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さ迷う愛
パタ パタと 静寂を破れば
たちまち世界を包み込む雨
ガラス戸を開けた縁側に
気だるげな身体を横たえ
無造作に放り出された
その真白の手は人形のようで
ぼんやりと眺めた 小指が
ふいに ピクリと2度 震えるように動いた
さ迷う愛が 私を呼ぶ
脳裏は雨音に支配され 抗うすべもなく
遠のく意識の狭間で
頬から首筋 鎖骨へ
ふくらはぎから膝 内腿へ
雨煙のなか
浴衣の隙間から差し込まれる
その冷やりとした感触は
現か 幻か
さ迷う愛が 私を覆い隠す