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H.D.E  作者: 山本 遥人
第1章:属性の力
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話題の事件

日本の都会として有名な都市に「雪桜学園」という大きな私立学園があった。

「自分の好きな事を伸ばす」をコンセプトにした、他には存在しないような学園だ。


目立った犯罪もなく、危険という事から縁のないような都市・・・なのだが。

先日、ある事件が話題となっていた。


「直ちゃん!悪魔は本当に存在したんだよ!」


鼻息を荒げながら、女の子は一人の男の子に顔を近づける。


「悪魔っていっても・・・架空の存在だろ?それと顔が近い」


女の子の主張を認めまいと、やれやれといった態度で女の子の顔を自分の顔から手で遠ざける男の子。


彼の名前は「近藤直也」。

この雪桜学園に通う17歳の二年生だ。

長すぎず短すぎずの黒髪を巻き込むように頭をぽりぽりと搔く。


「本物だよ!絶対!絶対!!」


直也に向かって前のめりに主張している彼女は「水野由梨」。

肩くらいまでの長さの水色の髪が、今にも金色になって逆立ちそうなほどの興奮状態の由梨。


「それにほら!この女の人!」


由梨は自分が手に持っている地域新聞の一面を飾っている写真を指差す。

そこには女性が写っているが、その写真の暗さから女性の顔は確認できないが、スタイルくらいはわかる。


「ふむ・・・由梨と違っておっぱいが大きくていいな」


人差し指と親指で顎を触りながら、真剣な表情でコメントする直也。


「でしょ!?あたしもこれくらいのおっぱいが欲しかっ――――って!貧乳を馬鹿にするなぁ!!」


涙目になりながらも自分のその貧相な胸を腕で抱えつつ、直也に罵声を浴びさせる。

すぐ目の前にいるにも関わらず、大きな声を出す由梨に直也は困り果てていた。


「はぁ、わかったよ。授業終わったらパソコン室行って調べてみようぜ」


仕方なく、といった風に直也は由梨の空想に付き合う事にした。

二人は幼なじみの関係にあるので、直也にとって由梨の妄想は日常茶飯事だったのだ。


「やったぁ!さすが直ちゃんだよ~♪」


直也の気分とは真逆に悪魔の存在をすでに信じきってしまっている由梨。

二人は授業後に学園にあるパソコン室へ行く事を約束し、その日の授業に励んだ。

















授業終了後。

約束どおり彼らはパソコン室へと向かっていた。

廊下を二人並んで歩いている。


身長が173cmの直也と160cmの由梨が並ぶ姿は、知らない人から見たら結構憧れるようなカップル・・・なのだろうが。


この学園では二人はまるで兄妹のようだと評判だ。

面倒見のいい兄と、わがまま放題の妹という見方をされているらしい。


「悪魔かぁ。悪魔だよぉ」


現に今、由梨のぶっ飛んだ妄想に仕方なく付き合っている直也はお兄さんに見られてもおかしくはないだろう。


「わかったから。ほら、着いたぞ」


この学園の特別教室には鍵が一切かかっておらず、ある一室を除いては好きな時に出入りする事が許されている。

二人は中に入り、早速一台のコンピューターに電源を入れ検索をかける。


「うわ・・・もうネット上でも話題になってるのか」


今朝の地域新聞の画像がアップロードされており、それはこの一日でネットの色々なサイトに転載され話題を呼んでいたのだ。

その画像は新聞より見やすいように明るく加工されているのがわかる。

例の巨乳の女性と・・・その女性に追いかけられているような丸っこいコウモリ・・・のような生き物が写っていた。


「ほら!やっぱり悪魔だよ!」


確かにコウモリにしては丸々としすぎだ。

かと言って直也はすぐにそれを「悪魔」だと信じる事はできなかった。


「絶対合成か加工されてるよ。写真のここの黒い部分がこのコウモリになってるんだろ?いくらでも加工できるって」


由梨が持っていた新聞を奪い、写真の真っ黒になっている部分を手の甲でばしばしと叩く直也。


「直ちゃんは夢がないなぁ」


「実際に見たら信じられるんだろうけどな」


意地悪な微笑みを見せる直也に、ぷくーと頬を膨らまし不機嫌を表現する由梨。

コンピューターの電源を落とし、直也は椅子から立ち上がる。


「さてっと。調べも終わったしそろそろ帰ろうぜ」


床に置いておいた鞄を持ち上げ、早く帰ろうと意思表明をする直也。

あまり納得していない由梨だったが、これ以上の事件がないのなら直也を説得するのは無理だと思い、直也の後を追うように走る。


「いいわよ。見せてあげる」


不意に直也でもない由梨でもない人の声が後ろから聞こえてくる。

二人はその声に気付き、振り返ろうとする。


しかし、遅かった。

直也と由梨は口にハンカチを当てられる。

ばたばたとそれに抗うが、二人の意識は徐々に薄れていく。

そして二人は完全に意識を失ってしまい、その場から連れ去られてしまった・・・。

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