学園のアイドル
女性は自分の正体を暴いた。
彼女の名は「冬川・ラファーエル・隆子」。
この雪桜学園の先代理事長を務めていた人である。
今は政府の機密部隊の副司令官として働いていて、その立場として直也達と話をしたいのだという。
「あなた達は、先日この都市で起きた事件は知ってる?」
「事件って・・・地域新聞の一面の?」
隆子は頷き、それなら話は早いと本題を進める。
「その一面を飾った少女はね。魔族と戦ってたの」
その話に素早く反応したのは由梨だった。
「魔族!?そ、それってああああああ悪魔!?」
「ま、まぁそうね、そう思ってもらって大丈夫」
由梨はふぉーーーー!!と叫び、今までにないくらいのテンションになっている。
彼女は直也の両肩を掴んで前後に大きく揺らした。
「ほら直ちゃん!やっぱり悪魔だったんだよ!」
大きく揺らされ何も離せないうえに、揺らされすぎて少々気持ち悪くなってしまい、顔色が優れない。
そんなやり取りの最中、和斗は隆子に質問をぶつけた。
「魔族っていうのはとりあえずわかったって事にしてさ。その魔族は俺らに何の関係があるわけ?」
確かに和斗の疑問はもっともだった。
何故その事を自分達に伝える必要があるのかと。
隆子もその疑問には当然という風な顔をして、口を開いた。
「君達には教えておかないとよね」
隆子は昔話を始めた。
はるか昔に人間、悪魔、天使の三つの種族で戦争が起きた事を。
今は架空の存在として語られている悪魔や天使は実在するんだと。
そしてここ最近・・・魔族の動きが活発になり、人間界にやってきているという事を。
つまり・・・魔族の動きがきっかけで再び戦争が起きてしまうかもしれないという事を。
そして・・・。
「もしそうなった場合に人間も対抗しなければいけない・・・君達にはそれに対抗できる力を持っているの」
直也達には悪魔や天使が使う事のできる「属性の力」を持っていると言う事を。
今まで日常を送ってきた彼らは、急にそんな事を言われても頭が追いつくはずもない。
みんなはただ混乱するばかりだった。
そんな彼らの状況を見かねた隆子が一つため息をつく。
「はぁ・・・一度実際に見てみたほうがいいかもしれないわね」
そんな時だった。
「ただいまー」
この中の誰でもない声が聞こえる。
その声は先ほど和斗や美里がやってきた方向から聞こえてきた。
全員が一斉に振り返ると、そこにいたのはみんながよく知っている人物だった。
「「ふふふふふふふ冬川先輩!?」」
直也と和斗は声を重ね、裏声になりながらもその女性の名前を呼んだ。
彼女は「冬川雪乃」。
雪桜学園三年生の最上級生で、学園のアイドルと呼び声高き人物だ。
高すぎず低すぎない理想的な身長に、バスト、ウエスト、ヒップの女らしさ。
若干紫がかった長い黒髪をかき分けながら、雪乃は直也達を見て「?」といった顔をした。
「お母さん、この人達は?」
「え?お母さん?」
全員が雪乃の視線を追う。
そこには副司令官の隆子。
直也達は雪乃と隆子の顔を交互に見る。
隆子を見て、彼女はにこっと笑い自分を指差す。
「雪乃のお母さん」
満足げに、にこにこと上機嫌に言う隆子。
それもそうだろう。隆子のお母さん宣言を聞かされた直也達は口をあんぐりと開けてしまっているのだから。
今ならその口にバスケットボールも入るんじゃないかというくらいの大口だ。
「それでお母さん?この人達は?」
「力を秘めた子達よ」
それを聞いた雪乃は、ぱぁっと擬音が聞こえるくらいの笑顔に変わる。
彼らの前まで駆け寄って、まっすぐに直也達を見つめる。
「あなた達もなんだ!良かったぁ、一人じゃ心細くて・・・みんなよろしくねっ!」
屈託のない笑顔はまるで天使を思わせるかのような輝きだ。
「「喜んで」」
雪乃の笑顔を見て、これ以上の気持ち悪さがあるのかというくらいにやけている直也と和斗。
自然とよだれまで垂れ流し、二人は雪乃の身体を凝視していた。
「むむ・・・雪乃先輩・・・やっぱり大きい・・・」
雪乃の胸を見てがっくりとうなだれる由梨。
自らの貧相な胸を優しく揉み始め、なんとも哀れな状態だ。
「私はそんな由梨先輩の小さなおっぱいが大好きですよぉ!!」
その胸に顔面からダイブする美里をふらつきながらも受け止める由梨。
今の美里の発言が、全くフォローになっていないという事は由梨も美里も気づいていないようだが・・・。
その時、大きな警報が鳴り響いた。
「学園の屋上に魔族反応確認!反応の大きさからして多分「チューバット」かと!」
「ちょうどいいわね。雪乃、帰ってきて早々で悪いんだけど、みんなを連れて退治してきてくれる?」
「もちろん!みんな、行こう!」
先陣を切って走り出す雪乃の後ろを慌てて走り出す四人。
さっき雪乃がやってきた方へ走り続けていると、そこにはエレベーターがあった。
これを使って一気に屋上まで上がるのだ。
そのエレベーターに乗ってから十数秒後。
扉が開き、窓からの光がエレベーター内に差し込んでくる。
今まで地下という暗い所にいた彼らにとって、窓から差し込む光でさえも、かなりの眩しさに感じられた。
エレベーターを降りると、そこは親しみのある雪桜学園の屋上の入口。
これで先ほどまでいた場所はこの学園の地下だった事が証明された。
「さぁ、いくわよ!」
後ろの直也達にはお構いなしに入口の扉を開け、屋上へと飛び出す雪乃。
それに続いて屋上に足を踏み込んだ彼らは驚いた。
そこには黒く丸々としたコウモリ・・・のような生き物。
そう、これは新聞の写真に写っていた生き物とまるで同じだった。
雪乃はその生き物の姿を確認すると、真っ先にそいつの所へと駆け出した。