第六話 実力の証明
すみませーーーーーーん!
お待たせいたしました。
執筆できる環境がやっとできたので再会です。
本当にお待たせして申し訳ありません。
「こっちに訓練場がある。そこでいいだろう」
ランダルが息巻きながら先頭を進み、屋敷の横にある訓練場だと思われる広場へとカイン達は向かった。
カインの横をハグネスは不安そうな表情をしながら歩く。
「カイン殿、大丈夫なのですか? ランダル殿はこの国でも屈指の実力をもっておりますが……」
「心配ないですよ。すぐに終わりますから」
カインは笑顔でランダルの後をついていく。
そこでは数十人の獣人たちが模擬剣を持ち訓練を行っている最中だった。剣同士がぶつかり合う音が訓練場に響き渡っている。
ランダルに気づいた獣人の兵士たちが、模擬戦を中断したことで全員が訓練を中止し、ランダルへと視線を送る。
「訓練中はすまない。これから俺とエスフォート王国の使者との模擬戦を行う。中央を開けてくれ」
ランダルの言葉に期待をした表情をした兵士たちが、隅へと寄っていく。
兵士たちもランダルの模擬戦が珍しいのか、小言で状況の推測を話し合っていた。
「ランダル様の訓練なんて久々に見るな。相手は人族か……しかもまだ子供じゃねーか。これじゃ、一方的だろ」
「確かにな、あの子供も可哀そうに……。ランダル様に何かしたんだろ……」
空間が開いた場所にカインとランダルが向き合って立つ。
ランダルが二本の模擬剣の一本をカインに向かって投げた。
受け取ったカインはそのまま柄を握り、軽く振って感触を確かめていく。
「うん、問題はないね。まぁ……必要はないけど」
カインは受け取った剣をそのまま投げ捨てた。
「なにっ⁉」
「おい、どうなってるんだ? 模擬戦をやるんじゃないのか……」
周りにいる兵士たちも、カインの行動に疑問を浮かべた。しかしカインは笑みを崩すことなく、ランダルを見据えた。
「模擬戦に剣など必要ないです。これだけあれば」
右手を前にだして、人差し指を突き立てた。
「なんだと……。いくら他国の貴族であったとしても、そこまで俺を愚弄してタダで済むとは思うなよ」
「えぇ、もちろん。私……いや、俺を認めてもらうにはその力を確かめてもらえればわかってもらえるかと」
カインには人外のステータスがある。本気を出せば首都を一発の魔法で滅ぼすこともできる。しかし今カインにとって必要なのは獣人を納得させられるだけの力だ。
ランダルと同程度の力を見せつけても、仕方がない。圧倒的な力を見せつけて前線へといくつもりだった。
「後で泣き言は言うなよ。模擬剣だとはいえ、当たれば骨くらい簡単に砕ける。俺の力をもってすれば死ぬ可能性だってあるぞ」
「……そんなことはいいから早く始めましょう」
カインは右手の指を折り曲げランダルに向けてかかってこいと示す。
ランダルは剣を構え、十メートルあった距離を一気に走り抜け、横なぎに剣を振り払った。
しかし目の前にいたカインはすでにいない。
焦ったランダルは左右は見渡すがカインの姿は見つけられなかった。
「こっちですよ」
圧倒的なステータスでランダルの後ろへと回ったカインは声をかける。
振り向きざまに振り払われた剣を屈んで躱し、ランダルの懐に入ったカインは軽くジャンプをし、そのまま人差し指と親指でつくった輪からデコピンをランダルの額に放った。
その一発だけで、ランダルは後ろへと吹き飛んだ。
数メートル飛んだあと、ゴロゴロと転がり周りにいる兵士付近でやっと止まった。
「「「「「………………」」」」」
周りで観戦していた兵士は、想像もつかなかった結果に唖然とする。
カインはゆっくりとランダルへと向かい、すぐ横にしゃがみ込むと意識を失ったランダルに回復魔法をかけた。
赤く腫れていた額はすぐに消え、うなり声をあげながらゆっくりとランダルは目を開ける。
ランダルの視線の先には笑みを浮かべたカインがしゃがんでいる。
「…………これは夢なのか……?」
「いえ、これが俺の実力です。わかってもらえましたか?」
「……あぁ」
カインはゆっくりと立ち上がると、右手をランダルに向けて差し出した。
笑みを浮かべたままのカインにランダルは苦笑しながらもその手を取り立ち上がる。
周りで観戦していた全員が予想外の展開に静まり返っていたが、ランダルが全員を見渡し、右手の拳をを高々とあげた。
「ケルメス獣王国に来てくれたエスフォート王国からの助っ人だ。どれだけ強い援軍か見てもらったからわかるだろう。俺たちはこれからバイサス帝国の奴らを叩き返すぞっ!」
「「「「「おぉ!!!」」」」」
「シルフォード辺境伯、改めてよろしく頼む。先ほどまでの無礼な態度失礼した」
ランダルがゆっくり頭を下げたことよりも、実力を認めてくれたことが嬉しかったカインは頬を緩ませ軽く頷いた。
「こちらこそ。この国のことはよくわかってませんので、改めてよろしくお願いしますね」
カインが右手を差し出すと、ランダルは大きい両手で包み込むように握手をした。
その様子に見守っていた兵士たちから大きな歓声があがることになった。
応接室に移動し先ほどまでの険悪な雰囲気はどこにいったのか、和やかに話は進んでいた。
領主であるガンダルやハグネスもカインとランダルのやり取りを見ていたので、安心したようだった。
「それでは明日にでもこの街を出発して、王都に向かいます」
「……それなんだが、俺もついていっていいか? いや、俺も手助けしたい」
ランダルはこの街の領主の息子として、この港町を守る必要があり、先の戦には出ていなかったが、カインの実力を確認したランダルは、この街まで攻められることはないと確信したのだった。
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