなっちまったらいったいどんな気がするんだろうなぁ……


 無意識にぬるくなったビールを飲み干し、残りをつごうとして、考造は手のひらに感じるビンの感触に不思議な安らぎを覚えた。

ラベルの文字をじっと見つめながら、おれが頑張った対価がここにあって、夜飲むビールが美味いと感じられるなら、それはそれで誰に恥じることはないたいした幸せなんじゃないのか。考造はそう思った。


「おい。お前もビール付き合わないか。もう一本開けて持ってこいよ」


 突然そう誘われてびっくりしたのか、幸枝はポカンとした顔で近頃薄くなった夫の後頭部を見つめていたが、こんな時間に飲んだら太るとか、まだ夜は冷えるのに、とか言いながら、言葉とは裏腹にいそいそと嬉しそうに冷蔵庫からビールを取り出した。



※  ※  ※



 カツン、カツンと何かが窓を打つ音で目が覚めた。

 その音は書斎の東向きの窓から聞こえてくるようだった。

 祐一は痛む頭を抱えるようにして起き上がると、おぼつかない足取りで窓辺に向かった。

 外は真っ暗で、時折吹く風の音と、この通りに一つ二つ、そして遥か彼方に見える街の灯り以外この別荘地は深い闇の中でじっとうずくまっている。腕時計は四時を示していた。

 その時突然、部屋の明かりがついた。

 驚いて振り返り見渡しても誰かがいるというわけでもなく、それにも増して送電を切ってあるはずの別荘の書斎に電灯が突然つくなんて普通ではありえない。

 祐一が呆気にとられているとまた外で音がした。振り返ると、電灯の光で真っ暗な窓ガラスに室内が映り込み、今まで祐一が寝ていたソファーの傍らに妻の涼子が立っていた……。



※  ※  ※



 桜井亜希子は、窓を揺らす風の音で目を覚ました。

 箪笥の上の時計がぼんやりと四時を示している。

 夫の軽いいびきが聞こえてくる。手を伸ばすと温かい腕に触れた。

 こんな田舎の派出所で一人、毎日気を張って見回ったり話を聞いたり、時には危ないこともあるに違いないのに、いつもニコニコ笑ってる。

ごくろうさま、亜希子は小声でつぶやいてみる。

 明日はこの人の誕生日。一年中休みなしの仕事だからゆっくり祝うことなんか出来ないけど、明日はとっておきのプレゼントがある。亜希子は布団の中で自分のお腹をそっと撫でた。いまから夫の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。生活は苦しくなるけど、そんなこと全然平気。

 二つ並べた布団の、出口側に決まって寝る夫。事件があったら飛び出して行かなくちゃならないし、賊が侵入してきた時は、君の盾になるためさと真顔で言う夫。ばかねぇ大都会じゃあるまいし。亜希子はそんな夫が愛しかった。

 この人を信じていればいい。信じてついていけばきっと幸せになれる。きっと幸せになれる。信じていれば。信じていれば。

 亜希子はいつしかまた、深い眠りに落ちていた……。



※  ※  ※



 無意識に窓に歩み寄ろうとして気がつき、室内に目を戻したがソファーの側には誰も居らず、祐一はテニスのラリーを眺める観客のように、窓に映る涼子と誰もいない部屋との間で狂ったように首を振り続けていた。

 窓に映る姿がゆっくり手を上げると、踊るような仕草で話しかけてきた。


ズイブン、ヤセタワネ


 手話だった。耳が不自由な涼子と、祐一は音のない会話を何千何万と繰り返してきたのだった。咄嗟に何か口に出そうとして思い止どまり、ぎこちない手振りでガラス窓に向かって話しかけた。


どうしてここに?


 涼子は不思議そうな顔で見つめていたが、ゆっくりと指を動かした。


アナタガ、イツカ、キットクルト、オモッテタ



 そう、話すとき、お前はいつも少し首を傾げていたっけ。何かを尋ねるような不安そうな仕草。こんなときだというのに祐一は涼子のそんな癖を思い出していた。


ナニヲ、ソンナニ、クルシンデ、イルノ?


 祐一の指が震えていた。求めても得られるはずのない答えがいま目の前にある。しかしこの問いが、死者に鞭打つ行為だと痛いほど判ってもいた。それでも聞かずにはいられなかった。


あの子はおれの子供なのかい?


 涼子はびっくりしたように動きを止め、祐一の顔を見つめていたが、寂しそうに手を動かした。


アタリマエ、ジャナイ、バカネ


 その一言が、もうとっくに壊れて錆びついたはずの祐一の心を、激しく揺り動かした。


そうだよな。そうだよな。そうに決まってるのに、おれ、おれ……


 祐一の目から涙があふれた。怒りとも哀しみともつかない感情がその身を震わせ、指が麻痺したように上手く動かせない。


わかってたはずなのに。お前がそんなことするはずないって、わかってたはずなのに。どうしても、おれ、おれ、お前からそのこと聞けなかったから……


 おもわず声にならない嗚咽が洩れる。こんなところでおれは何してるんだ。飲んだくれて、死に急いで。祐一はいま初めて、こんな落ちぶれた姿を涼子の前に晒している自分が恥ずかしくなった。


コワカッタ。コノコマデ、ミミガ、キコエナカッタラ、ドウシヨウッテ。コノコヲ、クルシメルンジャ、ナイカッテ。アナタトノ、シアワセガ、キエテシマウンジャ、ナイカッテ、コワカッタノ 、アナタノコト、シンジテ、アゲラレナクテ、ゴメンネ


 ガラスに映る涼子が自分のお腹に手を当て、辛そうに唇を噛んでいる。

 何か言葉を繋ごうとしたその時、ガラス窓の向こう、東の空に連なる遥かな山々の稜線が、金色の線を引いたようにうっすらと浮かび上がった。


 夜が明けようとしていた。


 次第に薄れていく姿が、何度も何度も自分の胸に手を当て、祐一を指差して、同じ言葉を繰り返していた。朝日が窓を照らすその最後の瞬間、涼子は昔のように笑った……。


 

 祐一は手で顔を覆うと、子供のように泣き出した。

 どうしてあんな些細なことで悩み続けていたのだろう。どうして信じられなかったんだろう。最愛の人の悩みをどうして見抜けなかったんだろう。死んで全てを精算しようとする、こんなどうしようもない男だから、涼子も打ち明けられなかったに違いない。

 祐一はさっきまでのことが嘘のように、寒々と朝日に照らし出される部屋の中で、涼子が立っていた場所に向かってしっかりとした手つきで話しかけた。


君がここにいるのなら、おれはこの別荘を取り戻してみせる。立ち直って、やり直してみせる。それまで待っていてくれるね


 涼子が最後に繰り返していた言葉を、祐一も自分の胸に手を当て何度も何度も繰り返した。


あなたをずっと愛している、と……。



※  ※  ※



 その日、山村トキは朝の散歩の途中、坂を下る男を見かけ何故だかホッと胸を撫で下ろした。そしていつかまた出会う、そんな予感を抱いた。


 桜井次郎巡査に連絡を受けた高橋孝造は、二人で橋爪邸に入り、何の異常もない事を確認した。桜井巡査は意外なほど暖かみのある良い家だなと感じ、考造は、値下げの件をなんとか上司に提案しようと心に決めた。


 朝勤のコンビニで、高田晴美は缶コーヒーとお釣りを差し出しながら、ニッコリと男に微笑み返した。


 福来の駅で折り返すバスに男が乗り込んで来たのを見つけた沢田一雄運転手は、意味もなく今日は良い日になりそうだなと、何故だか妙に気分が浮き立った……。






fin

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