爪剥ぎ
薄暗く湿度の高い部屋に2人の男がいた。
1人は椅子に拘束され、猿轡を噛まされた大柄で粗野な男。
1人は線が細く、それなりに整った顔をした軽薄そうな少年。
少年が男の右手を金属製の手袋のような器具に取り付け、しっかりと固定する。
器具は指先が露出するようになっていて、剥き出しとなった爪を挟み込むように金属片に指が差し込まれている。
少年がレバーを少し押すと、それに応じて男の小指の爪が少しだけ持ち上がる。
自分の身に何が起こるかを理解した男の目に怯えが浮かび、許しを請うように少年を見つめる。
男の揺れる瞳を見た少年は微笑みを浮かべ、焦らすようにゆっくりとレバーを押し込んだ。
持ち上げられる爪につられて皮が引きつり、破れ、血が滲み、やがて肉片もろとも爪が剥がれる。
男は苦痛に染まった表情を浮かべ、脂汗を流しながら歯を砕けんばかりに食いしばって痛みに耐えていた。
しかし、まだ剥がされたのはたったの1本。
追い討ちをかけるように少年がレバーを握り、薬指、中指と立て続けに引き剥がしていく。
男は連続して与えられた痛みに耐えかね、零れ落ちそうなほどに目を見開いてくぐもった悲鳴を上げながら身を捩り、必死にもがく。
それを見て少年は満足そうにケタケタと笑いながら勢い良くレバーに拳を振り下ろし、人差し指と親指、2枚の爪を1度に剥がした。
男はそれまでの2倍の痛みを受けて大きく仰け反り、焦点の定まらない目で天井を見上げて時折痙攣するのみとなった。
カチン、カチャ、カチャリ。
男の左手から金属質な音が響く。
見れば右手と同じように器具が取り付けられていて、少年が意地の悪い笑みを顔に貼り付けて立っていた。
まだ終わらない。
またあの痛みを味わわないといけない。
もう嫌だ。
何でもする、だから……。
そう男が瞳で訴えるが少年は無慈悲にもレバーに手をかける。
男が絶望し、目から光が消えると、5本全てのレバーが同時に押し込まれた。
想像を絶する苦痛に男は意識を手放した。